ホーローの旅
レポート207 ごちゃまぜミニ探検12 2009年後半編
2009.4.26-12.13
石川県津幡町、中能登町、愛知県名古屋市、常滑市、弥富市、愛西市、瀬戸市、飛島村、滋賀県多賀町、彦根市、長浜市、浅井町、山梨県忍野村、岐阜県本巣市、揖斐川町、飛騨市、高山市、下呂市、郡上市、各務原市、山県市、海津市
ごちゃまぜミニ探検も12回目となったが、元々この企画は、出張や旅行ついでに見つけた看板を、ある程度溜め込んだところでまとめたレポートだ。
しかし、今年に入って様子が変わってきた。レポートを書く材料=主役のホーロー看板に出遭うことが少なくなってきたのだ。
以前のように、出張ついでにお宝を見つけることがなくなったし、気合を入れて早朝から暮れるまで一日中ホーロー探検をしても、収穫は1~2枚、多くても5~6枚という状況になってきた。
再訪再撮影の看板も多い。結局は主役のお宝なしで、探検レポートをシコシコ書くことはままならない…そんな状況なのだ。
こうした実態は、これからもっと顕著になってくるのは間違いないだろう。
では、どうするか?少ない情報を駆使して、お宝のある場所を東奔西走、縦横無尽でピンポイントで訪ねるのか?それとも偶然の発見を期待して、やたらめったら走り回るか。
あれこれ考えてみても、私のホーロー探検は、更に厳しい未来になりそうだ。
さて、今年もあと一週間ほどで終わろうとしているが、振り返ってみると、収穫がなかった探検を含めて45日間を遊ばしてもらった。
1月~4月までは「ごちゃまぜミニ探検11 冬から春の収穫」でレポートしたのでそれを参照していただきたいが、以下に4月以降の探検を列記してみる。
▼4~12月までの探検一覧
・4/26 能登半島※
・4/28 愛知県名古屋市北部※
・5/2-6 GW琺瑯旅
・5/16 秋田県仙北市~大仙市~横手市~大仙市
・5/23 滋賀県東近江市~近江八幡市~彦根市
・5/29-30 富山県上市町~高岡市~富山市~小矢部市
・6/14 岐阜県郡上市八幡町~白鳥町~下呂市金山町※
・6/27 石川県加賀市~福井県あわら市~福井市~勝山市
・6/28 岐阜県各務原市※
・7/4-5 岐阜県飛騨市古川町~高山市~下呂市※
・7/26 静岡県富士宮市~神奈川県箱根~山梨県甲府市※
・8/1-7 四国~九州~中国
・8/30 愛知県瀬戸市※
・9/6 滋賀県日野町~甲賀町~水口市
・9/20 愛知県設楽町~静岡県水窪町
・10/10 奈良県橿原市~明日香村
・10/11 岐阜県山県市~本巣市※
・10/18 滋賀県多賀町~彦根市~長浜市~米原市※
・10/25 能登半島
・10/31-11/1 和歌山県~大阪府
・11/7 岐阜県揖斐川町※
・11/22 岐阜県高山市※
・11/28 愛知県名古屋市~常滑市※
・12/13 愛知県弥富市~愛西市~飛島村~岐阜県海津市※
※印がついた探検で見つけた看板を今回のレポートに掲載した。
中でも、7月26日の神奈川県を回る探検は完全に空振りだった。神奈川県内で1枚でもホーロー看板を見つけていれば、これまで空白だった神奈川の地図を埋めることができたのに残念である。
さて、今回のレポートに掲載した看板で、印象深かったものについて触れてみたい。
まずは郡上八幡で見つけた「メンスター」というクスリの看板。
このときの探検は、折りたたみ自転車を駆って、八幡の町を路地から路地へ潜入した企てだった。
吉田川で鮎釣りをする風景を見たり、そばを食べたり、急な石畳の路地に無理やりペダルを漕いでもみた…頬に当る初夏の風が、何ともいえず爽やかで心地ちよかった。
「メンスター」はそんな八幡の町の、緩やかにカーブした町並みの中に埋もれるようにあった。
古い民家の二階の板壁に貼られた看板を、角度を違えてファインダーから覗くと、午後の陽射しがホーローのエナメル質に反射して美しかった。
何度もこの町を訪ねて探してきたのに、これまで私の目をかいくぐってきたお宝である。
それと、名古屋の都心のど真ん中で見つけた「うまい酒瑞華」もなかなかだった。
何しろ、看板が貼ってある酒屋は、そこだけが昭和30年代の世界なのだから。 建物も、匂いも、全てが40数年前の空気そのままである。
曇りガラスの引き戸をガラガラと引くと、薄暗い店内にお酒の匂いが立ち込めている。
近所のオヤジや労働者が赤い顔をしてにぎやかに飲んでいる…幼少の頃、死んだ祖父さんに手を引かれて、日が沈む頃いつも連れて行ってもらった酒屋の思い出…そんな店が、そこにあった。
もちろん、都心で見つけた看板酒屋に、酒の匂いが立ち込めているわけでもなく、酔っ払いの大声が響いているわけでもない。
「瑞華」は昭和の終わり頃に廃業した蔵の銘柄である。
例えが悪いが、明治維新が終わって何十年経ってもチョンマゲ姿の人々がいたと伝えられているように、今では飲むことができない酒の看板がいつまでも貼られている。
そんな、世間から忘れ去られたような酒屋が、往来の喧騒をよそに、何事もなかったかのように、頑なに、ひっそりと静かに老朽の時を刻んでいる。
…こんな光景、出遭っただけでもホーロー探検冥利に尽きるというものだ。
(2009.12.23記)
※画像上/岐阜県下呂市金山町。美濃から飛騨へ行く要所として栄えた山間の町。軒先がくっつくような狭い町並みに生活感溢れる人々の営みがあった。
※画像中/郡上八幡の夏の風物詩、吉田川の鮎釣り風景。
※画像中/昼下がりの岐阜県飛騨市古川町。
※画像下/一面のコスモス畑。滋賀県浅井町の秋。