琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート95 丹後半島ホーローの旅【前編】

2006.6.17
滋賀県近江八幡市~高島市~福井県小浜市~京都府南丹市~綾部市~福知山市


探検レポート95

山田洋次監督『男はつらいよ・寅次郎あじさいの恋』(1982年)には、丹後半島の伊根集落の風景が美しく描かれている。
海に沈む夕日を背景にした、寅さん(渥美清)とかがり役のいしだあゆみの演技が素晴らしい作品である。
この映画を観てから、いつかは丹後半島に行こうと思っていた。琺瑯探検となると海岸沿いにはお宝が少ないという定説があるが、「たんご」という快活な響きと、京都の奥座敷=秘境というイメージがそれに勝り、思い切って1泊2日のひとり旅に出ることにした。
6月17日、今にも降り出しそうな曇天の中、出発。名神高速を彦根ICで下りて、琵琶湖大橋を目指した。
途中で「清酒キリヨウヨシ」をゲット。「器量良し」と読むのだろうか。なかなか粋なネーミングである。
いつも思うのだが、地酒の銘柄には凝ったネーミングが多い。「酔い機嫌=よいきげん」とか「春信=はるのたより」など、見事というほかない。
琵琶湖大橋を渡り志賀町に入り、国道367号線を北上する。日本海の若狭から京都に抜ける、いわゆる「鯖街道」と呼ばれる歴史の道である。
朽木は織田信長が戦に破れて落ち延びた集落ということで知られている。東面には比良山脈が連なり、街道に沿って安曇川(あどかわ)が流れている。昔、登山で沢登りをしていたとき、何度も訪れたエリアだが、すっかり道も拡張されて、昔日の面影はなくなった。 それでも朽木宿にはお宝の姿を見つけることができた。
歴史を感じさせる古びた肥料店にレアモノの練炭の短冊が、きらりと光っている。これだから琺瑯探検は止められない。こうした風景に出逢いたくて全国を旅しているのだ。
福井県に入り、小浜市経由で今度は美山町(現・南丹市)を目指す。周山街道と呼ぶ国道162号線を南下する。

探検レポート95

京都府との県境に近い名田庄は古くから交通の要所だったらしく、美山町にかけては茅葺屋根の家屋が点在し、日本的情緒を感じさせる所だ。
しかし、浮かれてばかりもいられない。雨が一段と激しくなってきた。その上、風も強く、せっかくお宝を見つけても、車から出られない。
ひたすら南下を続け、美山町から綾部市に急ぐ。
綾部市は今回の旅では前半のハイライトともいえるエリアで、雨も小降りになってたこともあり、時間をかけてじっくり探すことにした。
市内中心部はあっさりパスして、郊外に伸びる県道沿いの集落にアタリをつけて探検する。 「マツダランプ」の町名看板もそこかしこに残っていたが、最大の収穫は酒とくすりの看板だろう。特に酒看板については、これまで京都府内を何度も訪れているにも関わらず、意外に見つけることができなかったが、綾部市に入ると「小鼓」「花清水」といった大型の看板が目につき出した。
「清酒・菊乃春」と読める円形の看板を見つけたときには心が躍ったが、カメラを構えてシャッターを押す瞬間、 「あんたはん、何しとるんかいな」と背後から呼びかけられた。
思わずどきりとして振り向くと、そこにはカーキ色のジャンバーを着て、原付バイクに跨ったやさしい顔をしたご老人がいた。
いつものように、琺瑯看板を探して全国を旅していることを伝えると、妙に納得してくれたようで、「気をつけて、おいきやす」とやさしくおっしゃられて、走っていかれた。
こういうのも、出会いというのだろうか。求めなくとも自然にやってくる、予期せぬ人とのふれあいもまた、ホーローの旅なのだろう。(つづく)
(2006.7.8記)
※画像上/滋賀県高島市朽木。鯖街道と呼ばれる歴史の道に古い町並みが軒を連ねる。
※画像下/京都府美山町。茅葺集落で全国的に名が知られるようになった。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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