ホーローの旅
レポート174 夏の終わりのさいはて探検4 小樽~長万部編
2008.9.6
北海道札幌市~小樽市~仁木町~蘭越町~長万部町~洞爺湖町~壮瞥町~千歳市
いよいよ最終日。昨夜は会社の同僚のマンションに泊まり、深夜1時まで宴会となった。案の定、二日酔いの重い頭を抱えて、6時過ぎに出発。
まずは札幌自動車道を小樽ICに向かう。まだ早朝だというのに、運河の前には観光バスが連なり、人だかりができていた。
小樽を訪れたのは三度目だが、人がいなければそれなりに情緒もあろうが、シーズンオフとはいえ、これはいたただけない。
本音を言うと、レトロ感溢れる町並みの風景を撮りたかったのだが、運河の写真を一枚だけ撮って先を急ぐことにした。
塩谷から余市までの国道5号線は北の海を見ながらのドライブである。荒れた海を想像していたが、ウミネコが舞う海岸は予想に反して穏やかな波が打ち寄せていた。
余市に入る手前で「モントリオコート」が2枚貼られた小屋を発見。初見の看板である。
どこにでも見かける「菅公学生服」や「菅公シャツ」のツートンカラーと酷似しているが、モントリオシリーズの現存数はかなり少ない。
九州には比較的残っているようだが、これまでの探険で僕が発見したのは、京都府と兵庫県だけだ。シリーズでは「モントリオスーツ」もあるが、これはいまだ未発見である。
オホーツク海に別れを告げ、仁木町を目指す。定番の「サカクッキー」や「オヤコわた」が貼られた屋敷の他、これといったお宝を見つけられないまま、然別の町に入った。
メイン通りは閑散として、まるでゴーストタウンになっている。一軒だけある駅前商店はすでに閉ざされていた。
情報によると、この店には黄金バットの「オロナミンC」があったというが、時すでに遅しか、看板が剥がされた跡が白く残っていた。
誰もいない然別駅のホームに立って、「サッポロビール」のロゴが入った駅名看板を撮影していると、老人用の乳母車を押した腰をかがめたお婆さんが線路を横切っていった。
ほんの一瞬目が合ったが、私にはまったく無関心の様子で、小さな背中がゆっくりと遠ざかっていった。
晴れていれば羊蹄山(1898㍍)やニセコアンヌプリ(1308㍍)が見えるはずだが、天気は下り坂のようだ。どんよりとした厚い雲が、なだらかに広がる山の裾野を覆っている。
蘭越町に入ると標高が上がったのか、冷たい霧雨が降り出した。 そんな中、「東芝テレビ」の真っ赤な看板が貼られた民家の庭先で、小学生くらいの女の子が一生懸命縄跳びをしている姿を見かけたが、さすがにクルマを止めてカメラを向けることはできなかった。
お宝の姿もほとんど見ないばかりか、JR函館本線沿いの目名、黒松内といった市街地に入っても人があまり歩いていない。
小さな集落では尚更である。午後のひと時、昼寝でもしているのだろうか、町そのものがまるで眠ったように静かだった。
霧雨がいよいよ本降りとなった頃、長万部に着いた。“おしゃまんべ”という響きがいい。ずっと以前から、長万部=カニ・ホタテのイメージがあり、カニが苦手(カニアレルギーである)な私は、ホタテ勝負に出ようと、昼飯を食わせる店を探したが、駅前の商店街はどこもシャッターが下りており、食堂にはのれんもかかってなかった。
期待のホタテはどこかに飛んでいき(笑)、ラーメン屋はおろか、コンビニにもない。長万部の町も例に洩れずゴーストタウンだった。
空腹を我慢しながらJR室蘭本線に沿った国道37号線をひた走る。直線道路が延々と続くが、すぐ近くを道央自動車道が通っているからか、国道だというのに対向車にも出会わない。
コンビニの一軒もなく、空腹感が更に増してきた。走ること一時間、豊浦町でようやく見つけたセブンイレブンで昼飯にありつくことができたが、さすがに北海道である。
人が居ないところには食べ物がないという、こんな単純な法則を今更ながらに実感することができた。
さて、4日間に渡ったホーロー探険も大詰めである。サミットが終わったばかりの洞爺湖町を経由して、支笏湖に向かう。
時折出てくる小さな集落には、お茶やわたの看板を見ることができた。 支笏湖畔から原生林を抜けると30分ほどで、4日前にウロウロしていた千歳の町に出た。まだ午後3時だというのに町には街灯が灯り、肌にまとわりつくような霧雨が薄暗さを更に演出していた。
北海道でホーロー看板を探すという当初の目的は概ね満足がいくものとなったが、抜けるような青い空に輝く大地とは対照的に、過疎化が進んでいる寂れた風景も目につき、北海道が抱えている暗い一面を見た思いがする。
とはいえ、さすがに北の大地、食べ物は美味しく、そこに住まう人々は大らかだった。
振り返れば、リフレッシュできた旅に仕上がったと思う。(おわり)
(2008.11.2記)
※画像上/蘭越町で。北海道らしい放牧地が広がる。肉牛だろうか。カメラを向けると近寄ってきた。つぶらな瞳でじっと見つめられてしまった。
※画像中/小樽運河。
※画像中/JR函館本線然別駅。小さな駅舎がある無人駅。
※画像下/長万部町で見つけた孤高の小屋。風雨にさらされて今にも倒壊しそうだ。錆びたホーロー看板と、屋根に生えたペンペン草がいい味を出していた。