ホーローの旅
レポート200 2009年真夏の長期ロード1 徳島編
2009.8.1
兵庫県南あわじ市~徳島県鳴門市~徳島市~小松島市~美波町~那賀町
梅雨が明けぬまま、8月になった。
淡路の海が、墨絵のように重く垂れ込めた雲と、海面との境目がはっきりしないまま車窓を流れていく。
自宅を出て数時間しか経っていないのに、朝を迎えたばかりの淡路島を南に向かって走っている自分に小さな感動を覚えつつ、まだ始まったばかりの旅に気持ちを引き締める。
四国から九州を目指す7日間の長期ロードが、体力が落ち続けている我が身にどんな影響をもたらすのか分からない。
真夏の探検、3000キロのロード、予期せぬアクシデント…考えれば切りがないが、いずれにしても今は旅を楽しむことだ。
「ずい分、昔からあるさかい…」 オリバーとんかつソースの看板が貼られた商店での、店主のお婆ちゃんの第一声。
まだ朝の7時前だというのに、町外れの小さな食料品店はすでに店を開けていた。
ソースの看板は戦後しばらくして貼られたという。お婆ちゃんは毎日この看板を眺めて店を守ってきたのだろう。昔は“看板娘”(?)だったお婆ちゃんも、看板と共に余生を送っていくのだろうか。
淡路島では、期待していた福良の町を含めて、これといった収穫がないまま2軒の酒蔵を撮影し、鳴門大橋を渡った。
急ぐ旅ではないが、「一日一県」を目安に効率よく探検することが今回のプランだ。それをベースに酒蔵めぐりを組み合わせ、投稿者の皆さんからいただいた情報をコースに練りこんだ。
鳴門市から徳島市に向かう国道には夏の日差しが燦々と降り注いでいた。
すっかり忘れていたが、四国ではすでに梅雨が明けていたのだ。不思議なもので、淡路島を含む近畿地方は梅雨空だというのに、海を渡れば、そこは真夏の大地だ。
投稿者のろんださんから教えていただいた看板商店は、まさに“白い夏”と形容するのがぴったりで、まぶしいほどの夏の陽光に包まれていた。
地酒の看板を中心に11枚が整然と貼られている様子は、これまでいくつもの商店を見てきた中でも感動的なボリュームだった。
すでに廃業しているようだが、戸口が開いていたので声をかけようと思ったが、人の気配が感じられないのでパスをして、数枚の写真を撮っだけで店を離れた。
後で分かったことだが、店内にも10数枚の看板があったということだ。恐るべし、徳島の看板商店!
さて、「一日一県」の探検となると、できるだけ広範囲に回りたい。
四国山地が東西を横断する徳島県は、南は太平洋にぶつかる山と、瀬戸内海に入り組む海がほどよく配置された県だ。2006年に高知県から海岸沿いを走って気づいたが、山村や漁村にはまだまだレアなお宝が眠っている気配が濃厚だった。
美波町や那賀町では、期待通りにそんなお宝を見つけることができた。
雑木林と段々畑に囲まれた小さな集落で見つけた水原弘のハイアースは、しかめっ面の水原の顔にぺったりと紙が張られて益々滑稽な雰囲気を演出していた。
一世を風靡した無頼漢の歌手・水原弘が亡くなって、すでに26年である。
夕刻、徳島市内に戻り小さなビジネスホテルに投宿した。まさに場末の宿、という雰囲気。一方通行路のごちゃごちゃした一角に、目立たず控えめに建っていた。
今回は真夏の探検、ひとり旅、体力低下…いろんな理由をかき集めて(笑)、全てホテル泊りとした。
最も一年かけて貯めた、缶詰一杯で100円玉なら8万円溜まるという貯金箱を崩しての資金だから、リッチな旅であろうはずもなく、いつものように爪に火を灯すようにして実現にこぎつけた小市民的探検なのだ。
さてさて、1泊3200円の激安宿に荷物を置いて、すっかり暗くなった徳島の町に出た。
ようやく見つけて食べた徳島ラーメンは、醤油ととんこつが混ざった濃厚なスープが空腹の身にジワジワと沁み込むようだった。(つづく)
(2009.10.11記)
※画像上/四国山地に近い山間の集落。目に鮮やかな田園風景があった。徳島県那賀町。
※画像中/藍住町の酒蔵・木内商店。
※宿泊/「ビジネスホテル清風荘」 素泊り3200円。トイレ・バス共同。煙草の臭いと冷蔵庫がないのが気になるが、この価格では文句は言えない。徳島駅近くの繁華街にも近い。☆☆★★★