琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート202 2009年真夏の長期ロード3 愛媛編

2009.8.3
愛媛県西条市~東温市~砥部町~久万高原町~内子町~大洲市~八幡浜市~伊方町


探検レポート202

三日目の朝を迎えた。 今日は海を渡って九州の地を踏む。
愛媛県の三崎から大分の佐賀関を結ぶフェリーの乗船時間は19時なので、高知県境の山岳地帯を含めて目一杯回るつもりだ。
四国の最高峰、石鎚山を間近に仰ぐ西条市は、愛媛県下でも指折りの酒蔵密集エリアだ。
緩やかに続く坂道を登りきった集落にあった石鎚酒造には、デザインが違う三枚の看板が貼られていた。まったく予期しないこうした出遭いは、うれしい誤算である。
ホーロー看板が次々に姿を消す今、酒蔵は残された最後の棲家なのだ。その酒蔵でさえ、後継者不足や日本酒離れにより、酒造の中止や廃業する蔵が後を絶たない。
あと十年もすれば、自然の状態で貼られたお宝たちの姿を見ることができなくなっているかもしれない。
さて、“ひとり探検隊”は時間を惜しんで朝食もほどほどにホテルを出たので、酒蔵を五軒回ったところで休憩。
コンビ二に寄りゆっくりと缶コーヒーを飲んだ。 焦ってしゃかりきに回っているわけではないが、ひとり旅の気安さからか、看板探しが長期ロードになればなるほど反動が大きく、食べることさえ面倒になる。
その結果、おのずと食生活のパターンが決まってくる。  
朝…前日にスーパーで買い込んだパンと野菜ジュース。
昼…コンビ二でサンドイッチ、またはカップめん
夜…スーパーで買出したお惣菜と缶ビール
…こんな具合だ。昼食については時間に余裕がある場合のみ、現地でセルフのうどん屋等に入ることもある。

探検レポート202

私は旅に出ても食い物にはあまり固執しない性質(たち)なので、ご当地グルメや山海の珍味を食べないと気がすまない、というわがままな男ではないし、1人で居酒屋に入るというのも気が引ける(ただし、ご当地ラーメンは別だが)。
もちろん、それによる散財も気にするが、狭いホテルの部屋やテントで、ひとり一杯やることのほうが落ち着くのである。
話が逸れてしまったが、今日のコースは当初、高知県の山岳地帯を縦断し、宇和島へ出ることを考えていた。
しかし、実際に走ってみると、これが途方もなく長く時間がかかることが見えてきた。
久万高原町で進路変更し、内子町へのルートに変えたのはその理由による。
内子町と大洲市は2006年春の探検で訪ねているが、内子では山間の小さな集落で地元の醤油看板を見つけたぐらいで通過。
強烈だったのは大洲から八幡浜市へのJR予讃線沿いの2軒の看板屋敷である。 最初の屋敷は予讃線と平行して走る国道から見えていたが、雷鳴とともにあっという間に背後から暗雲が近づき、土砂降り状態となってしまった。
看板屋敷の前にクルマを止めて待つこと30分、一向に小降りにならない。クルマから降りることもできず、痺れをきらして窓を半開きにした隙間から撮影をした。
案の定、激しく落ちる雨粒が写った画像となった。
2軒目の屋敷に向かう途中で雨は止み薄日が差してきたが、先ほどの雷雲が追っかけてきたのか、ここでもドンピシャのタイミングで夕立に遭遇することになった。
ラッキョウのような雨粒がこれでもかと落ちてくる。せっかくの看板屋敷だったが、運が悪いことは重なるものである。

探検レポート202

さて、クルマは四国最西端の佐田岬に向かう。時折、小さな集落が出てくるが、地酒の看板を見つけたくらいで成果はほとんどなく、フェリーの発着場がある三崎港に着いた。
予約していた乗船時間に一時間以上も前に着いたこともあり、窓口で交渉し、一本早い船に乗ることができた。
一時間後、大分県の佐賀関に入港。クルマの距離メーターは自宅を出てから1200キロを指していた。
この日はすでに暗くなった大分市内を走り、24時間仮眠が可能な健康ランドに潜り込んだ。
入浴後に、受付で貰った館内の居酒屋で利用できる生ビール無料券を握り締めてのれんをくぐったが、テーブルに座っても一向に注文を聞きにこないことに憤慨し、チケットを叩きつけて店を後にした。
1人客、しかも無料のビールを飲みたいばっかの男…とでも映ったのであろうか。
九州上陸の夜は、蚕棚のような狭いスペースでごろりと横になったまま、右手に自販機の缶ビール、左手に柿の種を片手に、ゆっくりと更けていった。(つづく)
(2009.11.3記)
※画像上/「御国鶴」という銘柄を造る秋川酒造㈱。田園風景の中に溶け込んでいる蔵である。西条市大野。
※画像中/内子町大瀬地区の町並み。町並み保存を意識して手を加えているような感がしないでもないが、内子の八日市護国の町並みよりはずっと静かだ。 
※画像下/九州への最短航路がある愛媛県三崎港。ようやく私が乗るフェリーがやってきた。
※宿泊/「豊の国健康ランドホテル豊の国」 個室素泊り1980円。カプセルホテルよりははるかに快適な空間だが、隣の音はやはり気になる。☆☆☆★★



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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