琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート184 小春日和の三重県南部を行く

2009.2.8
三重県多気町~大台町~度会町~南伊勢町~鳥羽市~志摩市~伊勢市


探検レポート184

東名阪道から伊勢道へ乗り継ぎ、勢和多気インターで下りる。
厳冬の2月だというのに、頬をなでる風が暖かい。三重県南部には一足早い春が来ているようだ。
最初に向かったのは、「清酒鉾杉」を造る河武醸造。ナビに案内されるまま小さな川に沿った集落に入り、クルマを置いた。
緩やかな坂道を登っていくと、頑丈な御影石の石垣に乗った酒蔵が見えてきた。
一直線に天を突く漆黒の蔵に照準を当てファインダーを覗いていると、「皆さん、この角度がいいとおっしゃって、撮られてますよ」と声をかけられた。
蔵のご主人だった。 事務所で蔵の歴史やお酒の説明を聞き、初しぼりの純米酒を購入。今週の晩酌の楽しみができた。
また、この蔵には狙いのホーロー看板もあり、蔵の入口の案内板がわりにされていた。
今回の探検は、最近凝っている酒蔵めぐりのリストから探した二軒の蔵を回ることと、伊勢、鳥羽エリアに多い「真珠漬」の看板を見つけることが目的だ。 三
重県には51の酒蔵があるが、多くは四日市、松阪、伊賀地方に集中して、伊勢を中心とした南部には3軒しかない。
まして、ホーロー看板が残っている蔵となると、行ってみなければ分からない。 私にとって酒蔵を訪ねる一番の楽しみは、蔵がもつ雰囲気を体感しながら蔵人の話に耳を傾けることである。
更に気に入ったお酒に出会えれば購入するのもいいし、ホーロー看板があればもっとうれしい。
この日の探検は勘が当たったのか、次に訪ねた元坂酒造にも看板があった。あいにく休みだったが、この蔵のお酒もぜひ試してみたくなった。

探検レポート184

一口に三重県南部といっても、大台町から南下し、海岸線に沿って鳥羽、伊勢までの道中はほんとうに長い
。出てくるものは三重県特有のローカル看板ばかりで、「真珠漬」はまったく見ることがなかった。
記憶の糸を辿ると、看板探しを始めた4年前は、南伊勢町から鳥羽市にかけての国道沿いには「真珠漬」の看板がいたるところにあった印象だが、行けども行けどもまったく見つけることができなかった。
撤去でもされたのだろうか…そんな不安を抱きながら、真珠漬本舗がある二見町に着いた。日曜とあって店舗兼(?)本社工場の扉は閉まっていたが、直接、質問をぶつけるつもりだっただけに残念である。
全国津々浦々にまで貼られた真珠漬看板の謎が気になって、ぜひ確認したかった項目があったのだが、(何度かメールで問い合わせをしたが、返事がなかった)次の宿題になってしまった。
伊勢市に入ると、電柱という電柱に「伊勢名物 赤福」の巻き看板が目につくようになった。
以前は、「国際秘宝館」と「真珠漬」も競い合うように電柱に貼られていたことを記憶している。時代の流れだろうか、町の風物詩が消えていくのは寂しい限りである。
小春日和のこの日、酒蔵や真珠漬以外にも、新たなお宝の出会いを求めて、小さな集落を意識して回ってみた。
県道からはるかに外れた脇道にあった、うっかりすると見落としてしまいそうな小さなくすり屋には、由美かおるの「ごきぶりホイホイ」のシールが入口のガラス戸に貼られていた。
今から30年以上も前のシールがまるで昨日貼らればかりのように輝いていた。

探検レポート184

カメラを向けていると、店内から初老のご夫婦が出てきて、快く許可してくれた。 更に「昔は看板もたくさんあったんやけど…」という言葉が…。
何でも、5年ほど前に唐突に「古い看板を譲ってほしい」という人が訪ねてきて一端は断ったのだが、あんまりしつこく通ってくるので、何枚か譲ってしまったという。 オロナイン軟膏や「ワダカルシウム」のくすりの看板もあったそうだ。
松阪や伊勢方面でホーロー看板を集めて業者に流しているという男の存在を聞いたことがあったが、ひょっとしたらこの店もターゲットになっていたかもしれない。
三重県ではメジャーなホーロー看板はほとんど残っていない。金にならない(売買の対象にならない)ローカル看板ばかりがやたら目につく状況になっているが、飛躍して考えてみると、ホーロー狩りや業者横流し男の暗躍が、そんなホーロー事情を作り出してしまったと言えなくもない。
そんな中で、お宝がひっそりと残る酒蔵は、今もこの先も、ホーロー看板たちの最後の聖地といえるのかもしれない。
(2009.2.28記)
※画像上/伊勢市宇治山田駅付近の町並み。重厚な商家が軒を並べる。
※画像中/古い家屋が多く残っている鳥羽市中心部の町並み。



2009年探検レポートへ

Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


琺瑯看板探検隊が行く
SINCE 2005.3.17