ホーローの旅
レポート113 紀伊半島一周ホーローの旅 前編
2006.11.3
和歌山県紀美野町~紀の川市~和歌山市~岩出市
結婚して20年が経った。何もそれにくっつけたわけではないが、カミさんとふたりで紀伊半島を一周してみることにした。
宿は湯浅にある会社の保養所、格安で上げるには申し分ない。連絡をすると「保養所内ではみかん狩りができますよ」の返事。海の幸も楽しみだ。
それ以上に楽しみなのはホーロー探検だが、顔には出さずに、カミさんには「紀伊半島の先端まで行こうよ、気持ちがいいかなぁ。魚も旨いぞ」なんて言いながら、地図を見せて旅を盛り上げる努力を怠らない(笑)。
もちろんただ一周するだけじゃない。私にとっては、お宝の姿を追っかけていく旅でもある。
結婚20周年のメモリアルと、旨い魚、そしてホーロー探検は、がっちりと融合するだろうか…。
名阪国道針インターから大宇陀町を経由して、奈良県五條市に入った。ここから久度山町を抜けて高野山に至る国道370号線を行く。
さすがに連休とあって、山奥の国道といえども車の列が続いている。このあたりは柿の生産地らしく、そこかしこに即売所が出てくる。
高野山に登る道と別れ、紀美野町に出た。山あいに続く街道には古い家屋や商店が軒を連ね、たわわに実った柿の木が短い秋を一層引き立てていた。
和歌山県はホーロー看板が多く残っているという印象が強いが、確かに醤油や酒、酢、肥料などカテゴリーも変化に富んでおり、次は何が出てくるかとワクワクするほどだ。
「花咲酢」や「清酒世界一統」が貼られた歴史を感じる商店が、そこにあることが当然のように、何の違和感もなく存在していた。
都会ではこうはいかないだろう。古い商店がポツンと残っているだけで、やたらと目立ってしまう。そこにお宝でもあったら、あっという間に琺瑯狩りの餌食になるに違いない。
紀の川に沿って、和歌山市方面にのんびりと走る。この辺りは何度か訪ねているが、思ったとおりお宝の姿はない。しかし、まったくの偶然だったが、お茶を買おうと自販機を探しているときに見つけた商店が凄かった。
この時点でお墨付きをつけるには多少の抵抗もあるが、全部で9枚ものお宝を貼った外観と、何より、いかにも「よろず屋だぞぅ」といった店構えが素晴らしい。
しばらくは夢にまで出そうなインパクトがあった。今のところ、和歌山県を代表する看板商店と言っておこう。
カミさんには退屈だったかもしれないが、この日は特に観光名所を回ることなく、ひたすら走った。和歌山市から海南市に抜ける国道42号線では大渋滞にはまり、高速代をケチったことを後悔しながらノロノロと進んだ。
湯浅港を右手に見ると、潮の香りに乗って暗い海の咆哮がどこからともなく聞こえてきた。遠くに浮かぶ船の灯かりが見え隠れし、とっぷりと陽が落ちた頃、湯浅の丘の上に建つ保養所に着いた。(つづく)
(2006.12.10記)
※画像上/和歌山県串本市の絶景、橋杭岩
※画像下/和歌山県を代表する看板商店だろうか