琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート101 九州ホーローの旅① 福岡編

2006.8.8
福岡県北九州市~宗像市~宮若市~直方市~飯塚市~佐賀県基山町~福岡県福岡市


探検レポート101

小倉駅のホームに降りると、じっとりとした熱気が肌にまとわりついた。
ザックを背負った私たちは、「暑い、暑い~」を連発しながら、首筋に滴る汗をぬぐおうともせずに改札をくぐった。
南国九州の暑さに戸惑いつつ、カミさんとふたりの5日間の旅が、こうして始まった。
九州でホーロー看板を探すことは、この一年の目標だった。綿や焼酎など九州(ここ)にしかない看板も多くあり、全国琺瑯行脚を続ける身には、どうしても避けて通れないブロックであった。
「九州に行こうよ…」といういう私の誘いに乗ってきた助手席のカミさんは、そんな思いを知るよしもなく、「この車、タバコ臭い!」としきりにぼやいている。
レンタカーに乗る直前に、私からずしりと重い5冊の地図を手渡された彼女は、なんとなく観念したみたいで、これから始まる看板探しのナビの役目をしぶしぶ引き受けたようだ。
しかし、クルマへの当てつけのぼやきを見ると、そうも言ってられない。(旨いもの食って、観光地にも連れて行かなけりゃぁ…)などと、カミさんのご機嫌取りも自分に言い聞かせた(笑)。
小倉駅前を出た車は、スペースワールドを右手に見ながら、宗像市を目指す。酒と醤油の醸造元を回り、ここにしかないお宝を早速ゲット。
その後は、東郷駅近くにあるという地元銘菓の「千鳥饅頭」の巨大看板が貼られた看板屋敷を探すが、すでに目的の屋敷はなくなっていた。

探検レポート101

意気消沈して、次に直方市の筑前植木駅にある看板屋敷に向かう。目的の屋敷はすぐに見つかった。「ウララ」や「ニチボー毛糸」は九州ならではの看板だ。「ほていわた」の看板が残っているが、往時にはほていさんの絵柄もワンセットで付いていたのだろうか。
すでに夕方近くになっているのに、西日が反射して暑い。クルマで九州を走るのはこれが初めてだが、国道や県道ばかりでなく、ちょっとした市道でも交通量は半端ではない。せっかくお宝を見つけても車を止められないのには閉口した。
それに地元車の運転は荒っぽく、がんがんスピードを上げて飛ばしてくるのだ。これ以後5日間にわたり九州各地を走って感じたことたが、この印象は最後まで変わらなかった。
その後は、穂波町から佐賀県基山町まで足を伸ばした。南福岡駅近くにあるという、宇宙人の顔のようなデザインが有名な「コックソース」が貼られた屋敷をしつこく探すも、結局は見つからなかった。
旅の初日は空振りも多く、思った成果がなかったが、これも看板たちをとりまく現状なのだろう。かつての琺瑯王国だった九州といえども、急激に進む都市化に逆らうことはできない。
陽がとっぷりと沈んだ頃、予約してある博多の旅館に着いた。今日一日ナビをやってくれたカミさんの労をねぎらうことにし、天神でモツ鍋とイカ刺しで軽く飲み、その後は「一蘭」という有名なラーメン店に行った。
名物の屋台を冷やかしながら、人の波でごった返す中州の街を、ほろ酔い気分でのんびりと歩いた。熱気漂うエキゾチックな夜は、ゆっくりと更けていった。(つづく)
(2006.8.27記)
※画像上/中洲の屋台街を歩く。往時と比べると店の数も観光客の数も減ったというが、夏の暑い夜にも関わらず、ラーメンやおでんののれんが下がり、賑わっていた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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