ホーローの旅
レポート193 新緑の只見へ、GW放浪旅3 只見~会津編
2009.5.4
福島県金山町~只見町~南会津町~下郷町~美里町~坂下町~喜多方市~会津若松市
まだ暗いうちから行動を開始する。
パンと牛乳だけの簡単な朝食を摂り、すばやくテントを畳む。周りは寝静まっているのか、微かな寝息が聞こえてくるテントもあった。
沼沢湖を半周するようにクルマを走らせると、すぐに小さな集落が現れた。人の住んでいる気配がない廃屋も多くあり、板戸が釘で閉じられ、窓がふさがれている。
山また山に囲まれた過疎を象徴するようなロケーションである。この土地に住むには相当な覚悟がいるだろう。それ故、家を捨てて土地を離れる人々を責めることはできない。
ところどころ雪の塊が残っている集落の入口に、植えられたサクラが見ごろを迎えていた。
濃いピンクや薄紅色が、遅い春を待ちかねていたかのように一斉に花を咲かせている。
らせん状に続く急な坂道を下っていくと、金山の町に出た。オロナミンCやセキネの自転車の看板が、僕が来るのを待っていたかのように迎えてくれた。
竹ぼうきで一生懸命歩道を掃いている女性に目礼し、この旅、四度目に出遭った崑ちゃんを撮った。
クルマはいよいよ只見に向かって進む。只見川と競い合うように走るJR只見線に沿って、国道252号線が延びる。
芽吹いたばかりのブナの梢や針葉樹が茂る森を縫うように走っていく。 浅草岳や会津朝日岳に囲まれた只見の集落が現れては消えていく。
小さな集落といえども見逃さずに立ち寄っていくが、お宝の姿をほとんど見ることがなく、只見駅に着いた。
只見の町はちょっとした規模だが、豪雪地帯の町らしく道路幅が広く、その分、埃っぽく殺風景な印象だ。
碁盤の目のように整然と仕切られた道を何度も行き来するが、目当てのホーロー看板を見つけることもなく、むなしく時間を消費することになった。
ルートを国道289号線に取り、南会津町から下郷町に向かう。
投稿者のKANKANさんやウシ君さんに教えていただいたポイントに寄りながらホーロー探検を続けるが、途中で、大内宿に向かう渋滞に巻き込まれてしまい、時間のロスが気になってきた。
美里町に着いたときには正午を回っていた。
美里や喜多方、会津若松は今回の探検の大票田である。このエリアにはできるだけ時間を割きたい。
喜多方ラーメンの誘惑をぐっとこらえ、コンビニおにぎりを頬張りながら探検を進めたこともあって、レアなお宝が貼られた看板商店をいくつか見つけることができた。
なかでも「キングトリスのガム」が貼られた商店は圧巻だった。虫取りに夢中だった少年の頃を思い出してしまったからだ。
補虫網の先にも届かない榎の枝にとまっているタマムシを、吹き出る汗をぬぐおうともせず、悔しい思いで見つめていた。
虹色に輝くタマムシはなんとしてでも手に入れたい虫だった。遠い夏の、そんな思い出が手の届かない柱に貼られた看板にダブって映った。
こうして探検三日目が暮れようとしていた。
少しばかし暗くなりかけた頃見つけた「ぼたん綿」の黄色い看板が、「わたしゃ、いつまでも残っていないからね」と、きつい口調で意地悪ばあさんに言われたように、今にも倒れそうな廃屋からオーラを発していた。(つづく)
(2009.8.9記)
※画像上/沼沢湖近くの集落で。色とりどりの桜や梅がいっぺんに咲き、遅い春を祝っていた。
※画像中/会津鉄道の会津田島駅付近を煙を吐いてのんびりと走るディーゼルカー。
※画像下/只見の風景。只見川の堤防の木々もそろそろ新緑の芽吹きが始まった。遠く見える雪を被った山は浅草岳(1585㍍)。只見の春はようやく始まったばかりである。
※宿泊/「ビジネスホテルゴールド」 新幹線新白河駅徒歩3分。素泊り3490円。この価格で文句は言えない。コストパフォーマンスは申し分ないが、周りに飲食店やコンビがないのがマイナス。☆☆☆★★