琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート160 北へ、2800キロ野宿旅5 秋田~山形編

2008.5.5
秋田県大仙市~美郷町~横手市~湯沢市~山形県大石田町~米沢市~川西市


探検レポート160

爆睡した。5日ぶりのふとんは最高だった。 日本酒を飲まないという住職の叔父に、「高清水」や「爛漫」といった秋田の地酒を土産に貰い、出発。この夏に嫁に行く(婿を貰う)従妹も見送ってくれた。
県道11号線を美郷町(旧・六郷町)方面に向かい、まずは最初の目的地、「秋田川」という銘柄を造る出原酒造を訪ねた。
一面の田んぼに囲まれた小さな集落、まるでお寺の本堂と見間違うような建物に、目的の看板が掛かっていた。
杉玉が下がっていないところを見ると、最近は醸造していないのだろうか。“本堂”に隣接する白壁の土蔵は、壁がところどころ剥がれ落ち、歴史の中で静かに朽ちていくような雰囲気があった。
2005年の夏、相棒のあんもん副隊長と訪ねた美郷町を通り、横手市に入った。市町村合併で平鹿町、増田町を吸収し大きくなってしまったが、横手川を挟んだ本町や大町には、今なお秋田らしさを感じる静かなたたずまいが残っていた。
最近では町おこしの一環として、静岡県の富士宮市と並び「焼きそば」を売り出しているそうだが、市内に50~60軒あるという割には、のれんや幟はほとんど見かけなかった。
横手市の中心から国道107号線を南下し、西に5キロほど行くと旧・平鹿町に入る。ここには「浅舞酒造」と「舞鶴酒造」という二軒の清酒醸造元が向かい合わせて建っている。
大きな杉玉が下がった浅舞酒造には、米俵をデザインした「天の戸」という清酒のホーロー看板が掛かっていた。
情報によると、舞鶴酒造にも「浅の舞」という地酒看板があると聞いていたが、広大な建物を一周するも残念ながら見つけることができなかった。
実はこの日、美郷町(旧・六郷町)でも「清酒八千代」を造る八千代酒造や「春霞」の栗林酒造を回ったが、以前あったとされるホーロー看板はすでに無くなっていた。
今日の予定は新潟市までなので、時間的な余裕はあるかと思っていたが、さにあらず。すでにこの時点で正午を回っており、のんびりと探険ができない状況になった。
2005年の探険では、湯沢市から南陽市までをトレースしているが、大石田町や米沢市をパスしている。米沢はどうしてもはずせないので、湯沢市からは断続的に開通している東北中央自動車道を経由して、米沢に向かうことにした。

探検レポート160

伊達政宗が生まれ、上杉家の城下町だった米沢市は、上杉神社や酒造資料館など見どころがたくさんあるというが、そんなものには目もくれず、中央町にあるという、レアなホーロー看板が貼られた看板商店ひとつに絞り、いざ突入。
手がかりは中央町ということだけだが、地図で確認すると、一丁目から五丁目まであって広い。その上、やたらと細道が入り組み、一方通行も多そうだ。
見つけ出すまでに相当な時間がかかることを覚悟して、ナビを見ながらまずは五丁目を南下した。
あっという間に中心部の上杉神社方面に向かう渋滞に捉まりノロノロ運転。ちょうど信号で止まった正面が、ラッキーなことに、目的の看板商店だった。
「フマキラー」と「アヅマ紙袋」、「金鳥」と「キンチョール」が貼られた商店は、昭和30年代の空気がそこだけに沈殿してしまったようで、懐かしいレトロ感が漂っていた。
店内に入ると、ホウキやたわし、昔懐かしい蝿たたきや麦わらぼうしも下がっている。レジが置かれた台の真上には「蘭月」と「毎日香」の2枚の看板が貼られていた。
「表のホーロー看板、撮っていいですか?」
「???」
「写真撮って、いいですかねぇ」
店のおばさんは、“撮って”を“盗って”と勘違いしたのか(笑)、一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに「どんぞ、どんぞ」と答えてくれた。
米沢市からは川西市を経由して、国道113号線を小国町経由で村上市、更に国道7号線に繋いで新潟市までひたすら走った。新潟市が近づくと前が見えないくらいの土砂降り状態となり、ハンドルを握る手も緊張で汗ばむ状態。
その上、運転疲れがどっと出たのか、眼がしょぼしょぼして、まるで背中に鉄板を入れられたように、身体が固まってしまっている。
結局、雨は一度も小降りにならないまま、新潟駅近くのホテルに到着。
出発前には、完全野宿旅をしようと意気込みは立派だったが、後半にきて軟弱を絵に書いたようなパターンになってしまった。 やはり、年には勝てそうもない…(悲)。(つづく)
(2008.7.6記)
※画像上/米沢市の看板商店。日用品を扱う雑貨屋。店の入口や店内に、たわしや蝿たたき、竹ぼうきやハタキなど、懐かしい商品が所狭しと並んでいた。



2008年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17