琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート232 2010年夏、瀬戸内の旅3 大崎上島へ

2010.8.9
広島県福山市~尾道市~三原市~大崎上島町~竹原市~東広島市


探検レポート232

空きスペースを探して、フェリー乗り場の駐車場をぐるぐると回っている。
ボンネットの上で目玉焼きが作れそうな炎天の中、三日目の探検が始まった。
竹原港から大崎上島まではフェリーに自転車を積み込んでの旅となる。港がある白水までは30分程で着いた。
白く波立つ辿ってきた航路を桟橋から振り返ってみると、空の青と海の青の境界線が不確かなほど混ざり合い、一段と濃い蒼になった。
売店で買った朝メシのあんパンをかじりながら、素早く自転車を組み立てる。
県道65号線を南に向かって走り出すと、あっという間に額から汗が滴り落ちた。 すぐに「清酒竹鶴」の看板を発見。竹原市にある蔵元である。
しばらく進むと更に一枚。今度は肥料看板とツーショットだ。 22インチの折畳み自転車は変速機が付いているのに、だらだらとした登り坂ではあまり役に立たない…というか、ペダルを踏む脚力の無さが悲しいばかりだ。
クルマも通らない炎天下の県道で自転車を押しながら坂を登る姿が情けない。
島の南端を回り込む頃には3本のペットボトルを消費していた。水分を補給する端から汗が滝のように流れ落ちる。
熱中症一歩手前のほうほうの体で、よろず屋の店先にわずかな日陰を見つけて倒れ込んだ。

探検レポート232

動悸と耳鳴りが治まると、頭上から降り注ぐ蝉時雨と遠くに聞こえる波の音が渾然一体となって疲れた身体をやさしく包んでくれた。
かつて造船業で栄えたという木江の港には、左右の屋根が触れ合うくらいの狭い道に、古い家屋が隙間もなく並んでいた。
静まり返った昼時の通りには人の気配も感じない。 三階建ての木造建築は遊郭跡だろうか。陸に上がった船員たちが賑々しくこの界隈を闊歩していた時代もあったのだろうか…そんなことを思いながらペダルを踏んだ。
木江の集落をもう少しで抜けるころ、前方からやってくる自転車が見えた。
僕よりわずかに若いだろうか。半ズボンを履き、ディパックを背負い、折りたたみ自転車に乗っている姿はまるっきり同じだ。違うところはテンガロンハットを被っているところか。
「ひょっとしたら、遊郭跡のサイトを作ってる○△さんですか?」
テンガロンハットの御仁は、誰かと勘違いしてるようだった。
遊郭ではなくホーロー看板を探していることを伝え、灼熱の路上でしばらく会話を交わした。自分と“同じ匂い”を感じたのは久しぶりだ。
午後を回り、大崎上島の一周を終えて帰りのフェリーに乗りこむと、身体の中に爽やかな風が吹き抜けていくような心地よさを感じた。

探検レポート232

お宝はあまり見つけることができなかったが、素朴な漁村の佇まいや木江の町並み、そして、何よりも空と海の青さがいつまでも目にしみた。
大崎上島の印象が強くて、レポートのほとんどを割いたが、この日の探検は、福山、尾道、安芸津、竹原、西条も訪ねた。
どの町もほどよく古い町並みが残り、レトロ感を満喫しながらのホーロー探検は楽しかった。
特に、酒蔵の町・西条では自転車作戦で市内の蔵を一軒一軒訪ねた。
観光客に混じって効き酒も楽しんだが、実際のところ、自転車でも飲酒運転になるんだろうなぁ…と思いつつ、根が真面目な(?)私は、自転車を押しながら赤い顔をして宿泊先に帰ることになった。(つづく)
(2010.12.31記)
※画像上/大崎上島の白水港。乗ってきたフェリーを撮る。竹原港から毎時間ごとに定期便が出ている。
※画像中/大崎上島の木江の町並み。狭い旧道に軒先がくっつくほど家屋が並んでいる。炎天下の昼下がり、誰も歩いていない。
※画像下/塩福線神辺駅近くにあるノーシン看板。電車とのコラボがうまく撮れた。
※宿泊/「ホテルイーグル」☆☆☆★★ 素泊まり3300円。西条駅近くにあるビジネスホテル。酒蔵めぐりの拠点としては好立地。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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