琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート135 四国→中国真夏の遠征1 香川UDON編

2007.8.4
兵庫県淡路市~徳島県鳴門市~板野町~香川県東かがわ市~さぬき市~高松市


探検レポート135

突然の台風襲来によって、ずっと暖めていた計画がドタキャンになった。
まさか出発日に台風が直撃するなどとは、まったくのビンゴ。それも、台風の上陸地はこれから私が向かおうとしていた南九州というからには、宝くじに当ったようなものだ。
出発前日は、運休による高速バスの払い戻し処理から始まって、4泊分のホテル、レンタカーのキャンセルを行うためにてんてこ舞いだった。 天災ということで、キャンセル料を取られなかったのはラッキーだったが、ひと月も前から練っていた計画が、まさか一瞬にしてポシャってしまうとは夢にも思わなかった。
そんな憎っき台風であるが、ホーロー看板探検のためにせっかく確保した6日間の休みをみすみす没にするのも勿体ない。転進先を考えてでも行きたい。
真っ先に浮かんだのが、秋田・青森。しかし、ちょうどこの時期は東北三大祭り(仙台七夕・秋田竿灯・青森ねぶた)の真っ最中で、かの地は観光客でごった返している。
その上、日本海に抜けた台風の進路が、北陸から東北、北海道に向かっているということで、このままだと手をつないで一緒に行くことになりかねない。
あれこれ思案するうちに、計画がどんどん縮小していく。当初の6日間をかけての南九州探検という大計画が、結局、台風一過を待って淡路島から四国を目指し、さらに岡山に上陸、その先は風の吹くまま現地で決める…といういい加減なスケジュールになってしまった。

探検レポート135

▼8月3日
午後になっても台風の影響が出ていた。
晴れたかと思ったら大粒の雨が激しく落ちてくる。風も強いし、北の空は墨で厚塗りしたような真っ黒な雲に覆われていた。
目指す関西方面の天気予報をみると、どうやら回復してきているようだ。もうこれ以上待てない! クルマにキャンプ道具一式と、地図や着替えを積み込み、「一人でよく行くわ…」と困惑顔のカミさんに見送られ、午後4時に出発。
節約のため滋賀県大津までの150キロは下道を選ぶ。彦根からはすごい渋滞に捕まった。
時間をたっぷりかけてようやく大津インターより名神に乗り、中国道につないで宝塚を過ぎたあたりでSAビバークとなった。エンジンを切ると暑くて寝れないが、節約のためぐっとこらえて寝苦しい夜を過ごした。
▼8月4日
まだ薄暗い中を出発、明石海峡大橋を渡り、夜が明けた淡路島に上陸した。
ウォーキングを楽しむお年寄りを横目に見ながら、海岸線に沿って時折出てくる集落や小さな商店街を寄り道していく。
収穫はほとんどなかったが、淡路島は昨年の5月に南部をほんの少し触っただけなので、島の縦断ができただけでも充分満足だ。
くすりや地酒の看板も見つけることができたのもラッキーだった。戦前には60軒もあったという島の醸造元も、廃業が相次ぎ、今では3軒に減ってしまったというが、偶然見つけた酒屋の自販機の陰に隠れている看板は、おそらく今はなき銘柄だろう。
島の縦断は3時間程で終わり、鳴門海峡を渡りいよいよ四国に上陸した。これから香川県の高松市を目指すことになるが、ルートはまったく考えておらず、地図を見ながら適当に走る。
徳島県の鳴門市から板野町を抜け、JR高徳線に沿って進む。板野町は昨年の探検でも寄り道しているが、香川県との県境近くの山間の集落で、7枚もの看板が貼られた看板屋敷を見つけた。

探検レポート135

しかし、残念ながら隣接した建物の影に隠れて全体が見えない。往年は素晴らしい看板屋敷だったろうに。
台風一過の真夏の陽光はいやおうなく照りつける。むせるような夏草の匂いを嗅ぐと、遠い昔、流れる汗をぬぐおうともせず、補虫網を振り回して蝉やトンボを追った日々を思い出す。無垢な少年だった頃がまぎれもなくあった。今はホーロー看板などというヘンなものを追っかける中年オヤジになってしまった(笑)。
対向車とも遭わない、目が回るような九十九折の峠道をようやく下りて、香川県に入った。ここからはのんびりと高松市を目指すだけだ。
古い町並みが残る東かがわ市の引田町やさぬき市の志度町は、道も狭くクルマの運転にも気を使うが、その割にはお宝の姿はなく残念だった。引田町のはずれで今回ぜひ見つけたかった「悦の司」をゲットできたのはラッキーだったが、香川県在住のホーローマニア・ワンズさんに教えていただいた看板屋敷は見つけることができなかった。
さて、香川県といえば避けて通れないのが、讃岐うどんの存在だ。映画「UDON」のDVDを見てずっと気になっていたが、確かに国道を走っていると次々にうどん屋が出てくる。
有名な店は行列ができるというが、せっかちな私としては、適当に入った店で勝負するのもいいだろうと勝手に決める。
それでもねらい目は駐車場が広くて、昼時でなくてもクルマがたくさん止まっている店だろうか。 東かがわ市の引田にそんな店を見つけた。
「手打ちうどん宮川」は、アゴとこめかみが痛くなるほどコシが強かった。UDON巡礼一杯目としては、いきなりのビンゴだ。
ホーロー探検のことはすっかり忘れて、まずは一杯のうどんで満足してしまった。そして、これから二日にわたって続くUDONの旅に妙に興奮するのだった。(つづく)
(2007.9.2記)
※画像上/香川県東かがわ市引田の「手打ちうどん宮川」 ぶっかけうどん(冷)大320円。こめかみが痛くなるほどコシの強さと、のどごしなめらかなツルツル度が絶品。店内でうどん打ちの実演あり。おでんもうまい!
※画像中/昼下がりのさぬき市の町並みを歩く。
※画像下/徳島県板野町・お遍路さんの通る道。真っ黒に日焼けした何人ものお遍路さんにすれ違った。
※宿泊/ビジネスホテルパルコ(高松市)シングル素泊まり3600円 ★★★★★ ホテルの設備が全体的に汚れており、部屋は古く煙草の臭いが染み付いている。エアコンがまったく効かず、汗まみれの一夜を過ごした。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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