ホーローの旅
レポート178 黄金色の蕎麦の里へ、福井ワンディ探検
2008.10.18
福井県鯖江市~越前市~南越前町~敦賀市~滋賀県米原市~岐阜県瑞穂市
初夏から秋にかけて、北陸本線を疾走する「特急しらさぎ」の車窓から季節の移ろいを眺めてきた。
毎月の北陸出張で見る福井の風景は、可憐な白い花が敷き詰められた蕎麦畑がいつしか黄金色に染まり、秋真っ盛りの豊穣のときを迎えていた。
黄金色の蕎麦畑に立ち、新そばなどを味わうホーロー探険もいいではないか。 そう思うといてもたってもいられなくなり、いささか衝動的であるが、福井に向けてハンドルを握ることにした。
中央道から名神、北陸道と乗り継ぎ、福井インターで下りた。ホーロー探険は後回しにして、まずは蕎麦である。
福井市内には蕎麦屋の数がやたらと多い。「ソースカツ丼」と並んで、福井の「おろし蕎麦」は庶民的な食べ物なのだ。
迷わず向かったのが、「蕎麦その字」。福井ではちょっとした人気店である。しかし、ちょうど昼時ともあって満員だった。
仕方なく二軒目ののれんをくぐるが、運悪くここも満員。待ってまで食べる気はしない。 さすがに3軒目を探す根気もなくなり、はじめの勢いはどこへやら…蕎麦を諦めてコンビニで昼飯を済ますことにした。
それでも諦めきれずに選んだのがカップ麺の蕎麦。ちょっと情けないが、まぁ、こんなこともある。
さて、ホーロー探険である。この日は、投稿者の春樹さんや、るっちさんの情報を頼りながら効率的に回った。
鯖江から武生、南越前町から敦賀といった具合だ。 今庄宿は何度も訪ねているが、造り酒屋の漆黒の板壁が秋の高い空に溶け込み、往来する人の姿もなく、落ち着いた雰囲気の中に静かに時を刻んでいた。
現金なもので、こうした町並みに身を置くだけで不思議と心が落ち着くのを感じるから、日頃はよほどストレスが溜まっているのだろう。
今庄宿を出て、東に延びる国道を岐阜県との県境へと向かうと、黄金色に輝く蕎麦畑が一面に広がった。
遠くに見える神社の鳥居までが、ずっと蕎麦の海だった。こんな景色が見たかったのだ。
蕎麦畑に包まれるように、小さな集落も見逃さずにお宝を探して回った。
お堂の雁木に貼りついたクスリの看板は、まるで“鳴かない雌の蝉”のように柱と同化してしまったようだ。この看板は念仏を唱えるお年寄りたちを見守ってきたのだろうか。
こうして何十年も貼りついていたことを思うと、ちょっぴりうれしくなった。
都会の喧騒を離れて遊んだ福井の旅は、黄金色の蕎麦畑の風景を思う存分目に焼き付けることができた。
久しぶりに、のんびり過ごせた週末となった。
(2008.12.23記)
※画像上/黄金色に染まる蕎麦畑。鳥居の後ろはいわゆる“鎮守の杜”のようだ。
※画像中/今庄宿。誰もいない街道を歩くと、心なしか癒されるようだ。ストレスが溜まっていたのがよく分かる。