琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート172 夏の終わりのさいはて探検2 札幌~名寄編

2008.9.4
北海道札幌市~当別町~月形町~浦臼町~奈井江町~北竜町~深川市~旭川市~比布町~名寄市~中士別町


探検レポート172

抜けるような青空の朝を迎えた。
今日の宿は旭川市内なので、比較的時間の余裕もある。国道275号線から旭川に出て、国道40号線を稚内に向かってできるだけ遠くまで北上してみるつもりだ。
さて、どんなお宝が私を迎えてくれるだろうか。 ホーロー看板の老舗サイト、「れとろ看板写真館」を主宰する北海道在住のさとうさんの情報によると、札幌から旭川までの国道12号線沿いは、今ではほとんど壊滅状態らしい。
以前は北海道の代表的な看板をここで撮影できたというが、開発の波は札幌郊外といえども例外ではなくなったようだ。
朝の喧騒が始まった札幌市内を出て江別から当別町に入ると、原野の中を真っ直ぐ伸びる道となった。 「おおっ、ほっかいどーじゃ~!!」…思わずひとり言が飛び出す。
地平線が見える広大な景色を見ながらハンドルを握る。濡れねずみになった昨日の探険と打って変わって、心が弾んでくる。
北海道にしかない「サカクッキー」が貼られた農家の小屋や、これでもか!とお茶の看板が貼られた屋敷が目に飛び込むたびにクルマを路肩に寄せてカメラを向けた。
浦臼町に入ると、地平線は更に広がり、秋を思わせる空の蒼さが益々濃くなった。

探検レポート172

ほんとうに広い!そして大きい! すでに死語となったが、「カニ族」だった学生時代から、“にわか北海道マニア”だった時期があり、おそらくこの道を過去に三度は走っているはずだが、その時の印象はまったく残っていない。
しかし、今日の感動は格別だ。こんな素晴らしいロケーションの中でホーロー探険ができるなんて、しあわせ以外のナニモノでもない。
テンション上がりまくりの“ひとりホーロー探険隊”は、上がったテンションほどお宝が見つけられずに、旭川市に入った。
ここまでは、国道や道道沿い以外にはあまり看板が貼られていないという印象。市街地や集落も丹念に探してみたが、ぷんぷん匂うレトロな商店にもその姿はなかった。
メーカーは広告戦略として、人目につくのはやはり国道や道道沿いと考えたのだろうか。
確かに北海道の市街地は、その中に一歩入ると、人気も無く閑散とした寂しさが漂っている。
媒体としてのホーロー看板をこんな寂しい場所に貼っても、誰も気づかないし、誰も見ない。そんな意味では、本州では当たり前の入り組んだ路地の奥や、迷路のような京都の町の看板探しと違って、北海道のホーロー探険はポイントを絞れるだけに、それほど難しくはないといえそうだが、どうだろう。

探検レポート172

旭川で昼めしを済ませ、郊外の看板を探した。JR石北本線の北日ノ出駅の前にある廃屋には、「太陽桜学生服」の看板が貼りついていた。
人が離れてから何年ぐらい経っているだろうか。放置された自転車や洗剤の空ボトルが夏草に埋もれるように転がっていた。
青い空に爽やかな風が頬をなでていく。駅舎もない、誰もいないコンクリートのホームに座って廃屋を見つめると、心に一瞬の隙間風が吹くような寂しさを感じた。
さて、“青年は荒野を目指す”…いや、“探険隊は、とりあえず北を目指す”(笑)。
比布町から剣淵町、士別町と北上を続ける。名寄市に突入した頃にはすでに15時を回り、運転疲れで目がしょぼしょぼ。
ドラッグストアーで目薬と栄養ドリンクを買い、気合を入れた。士別町郊外の中士別や上士別が気になることもあり、名寄駅で折り返す。
名寄は中心市街地から10分も走ると、すぐに人家もまばらな状態となった。
傾きかけた西日を浴びて、北に伸びる宗谷本線に一輌だけの電車がのんびりと走っていく。
併走しながらカメラを向けるが、片手ではうまく撮れなかった。 そんな危険な遊びをしていると、突然目に飛び込んできたのが、なんと看板屋敷!!ざっと数えて8枚の看板が貼られていた。
この日最高のテンションアップだ。早速カメラを取り出し撮影を始めると、すぐ隣の家から家主と思われる奥さんが…。
てっきり何か文句の一言でも言われると覚悟したが、上品さが漂う温厚な顔を見てひと安心。
「ここを通りかかった人が看板譲って欲しいと、よくおっしゃるんですよ」
奥さんの話では、この屋敷は少しづつ看板が増えて、現在の状態になって40年以上も経っているそうだ。
夏の名残りの西日がまぶしく、残念ながら逆光で撮影条件は良くなかったが、北海道初の看板屋敷を見つけて満足だった。
士別剣淵インターから道央自動車道に乗ると、どっと疲れが出てきた。

探検レポート172

今日一日の走行スコアは500キロ。北海道では本州と違って、地図を見ただけでは距離感もつかみ難い。
狙いの看板が見つからなければ、休憩もせずにひたすら走ってしまうスタイルが、後になって簡単に消せない疲れを呼ぶのだ。
事実、大きな遠征をやると、帰宅しから一週間は疲れが取れない状態になる。肩こりもひどくなるし、血圧も上がる。
そこまでしてホーロー探険にのめり込むのも可笑しいが、それだけの魅力があるといいたい。何事もやってみなけりゃ分からない。
すっかり闇に支配された旭川の町を、ホテルに向かう。背中に鉄板を入れているような疲労感が更に強くなった。
とにかくまずはビールでうがいをしたい…スーパー銭湯に併設されたホテルは、今日一日の探険に疲れた身体を癒してくれるだろうか…(とにかく、まずは一杯)そんな呪文をつぶやきながら、ホテルの入口をくぐった。(つづく)
(2008.10.20記)
※画像上/北海道らしい広大な景色。浦臼町あたり。
※画像中/日本一のひまわりの町、北竜町。国道沿いのロケーションにもひまわり畑が広がる。
※画像中/オヤコわたやサクラ日本学生服の看板が貼られた小屋。深川市
※画像下/すっかり陽が落ちた中士別町で。ほんの少し夕焼けに染まった空に新月が浮かんでいた。
※宿泊/「オスパーコート宮前」。☆☆☆★★ 素泊り3780円 スーパー銭湯が併設されているビジネスホテル。古いマンションのようなつくり。エアコンの効きが悪く、寝苦しい夜を過ごした。駐車料金は無料だし、まぁ、寝るだけだったら許せる範囲。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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