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ホーローの旅

レポート154 癒しの風に包まれて 信州安曇野探検

2008.4.5
長野県安曇野市~山形村~松本市~諏訪市~辰野町~伊那市~松川町


探検レポート154

海と山とどちらが好きか…と問われれば、即座に「山!」と答えたい。
大学に入学すると同時に山登りを始め、以来ずっと山にこだわって生きてきた。社会人になっても年間50日以上山の中にいたし、正月はいつも山で迎えていた。
数年前に膝を痛めて、今は中断しているが、いつかは“山に帰る”自分をイメージしている。
信州安曇野は僕の山登りの原点とも言うべき土地だ。漠然と山に憧れを擁いていた高校生の頃、安曇野の野に立ち、生まれて初めて雪を抱いた北アルプスの稜線を見た。
豊科から大町までのガタゴトと走る電車の中では、山から下りてきた大学の山岳部の学生たちが、大きなキスリングザックを積み上げ、狭い車内に汗臭い体臭を充満させていた。
流れていく車窓から見える安曇野の景色は、柔らかな緑と雪の稜線が絶妙なコントラストを織りなしていた。
それ以後、幾度となく私は安曇野から山に登った。雪の穂高や常念岳、霞沢岳や有明山の急峻な沢…。
山から下りてきた私を迎えてくれたのは、安曇野のあたたかさだった。道祖神がたたずむ路傍は、やさしい空気に満ちていた…。
前置きが長くなったが、そんな安曇野にまた出会いたくなって、クルマを走らせた。
長野道豊科インターを下りると、そこは安曇野。豊科醤油の醸造元や、山形村の肥料看板が僕を待っていてくれたが、この日は看板探しよりも、道祖神や北アルプスの山々をのんびりと眺めながら、気ままにハンドルを握るほうを楽しんだ。
松本電鉄に沿って新島々まで行ってみたり、安曇野から松本平、そして諏訪湖へと、ひとり足を伸ばした。

探検レポート154

諏訪湖のほとりでぼんやりと湖面を眺めていると、じわりじわりと心が癒されていくのを感じた。 鏡のような水面に映った、眉間にシワを寄せた、いかにも「ストレスオヤジです」といった自分の顔が、少しづつ和らいでいくのが見えるようだった。
サラリーマン生活も27年目に入り、肩こりの上に肩こりを重ねていく緊張とうっとうしさ、相変わらず自分の思い通りに過ごせないせわしない日々が、どうでもいいことに思えるのだ…。
諏訪湖からは、伊那に向かってのんびりと走った。
「清酒 頼母鶴」の看板が吊られた辰野の蔵元や、「ほねつぎ」の看板がさりげなく貼られた農家の小屋…そろそろ田植えの準備が始まるのだろうか、水が張られた田んぼの景色を眺めながら、ちょっとばかし癒された、安曇野の旅を終えた。
(2008.5.17記)
※画像上/山形村で見つけた道祖神。安曇野一帯にはたくさんの道祖神を観ることができるが、鮮やかに彩色されたものは珍しい。男女が手をつないで肩を組んだ姿はお決まりのポーズ。
※画像下/豊科駅近くから見た北アルプスの稜線。ピラミッドのように見える山が、安曇野の象徴的存在の常念岳。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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SINCE 2005.3.17