琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート212 晩秋の和歌山~大阪ホーロー紀行

2009.10.31-11.1
奈良県高取町~橿原市~御所市~和歌山県九度山町~有田川町~大阪府川内長野市~和泉市~堺市


探検レポート212

空が碧く、高い。
襟元に触れる冷たい空気が、秋の終わりを告げている。
つい2週間前に訪ねたばかりの奈良県明日香村は、棚田の稲刈りもすっかり終わって、冬を迎える準備に入っていた。
いつもは素通りをするのだが、今回はカミさん連れだ。たまにはカミさん孝行も…と思いながら、石舞台古墳の見学をすることにした。
巨大な石積みの石室の中では、ボランティアのおじさんがガイドの真っ最中だった。大勢の観光客の中に混じって、石室の中に響く、よく通る声に耳を傾けた。
30数年ぶりの石舞台古墳の見学だったが、こんな体験もよかった。
今回は和歌山県有田にある会社の保養所でゆっくり過ごすのが目的で、観光地をあちこち回ろうというわけでもないから、別に急ぐ旅でもない。
カミさんからのリクエストもないから、往復の寄り道コースに、ちゃかりホーロー探検を組み込んで有田に向かうことにした。
御所の町並みを通り抜け、五條から九度山町に入ると、ようやく和歌山県である。
狭い町並みに緩やかに続く道を登っていくと、寺院の門前となった。昔は参拝客で賑わったのだろうか、広い石畳みの門前にはいくつかの商店が並んでいた。
いかにも古そうに見える瓦屋根のどっしりとしたよろず屋には、「ヤサイ種あり」の真っ赤な看板が掛かっていた。

探検レポート212

ハンガーに掛けられた衣類やカップめん、パンや洗剤、お酒が乱雑に並ぶ薄暗い店内を覗くと、ちょうど配達に出かけようとしている店主(おばあさん)と鉢合わせた。
「ヤサイ種」の看板を撮らせて欲しいとお願いすると、おばあさんは両手に抱えた配達の荷物を放り出して、 「ちょっとまっといてや、いいもの見せたるわ…」と言いながら店の奥に消えていった。
しばらくして戻ってきて、店の上がりかまちに大事そうに立てかけたのが「森永ミルクチョコレート」の看板だった。
吊り下げ用の金具がついた看板の裏面は「森永ミルクキャラメル」である。
「これ、昔は入口に掛けとったんやけど、息子が盗られたらあかんゆうて、仕舞っとったん」
おばあさんの話では、建物は築100年以上経っており、店も明治の終わり頃から続いているという。
いろいろ大変だった時期もあったようだが、今でも店をやっていることがうれしいと笑った。
話は尽きなかったが、看板を撮らせていただいたお礼を言い、クルマに乗り込みエンジンをかけていると、おばあさんが走ってきて、窓を叩いた。
「屋根の上にある鬼瓦、撮った?」
「あれも古くて、珍しいよ」
どうやら、このおばあさん、私のことを取材にきたマスコミ関係者と勘違いしているようであった。

探検レポート212

九度山は戦国武将の真田昌幸・幸村親子が幽閉されていたことで有名である。その九度山から更に南に山道を登っていくと高野山だ。
有田に出るにはルートがいろいろあるが、高野山を通っての山越えルートは経験がなく、高野山町にはたばこのレアモノ看板があることも情報として得ていたので、迷わず山道に分け入った。
しかし、紅葉シーズンと週末が重なったためか、高野山が近づくにつれ、渋滞が激しくなってきた。
このままでは有田の保養所に着くのが何時になるのか分からない。思案の末、たばこのレアモノ看板を諦めて、途中から有田川町に出るルートを選ぶことにした。
最も、この選択は正解だったようで、小さな集落で「味の素」のレアな看板をゲットすることもできた。
有田の保養所に着いたときはすっかり陽が沈み、真っ暗な海が、時折瞬く灯台の明かりにぼんやり輝いて見えていた。

翌日は、予報が当って、雨になった。
保養所内にある敷地でみかん狩りを楽しんだ後、阪和自動車道で大阪府に入り、投稿者のおとんさんに教えていただいた物件を中心に回った。
新たな発見はほとんどなかったが、レアなクスリやソースの看板をカメラに収めることができた。
子供たちも手が離れ、今年は夫婦水入らずの旅行も何度か実現できたが、それにかこつけてホーロー探検を目論んでいる亭主に、カミさんは辟易しているようだ。
なんとかして、彼女にもホーロー探検の魅力を伝授したいところだが、ナビ役として相当な回数をこなしているのにも関わらず、いつまで経ってもまったく関心が沸かないようだ(笑)。
…まぁ、仕方がないか(笑)。
(2010.1.17記)
※画像上/奈良県御所市の町並み。市内中心部は道が狭く一方通行がやたらと多い。酒蔵や老舗の商店もあって、町歩きが楽しい。
※画像中/奈良県明日香村の石舞台古墳。蘇我馬子の墓と考えられている。入場料250円。
※画像下/酒やたばこの他に地酒看板が5枚貼られていた商店。新しい国道が整備されたことにより、旧道にぽつんと残ったようだ。



2009年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17