琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート114 紀伊半島一周ホーローの旅 後編

2006.11.4
和歌山県由良町~印南町~みなべ町~田辺市~那智勝浦町~三重県御浜町~熊野市


探検レポート114

保養所内でみかん狩りをたっぷり楽しんだあと、出発。
人間(男)が持つ本来の習性だろうか、どんなものでもそうだが“狩り”と名のつくものは興奮する。
潮干狩り、りんご狩り、ぶどう狩り、きのこ狩り…でも、いただけないのは“琺瑯狩り”(笑)。
看板を探して写真を撮ることを楽しむ私たちホーロー探検隊にとっては、今のところの一番の敵に違いない。
御坊市までは今年2月の探検で経験しているので、先を急ぐ。JR紀勢本線に沿って進むと、切目駅の近くで看板屋敷を発見。海に近いエリアなので、看板屋敷が残っていること自体思っていなかったが、想定外のこうした突然の出遭いはうれしい。
電車が来ないことを確認して、線路脇から撮影した。ベビーカーを押した女性が、私の方を一瞥しながら怪訝な顔をして踏み切りを渡っていく。
妙齢の女性なので、「いや~、そこの看板の写真を撮っているんですよ~、奥さん」(笑)などと、刑事コロンボ(古い!)のように頭をかきながら答弁するわけじゃないが、今はそんな冗談を考えている場合じゃなく、電車が来る恐怖の方が先だ。
目的の屋敷には「美人豆」が2枚貼られており、まるで九州の屋敷を見るようだった。和歌山県の情報は少ないので、これは貴重な看板屋敷だろう。
みなべ町に入ると町のあちこちに古い家屋や町並みが残っているのを見た。ホーロー看板を探すうちに、最近ではこうした町並みにも興味が出てきた。
何気なくシャッターを押してきた写真も随分溜まってきたので、折を見てサイトのコンテンツに加えてみたいと思うが、この分野では大御所のサイトがたくさんあるので、ほとんど知られていないような山村の集落や、隠れ里のような古い町並みに絞ってみるのも悪くない。

探検レポート114

潮の香りが漂う国道をはずれ、田辺市方面に向かうと、本日二度目の看板屋敷を発見。
屋根にはぺんぺん草が生え、荒れ放題の傾いた建物に人が住む気配はない。取り壊しや倒壊も時間の問題だろうか。それにしても素晴らしい看板屋敷だ。
まるで時間が止まってしまったような孤高の空間に、野武士のような風格を持ってたたずんでいる。こうした屋敷に出遭いたくて、私は全国を回っているのだ。いつまでも残って欲しいと願わずにいられない。
田辺市から半島先端の串本町までは大した収穫もなかったが、せっかくここまで来たのだからと、潮岬灯台に寄った。
幾重にも続く狭い螺旋階段を上がって灯台の展望スペースに出てみると、目の前にどど~んと太平洋が開けた。紀伊半島を縦断する大峰山脈がこの地をもって海に真っ直ぐに落ち込んでいる景観は凄いとしかいいようがない。
ここから先のホーロー探検はどこいく風で、カミさん期待の観光ドライブとなった。海上からノコギリのような巨岩がそそり立つ橋杭岩の絶景や、サンマ寿司の材料となる一夜干しの風景、垂直に落ちる那智の滝を回ってすっかり陽が落ちた頃、熊野市を通過した。
ここから尾鷲を経由して岐阜の自宅までは遠かったが、ひたすらハンドルを握って2日間の探検ドライブを終えた。
結婚20周年のメモリアルと旨い魚、そしてホーロー探検をうまく融合したいと目論んで出かけた旅だったが、好天に恵まれたこともあって、期待通りに秋の終わりを満喫できた、楽しい旅に仕上がったようだ。(おわり)
(2006.12.17記)
※画像上/那智勝浦町の代表的な風景。国道沿いにはさんまの一夜干しがずらりと並ぶ。
※画像下/草に埋もれようとしている看板屋敷



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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