琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート333 錦秋の会津ぶらり紀行 前編

2015.10.17
福島県猪苗代町~北塩原村~喜多方市~会津坂下町~会津若松市


探検レポート333

まばゆいばかりの秋色に染まる、東北の森を見たくなった。
頭に浮かんだのが、裏磐梯と会津の山々。広葉樹の森は目が覚めるような原色に輝いているに違いない。
10月も半ばであれば、彼の地は秋も深まっているだろう…。 どうせならホーロー探検と組み合わせて、のんびりとドライブもいい…。
裏磐梯や猪苗代湖の小さな集落なども興味をそそる。なまこ壁の古びた蔵などあれば更に良い。 そんなことをぼんやり考えていると、居てもたってもいられなくなった。善は急げだ。
天気予報とにらめっこして、晴天の週末にチャンス到来とばかりに会津へ向かうことにした。
いつものように仙台駅前でレンタカーを調達して一路、会津を目指す。東北自動車道から磐越道に乗り継いで、猪苗代磐梯高原インターで下りる。今回の旅のスタート地点である。
ホーロー探検の計画はざっくりとしたもので、裏磐梯と猪苗代、ついでに喜多方や会津坂下あたりで看板を探してみようという程度。
どちらかというと目的のプライオリティは紅葉を見ることにある。次に古い町並み探索、最後に看板探しだろうか。
さて、まず目指すのが裏磐梯と呼ぶエリアの北塩原村。標高1000メートルに広がる裏磐梯高原には、松原湖や五色沼といった美しい湖沼が迎えてくれる。
裏磐梯へのルートは県道323号線から国道459号線に乗り継いで北上し、1時間程度。
途中に立ち寄った集落で『リズムミシン』の看板を発見。更に近くにあった古びたお堂には『火の用心』の看板が貼られていた。



これは予期せぬ遭遇なので素直にうれしい。最近はGooglのストリートビューに頼りがちで、効率ばかりを求める傾向が強くなった。足で探した偶然の出会いはホーロー探検の醍醐味に尽きる。
偶然に出会った看板に気を良くして川上温泉を抜け北塩原村に入ると、そこは思い描いていた通りの錦秋の世界だった。
松原湖の東に広がる湿原には五色沼と呼ばれる湖沼が点在する。 遊歩道となっている木道を歩くと、目が覚めるような赤と黄色の紅葉。
ハイキングを楽しむ人も多いが、沼をぐるりと回る木度を辿っていくと人の姿もなくなり、自分ひとりの貸し切りの風景が広がった。
ここぞとばかりにカメラのシャッターを押しまくる。「来てよかった」と何度も思う。
木道に寝そべって一点の雲もない真っ青な空と赤と黄色に化粧した広葉樹をを見上げると、『至福のひと時』というフレーズは、こんな瞬間こそふさわしい言葉だと改めて実感する。
さて、にわか"紅葉探検隊"になってしまったクルマは、松原湖をぐるりと回り更に紅葉を追っかけていく。湖に映る山の稜線も赤く染まっていた。
松原湖のほとりにある小さな集落で『蛇の目ミシン』を発見。その向かいにある蕎麦屋の壁には『ボンカレー』も貼られていた。
今度はホーロー探検隊に変身し、アングルを変えながらカメラを向ける。なかなか充実した旅になってきた。
松原湖から喜多方市に抜けるつづら折りの国道459号線も素晴らしい紅葉が続く。ここまでくると感動もマヒしてしまう。それでもクルマを路肩に止めながらお気に入りの景色をカメラに納めていく。
白壁の土蔵と柿の木のアングルも日本の秋の風景にぴったりといったところ。もちろん、EOSのシャッターを切る。何とも忙しい旅である。
喜多方はこれまでに何度も探検したエリアだが、酒蔵に貼られた看板を撮り逃していたこともあり、『喜多の華』『大和川』の蔵を訪ねてシャッターを押した。



更に国道から外れた脇道にある酒屋で『清酒年男』の看板を発見。看板には『年男酒造店吟醸』とあるが、帰宅してから調べてみてもこの蔵の詳細は分からなかった。
喜多方からは会津坂下町に向かうが、モードは紅葉からホーロー探検に変わったこともあり、ナビを駆使してこれまでにトレースしていない道を探しながら走った。
わずか数戸しかない小さな集落で『エサ』の看板を発見。
廃屋となった民家の壁を見上げて思わず胸が高鳴ったが、この風景を以前観たことがあることに気づいた。記憶はあいまいだが、気になったまま頭上高くにある看板を撮影した。
帰宅してから記録を調べてみると、何のことはない、2009年9月にここを訪ねていたことが分かった。
この場所は幹線道路からかなり離れており、迷路のように道路が入り組んだロケーションだが、6年前とはいえ、我ながらこうしたマニアックな場所を訪ねている執念に驚いた。"ホーロー魂"とでも言おうか。
秋の日はつるべ落とし。すっかり暗くなった頃、会津若松市をゴールとして終了。
駅前のホテルに投宿し、以前から気になっていた会津名物の『ソースかつ丼』に舌鼓を打った。
錦秋の裏磐梯から蔵の町・喜多方、そして古い町並みが軒を並べる会津坂下の町。 これ以上ないほど、どれも秋真っ盛りの旅にふさわしい演出だった。(つづく)
(2016.4.16記)
※画像上/仙台市青葉区の大崎八幡宮。社殿は国宝に指定されている。
※画像中/大崎八幡宮の境内に奉納されている酒樽。
※画像下/広瀬川の近くで見つけた廃商店。町名看板が貼られていた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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