琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート138 四国→中国真夏の遠征4 岡山へ

2007.8.7
島根県津和野町~吉賀町~広島県庄原市~岡山県新見市~真庭市


探検レポート138

寝苦しい夜を過ごした山の頂上のキャンプ場を後にし、津和野町日原の集落に下りる。
国道9号線を南下し、夜が明けたばかりの津和野の中心街に入るが、お宝の姿はまったくなかった。
ずっと以前から、津和野温泉の町並みにはひなびたレトロ空間が残っているというイメージがあったが、私が訪れた2007年真夏の津和野は、そんな期待を100%裏切ってくれた。
町全体が整備されすぎて、“きれい”過ぎるのだ。 確かに造り酒屋や旅館の重厚な建物はそれなりであるが、ゴミひとつ落ちていない整然としたタイル張りの道路や、景観重視のため電柱が埋め込まれた路傍を見ると、不自然さを通り越して何だか滑稽だ。
昭和のレトロな雰囲気を探そうにも、いかにも造られた町にしか見えない。
どこでもそうだが、町並み保存地区は行政の力の入れすぎもあって、観光地化が進みすぎている。そんな意味では、残念だが自然体のレトロを実感できるところは本当に少なくなった。
津和野までの往復30キロは勿体なかったな…などと振り返りながら、再び9号線を日原まで戻り、今度は広島県に抜ける国道187号線の山越えルートを選ぶ。
古賀町までは小さな集落といえども丹念に探しながら寄り道していくが、やはりお宝の姿を見つけることはできない。

探検レポート138

しかし、古賀町の中心部に入るとオロナミンCや学生服、酒看板が迎えてくれた。山間の空間に突然現れたような街だが、中国山地を東西に横断する古くからの街道が通っていたこともあり、生活感がある落ち着いたたたずまいを感じる街だった。
並行して走る中国自動車道を横目で見ながら、ひとり探検隊のクルマは広島県を目指す。九十九折の向峠を越えて一旦は山口県をかすめ、更に広島県に入ると人里が広がり、ようやく山岳ルートから解放された。
中国道沿いの吉和から戸河内、千代田インターまでの集落は、初めてチャレンジするルートということもあり、かなり期待していたが、庭木が邪魔してちらりとしか見えないカクイ綿を1枚見つけただけで、結果は完全なボーズだった。
千代田インターから庄原インターまでは昨年10月に探検をしているのでパスし、中国道に乗って、東城インターまで一気に走った。 庄原市東城町は落ち着いた古い町並みが素敵な街だ。中心部の町並みには直線と曲線の道が交錯し、セピア色のレトロ感が溢れていた。
津和野のような観光地化が進んでいる街ではないので、観光客の姿もなく、懐かしさを感じる癒し空間だった。 お目当てのお宝は、そんな癒しの街にひっそりと残っていた。
廃業した(?)くすり屋の軒先には、昭和30年代初めのオロナイン軟膏の看板が吊るされ、真夏の風に小さく揺れていた。

探検レポート138

岐阜の自宅を出て、5日目。急いだり、のんびりしたりと…糸が切れた凧のように走ってきたが、東城から岡山県新見市に入ると、何故だか(家に帰りたい…)という気持ちが募ってきた。
気持ちの良いふとんや慣れた枕で眠りたいわけではない、カミさんの手料理が食いたいわけでもない(笑)。
強いて言えば、ホーロー看板を探し続けるというモチベーションが落ちてしまったからだろうか。 まだ昼を回ったばかりだし、今からだったら夜には自宅に着ける…一度そんな気持ちになったら、いても立ってもいられなくなってしまった。
(ようし、心は決まった)…帰ることに決めた! モチベーションが落ちたといえども、新見市から真庭市(旧・勝山町)までの国道沿いは未見なので、念入りに探検することにし、落合インターをゴールに、5日間のホーローの旅をフィニッシュすることにした。
期待通りに、岡山県のお宝は最後を飾るにふさわしい醤油や酒、薬の看板が出迎えてくれた。
淡路島、四国、中国と風の吹くまま漂ってきた今回のホーローの旅だったが、振り返ってみれば、ひとり旅の楽しさを久々に実感できた気楽な旅に仕上がったようだ。(おわり)
(2007.9.29記)
※画像上/島根県津和野町の町並み。整然としすぎて返って不自然さを感じた。
※画像下/岡山県真庭市月田の造り酒屋。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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