琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート120 2007年暖冬 福井の旅

2007.2.24
福井県福井市~永平寺町~勝山市~坂井市丸岡町~あわら市


探検レポート120

思いのほか長く続くトンネルを抜けると、澄んだ空気に反射するような景色が開けた。
スピードを落とした電車は、雪がまったくない今庄駅のホームをゆるゆると通過した。
思えば昨年の今頃は、寒々とした灰色の景色に、雪の壁に埋もれた家並みが寄せ合うように縮こまって見えた。
それが、今年はどうしたことか。どこかしら春を思わせる陽光に、山間の集落も輝いて見える。豪雪地帯の今庄に雪がないなんて、信じられないのだ。
ホーロー探検をするわが身には、素直に暖冬を喜びたい。まさか、厳冬の2月に福井で看板探しができるとは思いもよらなかったが、ここは異常気象の恩恵を受けつつ、お宝探しに精を出すのだ。
福井駅でレンタカーを借り、まずは足羽川のほとりにある地酒醸造元に向かう。美川酒造というのがそれで、このところ良く見てる地酒のサイトで、酒蔵に写り込んでいたホーロー看板を見つけたのだ。
しかし、目的の醸造元はなかなか見つからなかった。ナビと地図を駆使して集落を探し出したものの、醸造元がどこにあるか分からず、狭い路地を行ったり来たり。小さな集落なのに、30分以上探しまわり、最後には車を置いて徒歩作戦に切り替えて、ようやく見つけた。
舞美人(まいびじん)とはきれいなネーミングだ。地酒はこうでなくちゃならない。「○△盛」「△○正宗」ではなんだか味気ない。
初見の酒看板をカメラに収めて、まずは目的をひとつクリアした安心感で、気分も晴れやかに、次の醸造元へ向かう。

探検レポート120

青木蘭麝堂という薬用酒を造っている蔵元だ。朝倉氏の一乗谷遺跡の近くにあるのですぐに分かるが、これまで、何度かこの付近を通過していたにも関わらず、お宝があることを知らなかった。
蘭麝(ランジャ)酒の看板は3種類が貼られていた。カナ書きの短冊タイプは福井市内でも見つけているし、福井県博物館にも展示されているのを見た。貴重な看板には違いないので、剥がすことなく、そっとしておいてほしい。
さて、今回の最大の目的は勝山市内の探検にあったが、運が悪いことに、この日の市内は、どこから集まってきたのか、物凄い人波だった。なんでも、古い町並みが残る目抜き通りでは、お祭りが行われているらしい。
交通規制が敷かれ、車で近づくこともできないため、残念だが早々にUターンすることにした。市内のはずれで、看板酒屋を1軒見つけたのはラッキーだったが、悔いを残す探検になってしまった。
前回訪ねたときも、時間切れで素通りをしたので、よくよく縁がない勝山市であった。 暖冬異変を裏付けるように、午後を回るとポカポカ陽気になってきた。
窓を少し開け、地元FM局の懐かしのヒット曲を口ずさみながら走る。「虹とスニーカーの頃」…1970年代のチューリップの名曲が流れている。
「♪若かった~、何もかもが~」。…うん、確かにあの頃は若かった(笑)。
この日は松岡町(現・永平寺町)の町並みや、丸岡城(坂井市)、あわら温泉と巡り、ホーロー探検というよりも、古い町並み撮影に精を出す結果になってしまった。
お宝の姿はほとんど見ることができなかったのも、福井の現状なのだろう。まぁ、こんな旅も良しとしよう。
(2007.3.18記)
※画像上/暖冬で雪も消えた、旧・松岡町の町並み。老舗の酒蔵もあって、静かな空気が漂ってた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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