ホーローの旅
レポート107 秋風に吹かれて、能登の旅
2006.9.24
石川県津幡町~宝達志水町~羽咋市~中能登町~七尾市~志賀町~中能登町~かほく市
蝉の声も消えて、爽やかな秋の風が吹き始めた能登は、コスモス色のやさしさに染まっていた。
金沢をスタートしてホーロー看板を探す旅も、これで三度目となった。いつものように駅前でレンタカーを借り、国道8号線から津幡町へ向かう。
今回目指すのは能登半島の内陸部だ。輪島から珠洲、七尾の外周については昨年10月に訪れた。
その時の印象は「能登半島にはお宝がたくさんあるぞ」という漠然としたものだったが、欲深いことに、いつしかこれが「もっともっとあるのでは?」に変わってきた。
確かに能登半島内陸部には点在する町や集落も多くあり、古い町並みが残っているという鹿島町や鹿西町など、JR七尾線沿いの集落は地図の上でも何かしら感じるものがあった。
さて、実際はどうなのだろう?期待を胸に津幡町から興津峠に向かう県道に乗った。
能瀬駅からすぐに山沿いの道となり、思い出したようにポツリポツリと小さな集落が現れた。ゆっくりと流れる川が近づいたと思ったら、農家の蔵に貼られた水原弘のハイアースが迎えてくれた。幸先がいいスタートである。
この蔵には剥がれ落ちた由美かおるもあり、すぐ横を流れる川の瀬せらぎが看板たちに淡く反射する様を見ると、日本の正しい田舎の風景そのままを感じずにはいられない。
更によく見ると、水原弘の看板の下には「ベアリング入り」と読める看板が隠れていた。間違いなく北陸地方に多い「光洋ミシン」だった。「ベアリング入り」というロゴだけで、どんな看板かを当ててしまう自分の琺瑯看板狂いに改めて驚く。つい一年前には想像もつかなかったことだ。
この日は前半に山場が続いた。ハイアースが貼られた蔵から更に山間に入った集落で、今度は劇的な対面を果たすことができたのだ。「オロナミンC天才バカボン」バージョンである。
店内に地酒看板が貼られた創業100年という酒屋で、店番のおばあちゃんが「こんなんも、あるがや」と倉庫から出してきてくれたのがコレだった。
よく見ると、なんとイラストはバカボン、裏面はアタックNO.1である。
これまで50枚以上のオロナミンC看板を見つけてきているが、私の見解では、イラスト入りの発見何難易度では、易しい順に巨人の星→黄金バット→アタックNO.1→天才バカボン→ミラーマンとなる。
バカボンとミラーマンは未だに遭遇していないシロモノだった。それだけに、この対面はうれしかった。 おばあちゃんは、関心なさそうに看板を見せてくれたが、「要らないようなら譲って欲しい」と単刀直入に切り出すと、「東京に行っとる孫に聞いてみんと…」という返事。
予想通りの答えが返ってきて驚いたが(笑)、名残惜しさを顔に出さずに、「まぁ、大事にしてくだされ」といって辞した。
さて、この日の探検の成果は前半の山場を越えたら何もない。その後、津幡町から鹿島町、七尾市、志賀町と回ったが、金鳥・福正宗(酒)・オロナイン軟膏が繰り返して現れるのみで、コレといったものはなかった。
今は盛りの蕎麦の花や、可憐なコスモスが爽やかな秋風に揺れる能登の風景を見ていたら、このところ仕事が忙しく、ストレスも溜まってきていた身にも、爽やかな風が吹いた気がした。
ゆったりとした景色の中で、少しばかし気も晴れた。
(2006.10.17記)
※画像上/コスモスが揺れる能登の初秋。
※画像下/鹿島町の町並みを行く