琺瑯看板考現学
探検隊的こだわり
ホーロー探検をするようになってから、ごく自然に好きなカテゴリーが決まってきた。
私の場合は、何といっても大塚系と呼ばれるタレントの顔写真をプリントした看板。ほとんどの人が琺瑯看板から連想するものは?と問われれば、崑ちゃんのオロナミンCであり、由美かおるのアース渦巻きだと答えるだろう。僕もご他聞に漏れず、いまだにこの大塚系にこだわり、求めている。大塚系の看板にはいわゆる“華”を感じる。大型看板特有の派手さの中にしっかりした存在感が伝わるからだ。
そして、その対極をいくのがクスリ系の看板ではないだろうか。小さな短冊型が多いが、さびれた板壁の隅っこに隠れるように、うぶな娘のごとく控えめに貼られているところがいじらしい。しかし反面、これがある種独特な自己主張を同時に発しているから魅力的だ。まさに棘を持った悪女と表現したらいいだろうか。
その背景には歴史があり、薬の販路を広げるための商人たちの販売戦略がある。真っ赤な地や青地に白字のデザイン、レトロ感溢れる字体などマニア心をくすぐる要素を充分発揮しているくすり看板は、まさに“琺瑯の華”といってもいい。
このコンテンツでは、「考現学」(註)のタイトルどおり、今の時代に残るこだわりのカテゴリー、アイテムを探し出し、看板が貼られた背景や目的、メーカーの広告戦略や当時の風俗を探りながら、少々科学的な角度で探険隊的検証と考察をしようというのがねらいである。
また、昭和時代を映した小津安二郎や寅さん映画のスクリーンに出てくるような琺瑯看板や、種類が多いたばこやコーラの看板、他のサイトにない珍品を発掘するのも面白そうだ。崑ちゃんや由美かおる、太田胃散、仁丹はどれだけ増えるだろうか。
さて、ホーロー探検の副産物といっていいだろうか、年代モノのブリキ製の看板や、懐かしいタレントのポスターやグッズ、酒屋の木製看板やよろず屋の売れ残りの商品、放置された自販機の残骸等、町や集落を歩けば少なからず目にする。何にでも興味を持つ探検隊としては、興味半分にこれらの“昭和の残骸”も撮ってきた。少しづつではあるが、番外編として「昭和の残像」というコーナーを設置した。
※【考現学】…現代の社会現象を場所・時間を定めて、組織的に調査・研究し、世相や風俗を分析・解説しようとする学問。考古学をもじってつくられた造語。モネデルノロジー……Wikipediaによる