琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート149 風の吹くまま【前編】大阪新世界串カツ編

2008.3.1
奈良県吉野町~大阪府大阪市


探検レポート149

近鉄橿原神宮前駅から吉野へと向かう普通電車は、うららかな田園を背景に、ガタゴトと風を切る。
やがて吉野川と並行してレールが走り出すと、山裾にへばりつくように建つ集落の一軒に、整然と貼られたホーロー看板が見えてきた。
鮮やかな黄色の看板は、「白髪染初姿」と読める。大阪在住のホーローマニア・TMさんより教えていただいた物件である。はやる心を抑えながら最寄の駅で降り、桑畑のあぜ道に立ち、カメラに収めた。
今回の探険テーマは、ちょっとばかしキザだが、“風の吹くまま”である(笑)。
テキトーに歩いたり、走ったりしながらテキトーにお宝を探す。偶然にお宝と遭遇できれば、尚更良い。
とはいえ、京阪神の探険では、いきあたりばったりでお宝と遭遇できる確率は限りなく低い。“風の吹くまま”などとうそぶいても、お宝情報はしっかりメモしてきた。
まぁ、花粉を巻き上げた風に吹かれて、クシャミ連発とならないように、マスクでもしていこう。
再び橿原神宮前駅に戻り、南大阪線に乗り換えた。一番安い切符を買い、とりあえず大阪を目指す。車窓からお宝が見つかれば途中下車して撮影しようという寸法だ。
香芝市あたりで古い家屋の板壁に貼られた酒看板を見つけたが、急行電車だったことが災いして、降りることができなかった。こういうのはちょっとばかしストレスになる。
その後もずっと車窓から看板を探していたが、疲れが出てきたのか、いつしか眠ってしまった。
気づいた時には終点の阿倍野橋駅に着いていた。
さすがに大都会、喧騒の大阪である。 (さて、どうしようか)とちょっとばかし考えてみるが、とりあえずはJR環状線に乗ることにした。
車内で地図を広げ、相互リンクしている孫右衛門さんのサイト「郷愁小路」で取り上げられていた、城東区の仁丹看板を撮りに行くことに決める。

探検レポート149

京橋駅で降り、まずは腹ごしらえ。アーケード商店街は買い物客でごった返していた。人ごみは苦手なので、商店街から少し離れた坦々麺専門店に入る。
適当に入った割には、ここで食した「黒胡麻坦々麺」が絶品だった。
さぁ、これからが本番である。仁丹看板を目指して歩き出す。
城東区蒲生から今福西にかけては、戦災から逃れたのか、古い町並みが残る一角があった。「いかるが牛乳」の古い牛乳箱を下げた民家や、「ライオンかとりせんこう」の看板を貼った民家がひっそりと建っていた。
狙いの仁丹看板は四辻にある民家に貼られていた。これまで見つけていない「仁丹歯磨」の町名看板なので、うれしくて何枚も撮る。
他にもこうした看板が残っているのだろうか…好奇心と疑問が頭をよぎると、そこは“風の吹くまま”である(笑)。首からカメラを下げ、パーカーにディパックを背負った怪しげなオヤジは、そのまま鶴見通りから、関目町をぐるりと回って京橋駅に戻った。
何もなかったのは残念だったが、一歩路地に入れば人も車も通らない、都心にあって意外に閑静な住宅地だということに改めて感心をした。
京橋駅から次に向かったのは、大阪駅近くにある仁丹屋敷。投稿者のヴィンちゃんから教えていただいた屋敷だが、行ってみて驚いたのは、梅田の中心からわずか徒歩10分の至近距離に残っていたことである。
大礼服のトレードマークが健在なのも素晴らしい。この屋敷には裏側にも「トーア毛糸」が貼られており、前後の民家がなかった往年は、さぞ目立っていただろうと思う。
京都方面からの東海道本線の乗客は、この看板が見えてきたら、大阪駅も近いと目印にしていた人もいたのではないだろうか。
まだ陽が高い。再び大阪駅に戻り、今度は新今宮から南海鉄道に乗り継ぎ、堺市を目指す。七道駅から堺駅間にある看板屋敷を撮影するのが目的だが、一往復したにも関わらず、高架下にある屋敷を車窓から確認することはできなかった。
ともあれ、七道駅から歩き出す。古い家屋もぼちぼちとあるが、高架に沿って真新しいマンションができていたりして目的の屋敷は見つからない。そうこうしているうちに堺駅に着いてしまい、今度は逆戻りに歩くことにした。

探検レポート149

しかし、残念ながら見つけることができず、足の痛みも辛くなってきた。電車と徒歩から探してみるも、ついに看板屋敷は僕の執念からするりと抜けてしまった。
躍起になっても仕方がないが、こうしたことはよくあることだ。
すでに夕闇も迫り、街灯も点り始めた。新今宮に戻り、通天閣を望む新世界で晩飯にすることにした。 派手なネオンが点滅する新世界通りは、噂どおりすごい人ごみだった。お好み焼き屋や名物の串カツ屋が軒を並べ、有名店には行列ができていた。
こちらは一人なので、行列に並んでまで入りたくない。されど、串カツは食いたい!一人で入れそうな雰囲気がある店を探しながらフラフラと歩く。“風の吹くまま”である(笑)。
ようやく見つけた、少しうらぶれた店がよかった。客の入りも悪く、明らかに西成の労働者風のおじさんたちが、黙って一人飲んでるのもいい。
かくいう私もきっと同じように映っているだろうかと思いながら、背中を丸めて、生ビールと串カツで一杯やった。
酔いが回るうちに疲れがどっと出てきたのか、翌日回る予定の京都の地図を眺めることさえどうでもよくなり、(まぁ、テキトーにいこう、風のふくまま…笑)とぼんやり思いながら、串カツの追加をするのだった。(つづく)
(2008.3.16記)
※画像上/夕暮れの新世界通り。通天閣とネオンがいかにも大阪の下町らしくど派手な印象。
※画像中/大阪市城東区蒲生町の町並み。戦災に遭わなかった民家が残っている。都心にあって閑静な一角だ。
※画像下/仁丹看板が貼られた民家。ライオンかとりせんこうも見える
※宿泊/ビジネスホテル来山北館(大阪市西成区)シングル素泊まり2100円 ☆☆☆☆★ この価格でこのパフォーマンスだったら文句なし!冷蔵庫、テレビはあるが、バス・トイレは共同。ビデオ、インターネットは見放題、し放題。新世界は至近距離だが、夜の一人歩きは要注意。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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