琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート133 レアものを求めて、奈良県ワンディ探検

2007.6.17
奈良県大和郡山市~斑鳩町~川西町~桜井市~橿原市~葛城市~御所市~五條市


探検レポート133

幾度となく通っても、そのたびに新しい発見があるのが奈良県だ。
ホーロー看板が急速に姿を消している昨今、奈良県のお宝棲息率は全国的にみても比較的高いと思うが、年々厳しい状況になっていることを実感している。
ご他聞にもれず、今回の探検でも消失した看板を何箇所も見かけた。明らかに剥がされた痕跡を、黒い板壁に見るにつけ、やるせない思いを感じずにはいられなかった。
すべてがホーロー狩りの仕業ではないだろうが、もはやのんびりとはしていられない。お宝たちの“生きている姿”を切り撮り、記録するのは今をおいてないと思う。
大和郡山市のローソク、線香を扱う小さな店にあった「天使綿」と「カメヤマローソク」は、逸品中の逸品だろう。
「天使綿」は広島県のメーカーだが、すでに廃業して今はない。森永製菓に譲渡したというエンゼルマークが可愛い看板はマニアも多く、真っ先にホーロー狩りのターゲットになったという。中国、九州地方に貼られた看板だが、かの地で探しても、これまで見つけることができなかった。
また、「カメヤマローソク」は全国シェアNO.1の商品として有名だが、その小ぶりのデザインが愛らしい看板はマニアにも人気がある。もともと作られた枚数も少なかったといわれるだけに、現役で貼られているものはほとんどないと思っていた。
これまで見つけられなかったお宝と遭遇できたことは、その日のホーロー探検にも弾みをつけてくれる。

探検レポート133

川西町では肥料看板が10枚以上貼られた商店や、明日香村では長年探し求めていていた看板酒屋を見つけた。宝探しゲームのように、お宝に向かって進むというよりも、お宝のほうから目に飛び込んできてくれたとでも言おうか。
偶然に紛れ込んだ袋小路の一番奥にあった「ノーコー散」は、製造元の頑丈な板壁にさりげなく貼られていた。おそらく全国探してもここだけにしかないお宝ではないだろうか。
橿原市の「羽車印カレー」もいい。目を凝らさなければ気がつかないような、家と家とのすき間の壁に貼られていた。
朝から蒸し暑い梅雨晴れの一日であったが、歴史を感じる奈良の町をのんびりと巡った。 お酒の醸造元では、看板を盗られるという理由で、これまでトレードマークのようになっていた看板をはずした店もあった。庶民の生活の中に溶け込んで生きていた看板が、こうして姿を消していくのは寂しいことだ。
時代が変わって、ホーロー看板が博物館の中でしか見られなくなるのも遠いことではないかと思うが、できることならそっとしておいて欲しいと思う。
(2007.8.12記)
※画像上/奈良県橿原市今井町の町並みを歩く。
※画像下/奈良県川西町にあった肥料店。2008年4月、取り壊し確認。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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