琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート150 風の吹くまま【後編】京都市内チャリンコ編

2008.3.2
京都府向日市~京都市


探検レポート150

大阪天王寺動物園近くの安宿で目覚める。
あいりん地区と呼ばれるこのエリアには、1泊1000円くらいからの激安宿が並ぶ。僕が泊まった宿は2100円だった(来山ホテル)。このあたりでは高級なランクになるようで、価格の割りには冷蔵庫やテレビもあって、満足できる設備だった。
外国人のツーリストや若い女性客も多く、一階にあるフロアでインターネットをしている姿を見かけた。
新今宮駅からJR環状線に乗り、大阪駅で東海道本線に乗り換える。梅田の雑踏を抜けると、一瞬であるが、昨日訪ねた仁丹看板が見えた。
ひげをたくわえた大礼服の軍人さんのトレードマークが朝日に輝いて、何だか睨まれているようだった。
京都府内に入り、向日町駅で下車。ずっと以前に、投稿者の南うなみさんから情報をいただいていた看板屋敷に向かう。
商店街を抜け10分ほど歩いたところで、目的の屋敷はすぐに見つかった。このエリアでは比較的良く見かける「酒は國乃長」の真っ赤な看板が目立っていた。
同じ道を折り返して駅に戻るのも勿体ないので、田んぼのあぜ道を横切ったり、集落の細道から旧道を伝い歩いてみた。

探検レポート150

“風の吹くまま”適当に歩いたところで、お宝が見つかるわけでもないが、白壁の土蔵の横から突然現れた、弓道の弓を持った女子高生の集団にぶつかったり、金歯をむき出して大笑いしながら、井戸端会議の真っ最中のお婆さんたちを見かけたりした。
こうして、のどかにゆらゆらと歩くのも楽しいではないか。
京都駅に着いて、予約していたレンタサイクルにまたがった。
市内を自転車で探検するのはこれが二度目だが、今回は“風の吹くまま”がテーマである(笑)。
適当に走って、お宝が見つかればいいが、自転車ではそんなに遠くまで行けるわけでもない。(まぁ、鞍馬口あたりまで走ってみようか…)そんな気持ちでペダルを漕ぎ出した。
いつも思うが、京都の町家が並ぶ風景は素晴らしい。生活感が溢れる空間に、凛とした静けさを感じるのが好きだ。
どこからか漂ってくるお香の匂いや、打ち水…。でも、町家の路地に入れば、夫婦喧嘩の声も聞こえてくるんだろうなぁ…なんて想像すると、それだけで、心が満ち足りてくる。
京都の魅力は、そんなところにあるのだろうか。
私の場合は、神社仏閣や有名な観光地よりも、京都のこうしたところが好きだ。
ペダルを漕ぐ足は、自然にそんな町に向かっていく。 京都市内に多く残る仁丹の町名看板は、撮影マニアも何人かいて、その努力の成果では、1000枚近く確認されているそうだが、この日も適当に走っているだけで、30枚程見つけることができた。

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町名看板には、仁丹以外にも武田薬品のアリナミンやロータリークラブといったスポンサー付きの看板を多く見かけたが、いずれもホーロー製ではないので、褪色が激しいのが残念だった。
機会があれば、仁丹看板探しのチャレンジをしてみたい気もするが、とりあえずは、近畿方面に転勤になったときの楽しみにとっておこう。
さて、今回の“風の吹くまま”のホーロー探険では、どんな成果が得られたのだろうか。 「成果」といえば大げさだが、大阪と京都の町をふらふらと歩き、べダルを漕いで、串カツやお好み焼を食べ、コロッケパンを食べ、牛丼を食べ(笑)…適当にお宝を探した。
振り返ってみれば、たったこれだけだったが、かっこよく言えば、大阪や京都の“匂い”に触れ、風を感じたのが、一番の収穫だったような気がする。(おわり)
(2008.3.29記)
※画像上/京都市上京区紋屋町。壁に貼られた仁丹看板がよい味を出している。
※画像中/京都市上京区和水町の町並み。凛とした雰囲気がある町家が並ぶ、京都らしい風景だ。
※画像下/私の足になってくれた相棒。ブレーキの調子が悪く、キーキー鳴っていた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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