ホーローの旅
レポート117 新春探検 JR東海道本線に沿って
2007.1.13
岐阜県大垣市~垂井町~可児市
溢れかえった本を処分しようと思い、Amazonとヤフオクのサイトを研究するうちに、いつしかのめりこんでしまった。
休日は、PCの前にかじりついて朝から晩まで古書のマーケット情報を見ていたが、そのおかげで、肩こりや目の疲れ、血圧まで上がる始末。
「これじゃぁ、いかん」とようやく重い腰を上げて向かったのが、岐阜県西濃地方。自宅からわずか2時間の距離だが、東海道本線沿線はこれまで何度も訪れている割には洩れも多いようだ。
今回は同好者のクエストⅢさんの情報をたよりに、初見の看板に出遭うことを楽しみにハンドルを握った。
まずは大垣市であるが、東海道本線沿いにある有名な看板屋敷を再訪した。2年前と変わらぬロケーションに、一枚の欠落もなく残っている様子に胸をなでおろす。
正直言って、琺瑯狩りの横行や家屋の建替えが当たり前の昨今に、これほどのパフォーマンスをもった屋敷が存在すること自体が凄いことなのだ。
全国を回って看板屋敷を撮り続けてきたが、屋敷としての素晴らしさは群を抜いている。すでに廃屋になっているようだが、いつまでも残って欲しいと思わずにいられない。
さて、今回の探検としては、同じく東海道本線沿いにある看板屋敷を確認する目的がある。クエストⅢさんの情報では、「車窓から黄色い看板と、他にも何枚かちらりと見えた」ということだが、私も何度もこの区間は走っているがこれまでまったく気づかなかった。
果たして本当にあるのか…適当なところに車を止めて、いつものように自転車作戦を開始した。
なるべく線路沿いに走ろうとするも、家屋の敷地が入り組んで、道がなくなり何度も阻まれる。しばらく走ってアタリをつけた場所に出ると、あったではないか!
小さな台風でさえひとたまりもないような、今にも崩れそうな家屋に、看板が何枚も貼られていた。
高く伸びた庭木が邪魔をしているので、車窓からは見えなかったようだが、よく観察すると、その素晴らしさ、パワーは圧倒的である。
地元にいながらこれまで気づかなかったことが情けない。 屋敷には全部で8枚の看板があったが、中でも圧巻なのが「たこの吸出し」。
大正2年に創業した町田製薬の皮膚薬である。戦前から昭和30年代にかけては、どこの家庭にも常備薬としてあったというほどポピュラーな薬だ。
何かの本で読んだが、林間学校へ行くときの持ち物として児童に持たせたという記録もあるそうだ。
汚い話だが、不衛生な当時の環境では、キズをしたりデキモノができるとすぐに化膿してしまい、患部によく膿みが溜まった。それを治すのが「たこの吸出し」のウリだったようで、家庭薬の代表選手であったようだ。
今でも「吸出し青膏」とブランド名を変えて、当時のデザインを踏襲したパッケージで売られている。
岐阜県内での新たな看板屋敷の発見に気をよくして、垂井町に向かう。垂井は東海道五十三次の宿場町である。規模は小さいが、JR垂井駅から西に当時の宿場通りが延びていた。
大鳥居のある辻には板壁の家屋や蔵が並び、なかなか雰囲気がある町を造っている。
これまでの探検ではこの町をじっくりと探したことがなかったが、商店街の古い建物や商店を覗いていくと、思ったとおり何枚かゲットすることができた。
このまま関が原方面に向かうことも考えたが、時間が中途半端なことと、明らかに雪を孕んだどんよりとした西の空を見ると、その気もなくなってしまい、ここで折り返すことにした。
帰路は大垣市から岐阜市、各務原市を抜け、可児市で何枚かお宝をゲットして自宅に戻った。
運動不足解消の意味もあって臨んだ探検だったが、新たな看板屋敷の発見もあり充実した内容になった。
ただし、寒さもあって車からは出たくなくて(笑)、かつ、自転車に乗ったのもほんのわずかな時間で、結局は運動不足解消にはほど遠かった。
(2007.1.21記)
※画像上/岐阜県垂井町。大鳥居のある辻には板壁の家屋や蔵が並び、なかなか雰囲気がある町を造っている。
※画像下/大垣市にあった看板屋敷。2011年に取り壊され、駐車場になった。