琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート104 九州ホーローの旅④ 熊本・大分編

2006.8.11
熊本県熊本市~八代市~益城町~阿蘇市~阿蘇市~大分県竹田市~豊後大野市~臼杵市


探検レポート104

鉛色の雲が幾重にも重なり、どんよりと覆っている。肌にまとわりつく湿気を含んだ風が、小さく吹き始めた。
九州に来てからずっと天気が良かったが、どうやら雨を覚悟しなければいけないようだ。こんな日は焦っても仕方がない。ゆっくりと朝食をとり、水前寺公園にあるホテルを出ることにした。
まずは熊本市内から八代市に向かう。目的地は日奈久温泉である。かつてここは、「琺瑯看板の聖地」と呼ばれるほど有名なエリアだった。
今でこそ往時のパワーは衰えたというが、2006年の今日にあっても、多少の痕跡はあるに違いない。無論、あって欲しいのだ。日奈久を訪れることが、今回の九州遠征の最大の目的だからだ。
川尻町まではお宝を探しながら国道3号線を行き、そこより東進し、三船インターより九州道に乗った。
八代南インターで下りて、いよいよ聖地への第一歩を記すことになる。 降りだした雨の中、国道3号線を忠実に辿っていくと、期待通り看板が現れ始めた。
交通量の多さを気にしながら、車を寄せては次々にカメラに収めていく。圧巻は「高砂わた」を中央に、「ほていわた」「カクイわた」を左右に貼った看板屋敷。
間近で見ると、そのパワーに圧倒されずにはいられない。整然とした配列も見事だが、美的センスも素晴らしい。これまで多くの看板屋敷を見てきたが、初めて美しいと思った物件だ。看板屋敷は単なる広告物の集合体ではなく、これを見れば、芸術作品と思わずにいられないだろう。

探検レポート104

日奈久では他にも2軒の看板屋敷を撮影した。どれも南国の風景に自然に溶け込んでいた。緑の中に埋もれるようにたたずむ看板が貼られた孤高の廃屋を見ると、忘れかけた昭和の原風景を思い出す。心を落ち着かせてくれるような、癒しの空間がそこにあった。
日奈久の撮影を終えて再び熊本市に戻り、益城町から阿蘇市を目指した。雨は激しく降ったり、小雨になったりを繰り返している。
晴れていれば雄大な阿蘇山が望めるはずだが、国道57号線から見える景色は、残念ながら広大な裾野をほんの少ししか見せてくれない。
独りの探検では、昼メシはいつものようにコンビニで簡単に済ますところだが、カミさんと一緒となると少しばかしは贅沢もする。国道沿いには、「熊本名物だご汁」というのぼりを立てかけた店が何軒も並ぶ。 迷った末、その中の一軒に入り、だご汁の他に馬刺しやからしレンコン、高菜ご飯などがついた定食を注文した。
だご汁は、野菜の具たくさんの汁に小麦粉をだんご状に固めたものが入っていた。コクがあってなかなか旨かった。
阿蘇からはそのまま直進し、大分県竹田市に着いた。古い町並みが残された町だが、お宝のほうはさっぱりだった。これまでの経験では、町並みがきれいに保存されているところは、琺瑯看板の棲息率は低いようである。
景観が損なわれるという理由なのだろうか、どこにもある「マルフク」看板すら見かけない。竹田の印象は薄いが、醤油蔵で食べた「醤油ソフトクリーム」が絶品だった。
臼杵市へ急ぐ。途中の朝地町や大野町では、思ったとおり、国道から外れた旧道の集落にお宝の姿があった。この旅二度目の「ジンセンアップ」の遭遇もあった。
南利明のオリエンタルカレーのCMで流れたセリフが忘れられないと、レポート103で書いたが、記憶の糸を辿ってようやく全部思い出した。
「めっちゃめちゃ、うめぇでかんわ~オリエンタルのスナックカレー~、たった3分温める(ぬくとめる)だけ、肉や野菜がいっぺぇへっっとるでょぉ~、みんなウハウハウハウハ喜ぶよ~、オリエンタルのスナックカレー、ハヤシもあるでょぉ」 …これは昭和44年に流れて、大ヒットしたCMだ。
名古屋以外で放映されたかどうか分からないが、通学の道すがら、ランドセルを背負った悪ガキどもと、おどけながら何度も口ずさんだことを思い出した。あれから40年近く経ったというのに、いまだに覚えている自分が怖い(笑)。
ちなみに、このCMはオリエンタルのサイトでも見ることができる(参考までに、オリエンタル) 。

探検レポート104

さて、夫婦二人三脚の探検隊は更に走り、臼杵市に入った。まずはさておき、国宝の石仏群を見ることにした。
ここは九州を代表する有名な観光スポットだが、雨ということで、私たちの貸切り状態だった。
雨に煙る深い緑の中にうねるように細く続く山道を登っていくと、一枚岩の露頭に彫られた石仏が次々に現れる。ぽっかりと浮かぶ岩穴に石仏が鎮座した空間は見事というほかない。室町時代に彫られたと伝えられる仏は一様に穏やかな顔をしていた。
夕刻が近づき、臼杵市街で今度は看板探しである。臼杵は漁業と醤油醸造の城下町だが、古い町並みも残り、落ち着いた雰囲気がある。
昭和30年代そのままの商店がぽつんとあったりして、時間が許すかぎりお宝をじっくりと探したい町だった。 遠征4日目はこうして終わった。
予約したホテルがある鶴崎まで行く間、臼杵で見た仏の穏やかな顔が何度も何度も脳裏をよぎり、日ごろ、眉間にシワをよせてあくせく仕事をしている身には、この穏やかさが、暗に「謙虚になれよ」と云われているようで、妙に心地よかった。(つづく)
(2006.9.17記)
※画像上/臼杵の石仏。国宝。室町時代に彫られたと伝えられる。
※画像中/「竹田の子守唄」で有名な竹田の町並み。古い町並みに静寂が包む。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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