琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート175 ローカル線で行く、富山ホーローの旅

2008.9.28
富山県富山市~上市町~滑川市~高岡市~南砺市~砺波市


探検レポート175

鉄ヲタ…いわゆる「鉄道オタク」のこと。鉄道好きといってもそのバリェーションは広い。
車両、駅、キップ、時刻表、写真、模型…と様々。 最近鉄道に関する本を読んでいて気づいたが、自分はひょっとしたら根っからの鉄道好きなのではないかと…。
鉄ヲタのようにマニアックではないが、昔から鉄道で旅することが好きで、振り返ってみると、廃線になったものも含めて、全国のローカル線にはけっこう乗っているのだ。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだが、金沢への出張ついでを利用して、ローカル線で富山県を回るホーローの旅に出ることにした。
夏の名残りを感じる快晴の朝、新幹線で米原に出て、「特急しらさぎ」に乗り換え、11時26分に富山に着いた。
宇奈月温泉行きの富山地鉄の連絡が30分程あるので、まずは腹ごしらえ。富山といえば、駅前にある元祖ブラックラーメンの老舗「大喜」だが、血圧を気にする身には、誘惑に負けそうになってもその方角には足を向けてはならぬ(笑)。
いったんは「大喜」の方角に向いた身体をUターンさせ(笑)、北陸では有名なチェーン店「8番ラーメン」に入る。ここは、野菜ラーメンが旨い。
店を出て改札口に向かう。富山地方鉄道の駅はJR富山駅のすぐ隣にあり、宇奈月行きの乗客がすでに改札口に並んでいた。
30年前に山岳部の合宿で初めて富山を訪れたとき、改札口の前の広場では、一抱えもある米俵のカタチをした黒部西瓜が積まれていたことを思い出した。

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いまだに口に入れる機会に恵まれないが、はたしておしいしのだろうか。あれ以来ずっと気になっている。
上市までの切符(580円)を買い乗車。黄色と緑のツートンカラーが可愛い2両編成だ。
電車は町中の雑踏を抜けるように、ガタゴトと走り出した。左右の民家の洗濯物が風に揺れている景色をのんびりと走る。
常願寺川の鉄橋を越えると、立山連峰や剣岳が待ってましたとばかりにパノラマのように広がった。
行商に行くのだろうか、僕のすぐ前の席に座った日本手ぬぐいを被ったお婆さんが、大きな荷物をくくりつけた背負子にもたれて、こっくり、こっくり居眠りをしている。
(うーん、ローカル線の旅、いいねぇ)…ぼんやり思いながら、風を切っていく車窓を眺めていく。
上市駅に着き、早速ホーロー探険。クルマで何度も訪れている町だが、歩いてお宝を探すのもいい。健康にもいいけど、何より、肌に風を感じるのがいいのだ。
…と思いきや、グングン上がった気温がそんな爽やかな風を提供してくれるわけでなく、あっという間にシャツまで沁みこむ汗まみれ状態になってしまった。
上市駅に戻り、涼みながら次の電車を待った。滑川駅までの途中で車窓から目に付いた看板を探すのが目的だ。
富山地鉄の駅名看板には地酒の「皇國晴」がスポンサーになっているようで、多くの駅の表示板に使われていた。
滑川駅で下り、市内探険。ここも何度か訪ねている町だが、のんびりと歩くにはちょうどいい感じのこじんまりとした町だ。

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建物が邪魔をしているが、昔はJR北陸本線の車窓から見えたのだろうか、製材所の二階部分に付いた「白光綿」の看板を見つけたり、投稿者のKANKANさんに教えていただいたクスリの看板を撮影しながら歩いた。
すでに14時を回っていたが、このまま金沢まで帰るか、それとも高岡で途中下車し、城端線に乗るかしばし考えた。
とりあえず高岡までの切符を買い、JR北陸本線の金沢行きに乗車。
しかし、時刻表も持たずに高岡駅で下りたのは失敗だった。なんと城端線の連絡待ちは1時間もあった。次の金沢行きも40分あり、こうなりゃ、待つのは同じということで、城端線に乗ることに決め、すてに停車中の電車に乗りボックスシートに足を投げ出し居眠り開始。
出発間近かになると、ハンバーガーやポテトの紙袋を抱えた高校生の集団がドヤドヤと乗り込んできた。
「キハ4725」という国鉄時代から走っているエンジ色の古めかしい車両は、いかにも歴史を感じる昭和時代の内装が素敵だ。
暑かったこの日は、高校生達も天井についた扇風機を回して涼んでいた。
車窓から見える風景をぼんやり見ながら電車に揺られる。座ったシートの関係で左側(地図で東側)の景色を見ながら看板を貼った屋敷を探していくが、終点の城端駅に着くまで一つも見つけることができなかった。
いつの間にか高校生達もいなくなり、西日に照らされた終点のホームに降りた乗客はほんの数人だった。

探検レポート175

再び高岡へ折り返す「キハ」に乗り込み、今度は右(西側)の車窓を見ていく。 東野尻駅を出たところで、車窓から「マンテン学生服」の看板が貼られた屋敷がちらりと見えた。
他にも数枚あるようだ。間違いなく看板屋敷だ!しかし、電車は動いている。西日も傾いている、地図を見ると次の砺波駅までの距離が4キロある。
この機会を逃したら今度いつ来れるかも分からない…(うー、どうしよう)…砺波駅までがなんと長かったことか(笑)。
まさに猪突猛進という形容がぴったり。砺波駅で下りて、今来た線路に沿って走る、走る、ひたすら走る。
日没との勝負となった。 はぁはぁ、ぜぇぜぇで汗びっしょりになって目的の看板屋敷の前に立ったのは25分後だった。
「マンテン学生服」や「ジューキミシン」が貼られた堂々たる屋敷をカメラに収めた頃には、すでに薄暗くなっていた。後で考えたのだが、なんでタクシーを使わなかったということ。これがホーロー看板に魅せられた者の、猪突猛進のなせる業か…(笑)。
さて、撮影後、東野尻駅に行って驚いたが、なんと次の高岡行きの電車がすぐには来ない!。
ひとり寂しく無人駅のホームで待つこと50分。 あたりは人の気配もないし、冷たい風が吹いてくるわで、うら寂しいばかり…。
すっかり陽が落ちて、どっぶりと闇に包まれたときに、ゴトゴトとレールをきしませながら「キハ」がやってきた。
地獄に仏とはこのことだった。
(2008.11.9記)
※画像上/JR城端線終点の城端駅ホームで。折り返し停車する「キハ4725」。国鉄末期の1977年から量産された一般気動車。
※画像中/古い町並みが残る滑川市内を歩く。
※画像中/富山地方鉄道中加積駅で。京阪電鉄の3000系特急電車の車体と営団地下鉄の走行装置を利用して稲荷町工場で製造された。10030系はすべて2両編成でワンマン化されている。
※画像下/JR城端線東野尻駅で。すでにどっぷりと闇に包まれたホームにようやく高岡行きの電車がやってきた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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