琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート118 東濃の酒蔵を訪ねて

2007.2.3
岐阜県瑞浪市~中津川市~八百津町~多治見市


探検レポート118

このひと月、本棚の整理をしながらヤフオクとAmazonのサイトをひたすら見ていた。何しろ、部屋が本で溢れかえっている。
少しでも捌いてお金に換えることができれば申し分ないが、世の中そんなに甘くはない。オークションも低価格の設定で出品しないと買い手が付かないし、登録制のAmazonマーケットプケイスでは、たとえ売れてもかなりの手数料を取られてしまう。
あれやこれやと頭を悩ませて、毎日のようにPCにへばりついていたのが良くなかったのか、眼精疲労から肩こりがひどくなり、血圧も上がってしまった。
天気の良い休日でさえ、ぼうっとした顔で部屋にこもっている私を見かねて、カミさんが「外に出てみたら」と言い出した。
体調はあまりよくないが、その言葉に促されて、久しぶりにハンドルを握った。あまり遠出をするつもりもないので、以前から気になっていた酒の醸造元を回ることにした。うまくいけば、お宝にめぐり遭えるかもしれない。
まずは、自宅から30分の距離にある瑞浪市の2軒の酒蔵を訪ねた。土岐川のほとりに中島醸造(株)とわかば(株)がある。どちらも元禄年間の創業である。
中島醸造は年季が入った黒壁に囲まれたたたずまいが粋だが、お目当てのホーロー看板はない。銘柄は山田錦の原料米を使った「始祿」「小左衛門」を持っている。
中島醸造よりほんの少し行ったところにあるのが、わかば(株)だ。杉玉が下がっていなければ、ふつうの民家にしか見えない。ここも山田錦を使った「若葉」という銘柄がある。
残念ながらお宝はないが、酒蔵がある小道というのは、静けさの中に凛とした雰囲気が漂ってなかなか風情がある。

探検レポート118

岐阜県東濃地方は昔から酒造りが盛んで、あまり知られていないが意外にたくさんの酒蔵がある。なかでも有名なのは多治見市笠原の「三千盛」。辛口の旨い酒である。
中津川市にも多くの酒蔵が残っている。今回目指すのは福岡町にある恵那醸造だが、ここは花王石鹸(現・花王)の創始者である長瀬富郎の関係として知られている。昔は長瀬醸造と名乗っていたようだ。
恵那市からJR中央線に沿って、恵那醸造へ行く道すがら、美乃坂本駅に立ち寄った。以前、看板探しに訪れて空振りだったところだが、駅前の自転車屋でお目当てのお宝をゲット。
なんと、店内の柱に3枚ものレアものが貼られていた。本日、最初のヒットに思わずニンマリしてしまう。
中津川市の蛭川から福岡町にかけては、これまでの探検でしらみつぶしにお宝を探したと思うが、うれしいことにまだ洩れはあったようだ。
実は今回の酒蔵めぐりの発端となったのが、まったくの偶然だった。先日の東京出張の折に訪れたとある博物館で見たビデオに、福岡町にある恵那醸造の入口の黒壁に、2枚の看板が写っていたのだ。「モロに私のテリトリーじゃないか」…愕然としつつも、食い入るように映像を目に焼き付けた。
国道から細い県道に入り、二つ森山方面に向かう。クルマが急な坂をぐんぐん登っていくと、ビデオで見た酒蔵がそこにあった。
「鯨波」と藍色ののれんに染め抜かれたすぐ横に、2枚の真っ赤なホーロー看板が貼られていた。毎日丁寧に磨いているのだろうか、「磯侍」と「鯨波二つ森」の看板は光沢を放ってピカピカに光っていた。
あたりの景色ものんびりとしてすがすがしい。山里こそホーロー看板が似合うと、改めて思った。
暖冬異変のポカポカ陽気に眠くなりそうだったが、この日は更に同じ中津川市にある三千桜酒造を回った。
八百津町に抜ける山道にはところどころ除雪されて固まった雪が残っていたが、それでも2月なのにまったく雪がないことに驚きつつ、“冬眠”などと言ってはおれないなぁ…と思いながら、更に、翌週の看板探し、どこに行こうか…などと自分なりに畳み掛けて、山を下りた。
(2007.2.14記)
※画像上/岐阜県瑞浪市の酒蔵、わかば(株)。
※画像下/多治見市のJR太多線沿いにある看板屋敷。現在はすべて消失している。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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