琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート127 震災後の能登半島へ 石川探検

2007.4.15
石川県金沢市~はくい市~中能登町~七尾市~富山県氷見市~高岡市


探検レポート127

このサイトを立ち上げてから、全国のホーローファンとお近づきになれた。
石川県金沢市在住のクエストⅢさんもその一人だ。月に何度も金沢を訪ねているが、彼からの情報をもとに、効率よく看板探しをさせていただいている。
そんな中、メールのやり取りをするうちに、同行して看板探しをしようではないか、という話が持ち上がった。何でも金沢市内でいくつか初見の看板を見つけたということだ。私のほうもお返しに、能登半島南部の看板情報を提供することで話がまとまった。
▼4月15日
金沢駅西口にあるAPAホテルの前で彼と待ち合わせた。お互い初対面だったが、すぐに打ち解けあい、彼の車で出発。
最初に向かったのが、鎌の看板がある金物屋。しかし、日曜日とあってあいにくの休みだった。
次に訪ねたのが「ヱスビーカレー」が店内の柱に貼られた商店。店頭には食料品や乾物が並び、昭和の匂いがプンプン漂っている。店は営業中なので、店番をしていたお婆さんに事情を話し、撮影をさせてもらった。
前回の栃木探検の折、店主にすごい剣幕で拒否されたことがトラウマとなって残っているので、マニュアル通りにきちんと許可を貰う。
お婆さんいわく、「この店は戦前からやっとるけ、このあたりでも古いんだけぇ」。
店の棚には、ホコリを被ったヱスビーカレーの箱や、日焼けしたラベルが剥がれかかった「チキンソース」の瓶が並んでいた。
間違いなく何十年も経過しているはずの瓶は、中身が入っているようにも見える。もし入っていたなら、これはかなりおぞましい(笑)。
金沢市内では更に看板酒屋や「ツルマルマッチ」が貼られた廃業した商店を回った。これまで何十回と訪れている街だが、私が見てきた風景は、いずれも金沢の表面的な部分でしかないようだ。
クエストⅢさんに案内された金沢は、緩やかに湾曲する坂の脇道に入ると、真新しいシャレた建物の間に、古い家屋が挟まれるように渾然一体になじんでいた。
そして、そこに根付く人たちの生活感が溢れる、まだまだ珍しいお宝が息を潜めて隠れている気配が濃厚な街だった。

探検レポート127

さて、二人のホーローマニアを乗せたクルマは、更に北上し、能登半島を目指した。
震災後間がないタイミング、しかも震源地に近いとあって、倒壊した家屋や商店、道路の損壊等の傷跡を想像していたが、七尾方面はどうやら無事だったようだ。
もちろん、心配していた看板も元気な姿を見せてくれた。 鮮やかな赤地が眩しい「清酒天平」の看板がかかった布施酒造店には、時代を感じさせるレンガ煙突が、青い空に向かって伸びている。
♪城跡から見下ろせば蒼く細い河 橋のたもとに造り酒屋のレンガ煙突~
さだまさしの往年のヒット曲「案山子」(1977年)が思い浮かぶ。きっと、この煙突を見て、心癒された人も大勢いるはずに違いない。
七尾では更にJR七尾線沿いに貼られた「立川ペニシリン」や、「くすりは富山の廣貫堂」を撮影し、富山県の氷見市に入った。
以前から気になっていた市内をぐるりと回るも収穫はなく、海岸沿いに南下した集落で、「ブラザーミシン」を見つけた。
すでに夕闇も迫り、このあたりが潮時だった。 金沢に戻った私たちは、居酒屋で一杯やりながら看板談義に花を咲かせた。
おそらくこの日本で、ホーロー看板などというマニアックなモノを追っかけている人たちは数えるほどしかいないだろう。
まさに“類は友をよぶ”というのだろうか、看板探しを始める以前は、ついぞ考えられなかったことだが~マニアックな人たちのことを~路上観察から非稼動自販機、缶コーヒーから牛乳瓶のフタまで何にでも興味をもって、熱く語るクエストⅢさんを見て、彼の人間性や底流にあるこだわりに共感し、相槌を打ち、素直に笑う自分に、不思議な気がした。
(2007.6.2記)
※画像上/七尾市の布施酒造店の外観。代表銘柄は「天平」。レンガ煙突がいい味を出している。



2007年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17