琺瑯看板考現学
探検隊あこがれのオロナミンC看板
オロCといえば、巨人軍よりも崑ちゃんを連想する。琺瑯看板といえば「崑ちゃんのオロC」と答えるほど、誰もが連想するアイテムなのだ。それほどまでに崑ちゃんの琺瑯看板は街角に溢れていた。
しかし、歳月が経ち、今では崑ちゃんの笑顔に遭遇できることはめったにない。琺瑯看板の中でも発見が難しく、レアものとなりつつあるのがオロナミンC看板である。
残存率を低下させている要因としては、いくつかのバージョンが存在していることにより、マニアの間では人気アイテムになっていること、ネットオークションで高値で取引されていること…等が上げられる。
もちろん、こうした背景には、営利目的での業者や「琺瑯狩り」と呼ばれる輩が暗躍している。かくして、崑ちゃんの笑顔は、田舎の食料品店や薬屋の壁から消え、いつしかネットオークションのリストに並び、骨董屋の店先に積まれ、レトロ演出を名目にした洋食屋や居酒屋、喫茶店の店内を飾る。
いいように解釈すれば、第二の人生を過ごすことができる琺瑯看板もそうはあるまい。むしろ、大切にされるのなら、こうした流転の余生も幸せなのかもしれないが。
そんなオロナミンCであるが、アニメのイラスト入り(黄金バット・バカボン・巨人の星・アタックNO.1)をはじめ、コピーロゴの違い(おいしいですよ!/元気ハツラツ!…裏表)、社名、形状(長方形・楕円形・張り出し)を組み合わせるとおそらく10種類程のバージョンがある。
さて、今やレアものとなりつつあるオロナミンCであるが、2005年から始めた琺瑯探検隊の活動で、どれだけ発掘できるのかチャレンジして行くのが楽しみだ。
以下、発見リストをタイプ別にを分類する。
前期バージョンA
▼大塚化学のロゴ、キャップなし、顔にシワ
▼昭和40年の発売時に作られた最初のバージョンはビンの蓋が取られ、更にビンのオロナミンCの部分に指が少しかかっている。ラベルが横を向いていることも分かる。
しかし、最大の特徴は崑ちゃんの顔が痩せてシワがある点。結核を患い肺を取った後に撮影されたからである。
TVコマーシャル用の16ミリフィルムの一コマを止めてそのまま看板用としてプリントしたものといわれている。帽子全体が写っているものと切れているものがある。
前期バージョンB白黒タイプ
▼大塚化学のロゴ、キャップなし、顔にシワ
▼これは超レアものか。白黒タイプの前期看板。裏表のロゴ配置とオロナミンCのトレードマークも従来の前期バージョンと違う。帽子も切れていない。顔はシワがある前期バージョン。
発見リスト…前期バージョンC
▼大塚化学のロゴ、キャップなし、黄金バットのイラストが右向き
▼最初のバージョンに黄金バット(右向き)のイラストが入っているのが特徴。ちなみに裏面も黄金バットは右向きである。
黄金バットのテレビアニメ化は1967年(昭和42年)。イラスト入りのバージョンでは比較的残っているアイテム。
前期バージョンD
▼大塚製薬のロゴ、キャップなし、黄金バットのイラストが左向き
▼バージョンCが反転してプリントされているのが特徴。黄金バットは左向きになっている(裏面も同様)。ロゴは大塚化学から大塚製薬に変わっている。また、帽子が切れていない。錆の進行が激しいところから見ると、ホーロー加工がされていないようだ。
前期バージョンE
▼大塚製薬のロゴ、キャップなし、黄金バットイラストなし、帽子の切れなし
▼黄金バットのイラストがないバージョン。帽子は切れていない。錆の進行が激しいところから見ると、発見枚数は極めて少ない。ホーロー加工はされていないようだ。
中期バージョンA
▼大塚製薬のロゴ、王冠つき、イラストなし、昭和47年の年号
▼崑ちゃんの顔は大きく分けて4種類あるが、ここからが中期バージョンである。
このプリントをベースにバカボンや巨人の星等のイラスト入りが製造されている。特徴としては、崑ちゃんの顔がふっくらとしてきたこと、オロナミンCのビンに王冠がついていること、大塚製薬のロゴと昭和47年の製造年が入っていることである。
また、崑ちゃんの顔が幾分正面を向き、帽子が全部写っていないことも分かる。製造順としては、イラスト入りが先か、なしかは不明である。
中期バージョンA
▼中期バージョンB(大塚製薬のロゴ、王冠つき、製造年なし、イラストあり
▼中期バージョンAをベースにイラストが入っているタイプである。大塚製薬のロゴの横には製造年は入っていない。
イラストの裏表の組み合わせもいくつかのパターンがあり、巨人の星×巨人の星、巨人の星×アタックNO.1、バカボン×アタックNO.1をこれまでに見つけている。
ミラーマンについては2013年12月についに発見。
中期バージョンC
▼楕円形、大塚製薬のロゴ、王冠つき、製造年なし、イラストあり/巨人の星
▼中期バージョンAをベースにイラストが入っているタイプである。楕円形にプレスされていることが最大の特徴。
イラストは巨人の星になっている。崑ちゃんの衣装が下のほうまで写っているのも確認できる。オロナミンC看板の中では発見頻度の低い希少価値看板である。
2015年5月、新潟県内で初発見。
中期バージョンD
▼大塚グループ/大塚製薬のロゴ、47の製造年あり、王冠つき、イラストなし
▼中期バージョンAがベースになっているが、ロゴに大塚グループが入っている。また、昭和47年の製造年が入っており、47年という年度は、多くのバリェーションが存在していたことが分かる。
中期バージョンE
▼大塚グループ/大塚化学のロゴ、47の製造年あり、キャップつき、イラストなし、崑ちゃんの顔が正面
▼大塚グループのロゴが初めて入った大塚化学バージョン。崑ちゃんの顔が正面を向いているのが最大の特徴。
昭和47年の年号が入っており、キャップが王冠になっていることを推察すると、中期バージョンで一番最後に作成されたものと考えられる。崑ちゃんの帽子も全部露出している。
発見したものはいずれも錆が進行しており、ホーロー加工がなされていないと思われる。
後期バージョンA
▼大塚グループ/大塚化学のロゴ、48の製造年あり、スクリューキャップつき、崑ちゃんが右向き
▼大塚グループのロゴが初めて入った大塚化学バージョン。
昭和48年の年号が入っており、キャップが王冠になっていることを推察すると、中期バージョンで一番最後に作成されたものと考えられる。崑ちゃんの帽子も全部露出している。
発見したものはいずれも錆が進行しており、ホーロー加工がなされていないと思われる。
後期バージョンB
▼大塚グループ/大塚製薬のロゴ、スクリューキャップつき、48~51年の製造年入り
▼後期バージョンAがベースであるが、ロゴが大塚グループ/大塚製薬となっている。また錆が進行していないものがほとんどであることを考えると、ホーロー加工がされているといえる。
また、製造年度は古いもので48年、新しいものでは51年のロゴが入っている。現存するオロナミンC看板の中では発見頻度が一番高いタイプである。
崑ちゃんは発売時の昭和40年から10年間連続でCMに出演しており、実質的には昭和51年に製作された看板が最後のタイプかと推測できる。