琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート116 冬の海を見に行く 知多半島の先端へ

2006.12.16
愛知県武豊町~美浜町~南知多町


探検レポート116

師走12月。2006年も暮れようとしてるのに、独り訪ねた知多半島は春のような暖かさだった。
早朝自宅を出て、知多有料道路を武豊インターで下り、市街中心部に向かった。武豊町には醤油醸造元が軒を連ねる一角があり、クルマ一台がようやく通れる狭い路地に、黒板壁の蔵とレンガ造りの建物が並んでいた。
JR武豊駅から海岸線に沿って国道を南にいくと、風に乗って甘辛い醤油の香りが漂ってくるから、すぐに分かるはずだ。
その中の一軒、「南蔵醤油」の建物を覗くと、薄暗い倉庫に巨大な樽がど~んと座っている。 冷んやりした空気にとまどいながら中に入ってみると、醤油の香りと微かにカビ臭いすえた匂いが漂い、鼻をくすぐった。
遠い昔を思い起こさせる懐かしい匂い(=昭和30年代の我が家の部屋の匂いといったらよいだろうか…ぬか味噌臭かった)と、時間が止まったような静けさが心地いい。
醤油や味噌造りは機械化が当たり前の世の中、昔ながらの製法で作っていくことのこだわりは、いつまでも残して欲しい、と勝手ながら思う。
この辺りには江戸時代から続く老舗の醸造元も何軒かあり、町全体が醤油の香りに包まれているようなレトロな雰囲気がある
。武豊ばかりではなく、知多半島には隣の半田市をはじめとして、昔から醤油や味噌、酢などの調味料作りが盛んだ。
酢のミツカンや醤油のキッコートミ、味噌のイチビキ、ソースのカゴメは全国区の有名ブランドになっており、いずれもこの地方に拠点を持っている。
また、ヤマイヅミ醤油の醸造元はソニーグループの盛田(株)が江戸時代に常滑市で創業した造り酒屋としても知られている。

探検レポート116

武豊の町を南下し、半島の先端の師崎に向かった。知多半島にはこれまで何度かホーロー探検で訪れたが、海岸線に沿って一周をしたことはない。東海岸の武豊から西海岸の内海までの区間はまったく始めてである。
といっても、師崎には三河湾に浮かぶ篠島や日間賀島をつなぐフェリーの発着場があるから、名物の大アサリやタコの踊り焼を食す以外にも、釣や観光で足を運んでいる。
しかし、ホーロー看板があったという記憶はない。おそらく観光地化が進んで、お宝発見はほとんど期待できないだろうが、行ってみる価値はありそうだ。
…どうやら予感は的中したようで、お宝の姿を見ることなく師崎を通過し、ジャンボ海老フライで有名な「まるは食堂」を横目で見ながら豊浜に着いた。
徒歩作戦に切り替えて、路地をのんびりと歩く。いかにも漁村らしく、クルマも通れない狭い通路に、屋根と屋根がくっつくほどの間隔で家屋が並んでいる。
 こうしたロケーションは頭上が気になって仕方がない。チャップリンの映画じゃないが、空から植木鉢やフライパンが落ちてこないとも限らない(笑)。
窓を開けて、「○○さ~ん、雨が降ってきたよ~」、など言えば、すぐ隣の家の窓から「ありがとうよ~」なんて言って、洗濯物を取り込む…こんなやり取りがあれば、もっと楽しい。
この日は更に、上野間から内海までの海岸線にお宝の姿を追ってハンドルを握ったが、琺瑯の女神は微笑むことなく、一日が終わった。
ホーロー探検に引っかけて、「冬の海を見に行く」…という自分なりのテーマで出かけてみたが、寒々とした鉛色の荒れた海を想像していたのに、波も立たない穏やかな緑色の海、そして小春日和の一日だった。
まぁ、生活感溢れる町の風景を切り撮れただけでも、“良し”としよう。
(2007.1.7記)
※画像上/武豊町の南蔵醤油の蔵の中。すえた蔵の匂いと醤油匂いが混ざっていた。
※画像下/武豊の味噌蔵が集まるの路地を歩く



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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