ホーローの旅
レポート131 東北ホーローの旅4 岩手県山間部横断
2007.5.5
岩手県宮古市~岩泉町~宮古市~盛岡市~雫石町
意外に知られていないが、岩手県は北海道の次に面積が広い県だ。
それだけに距離感をあなどって甘い計画を立てると、看板探しどころか時間を気にしてひたすら走るハメになる。
この日の探検がまさにそれだった。立派な白壁の蔵があちこちに残る岩泉町で龍泉洞を見学し、「さぁ、これからが探検の本番や!」と鼻息を荒くしたことはいいが、JR岩泉線に沿って走る道は、東北特有のブナの原生林に覆われた山の中。小さな集落が忘れた頃に出てくるような景色に囲まれて、悪路続きの“酷道”をひたすら走ることになった。
海べりにある田老の民宿を出るときに降り出した雨はいっこうに止む無配もなく、その上、お目当てのお宝の姿も少ない。
岩泉町を出てから更に山が深くなってきた道は蛇行を繰り返し、時間がいたずらに過ぎていった。
この日は、3時に親父の実家がある秋田県の角館に到着する予定で走っているが、この雨とこの道の状態ではいつになったら着くのか分からなくなってきた。時計の針は11時を指していた。
今は宮古市に併合されたが、旧新里村の茂市駅から進路を西に直角に折れ、JR山田線に沿って旧川井村に入る。
国道106号線にある道の駅ではGWとあってか、どこからやってきたのかと思うぐらい駐車場はクルマの列で埋まっていた。
ちょうど春のイベントの真っ最中で、採れたての野菜や山菜が仮設テントの下で売られていた。 お宝のほうは期待したほどではなかったが、時間を気にしながらも時折出てくる集落に道草しただけのことはあってか、酒や太田胃散の看板を見つけることができた。
盛岡市にようやく出たときは、雨も上がって薄日が差しはじめた。 ホーロー探検には大票田ともいえる盛岡市だが、残念ながらじっくり探している時間がない。
酒や醤油の醸造元などお宝の匂いがするポイントはチェックしてきたが、今回訪ねるのは無理のようだ。
しかも、それに追い討ちをかけるように、市内中心部は渋滞していてノロノロ運転になってきた。
ようやく渋滞を抜けて、国道46号線を雫石町に向かう。登山の帰りに何度も立寄った、盛岡冷麺が旨い「ぴょんぴょん舎」を横目で見ながらひたすら走る。
晴れていれば岩手山がきれいに見えるはずだが、重く立ち込めた黒い雲に覆われて、小岩井農場がある広大な裾野が見えているだけだ。 仙岩トンネルを抜けて秋田県に入った。
和賀山塊のブナの原生林は萌えはじめたばかりだ。思えば、登山をしていた頃は毎年のようにこの山に通っていた。
岩魚を釣りながらミズやフキを食べ、焚火の横で眠り、何度も稜線に立った。つい3年前まで、そんなサバイバルゲームに夢中になっていたころが懐かしかった。(つづく)
(2007.7.16記)
※画像上/白壁の癖が残る岩泉町を行く
※画像下/雨が激しく降る中、山中に現れた巨大な看板商店。