琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート112 歴史の町へ、石川県内陸部を行く

2006.10.29
石川県加賀市~小松市~白山市


探検レポート112

石川県加賀市大聖寺は「日本百名山」で有名な作家・深田久弥の生誕地として知られている。
いかにも雪国らしく、板壁が黒光りする重厚な家屋の群れが、駅前を中心に碁盤の目に仕切られた町に残っている。
小さな町のわりに意外と規模が大きい商店街もあり、ホーロー看板が生息するにはぴったりの条件であるが、くまなく探すも、意に反してほとんど見つけることができなかった。
まぁ、こんなことはよくある。これまでの経験では、町並保存地区のような国や自治体が保護をしている大げさな場所になればなるほど、お宝の生息率は低くなることを実感している。
大聖寺を切り上げて、山代温泉に向かう。いわゆる加賀温泉郷というのは、山代、山中、片山津、粟津温泉のことをいう。
石川県では能登半島の和倉温泉と並んで有名な観光スポットになるが、山中温泉を除いて、近代的に開けてしまった感がある。
この日もご多分に漏れず、山代、粟津とお宝を求めて走り回るが、一枚も見つけることができずに意気消沈してしまった。
粟津温泉では、お宝を諦めて温泉街の入口にあるトチの巨木を撮っていると、ちょうど早番と遅番の従業員とのバトンタッチの時間に当たったのか、大きな温泉旅館の裏口から次々に仲居さん風の女性たちが出てきて、面食らってしまった。
首からカメラを下げている姿が変質者にでも写ったのだろうか。皆一様に僕の顔をじろじろ見ながら通り過ぎていく。

探検レポート112

ほとんど収穫がないまま、レンタカーを進めた。動橋では酒の醸造元に寄って、ようやく一枚ゲット。新酒ができたことを知らせる杉玉が下がった立派な門構えは、一見の価値がある。
しかし、多くの醸造元はなぜスギ玉を軒下に下げるのだろうか。これまで考えたこともなかったので、折を見て調べてみたい。
動橋では町のはずれで学生服の看板を見つけて、少しは盛り上がりも出てきたが、これ以後がさっぱりだった。
鳥越村から鶴来町に向かう。何度か訪れたエリアだが、なぜか鶴来町には縁がなく、今回が初めての探検となる。レトロな駅舎がいい味を出している加賀一宮駅は、北陸鉄道石川線の終着駅だ。
私には鉄道を撮るという趣味はないが、まるでフーテンの寅さんが待合室でゴロ寝をしているような雰囲気が素晴らしい。
鶴来町に入ると、にわかにレトロな匂いが漂ってきた。歴史を感じる小堀酒造の建物は「清酒萬歳楽」の木製看板が掲げられ、控えめな存在感がにじみ出ている。
この町には醤油醸造元も何軒かあり、そのうち2軒でお宝を見つけた。中でも、高田商店の「初鶏醤油」の看板はすばらしいデザインだ。
真っ赤な地にデフォルメされたニワトリがデザインされている。 店番をしていた奥さんに、鶴来町に醤油屋が多い理由を聞いてみると、「鶴来は水がいいからねぇ、おいしい醤油ができるっけ」という答え。
白山連峰の裾野にあるという場所柄が、旨い水をつくっているのだろう。
鶴来町で今日のホーロー探検を終えた。レンタカーを金沢駅に返し、あとは加賀料理を肴に旨い酒を飲むだけ。
そろそろ北陸には冬がやってくる。冬の幸はしがないサラリーマンの私を楽しませてくれるだろうか。
(2006.12.4記)
※画像上/深まる秋に冬への準備。どこの家でも干し柿が吊るされていた。石川県加賀温泉。
※画像下/鶴来の町並み。酒蔵や醤油蔵が立ち並ぶ。歴史を感じる街道だ。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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