琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート211 能登半島に国宝級の看板商店を訪ねて

2009.10.25
石川県七尾市~穴水町~白山市


探検レポート211

能登半島にある看板商店の存在を知ったのは、石川の看板マニア、S31さんからの情報だった。
掲示板に投稿されたカゴメケチャップの姿看板やブルドックソース、ミツカン酢がずらりと並ぶ画像を見たら、“ホーローの虫”が全身を駆けめぐり、いてもたってもいられなくなった。
“類は友を呼ぶ”というのか、同じく“ホーローの虫”に毒されている地元石川のマニア・クエストⅢさんと連れ立って、遅咲きの山桜が麓を彩る能登に向かったもの、どうしても商店を見つけることができず、最初の探検行は空振りとなった。
その後、S31さんとのメールのやり取りのなかで、看板商店の正確な所在地が判明したが、チャンスはなかなか巡ってこず、私がお宝たちの前に立ったのは、とっぷりと深まった秋が、霜の便りを能登に知らせる時期となってしまった。
さて、この看板商店、おそらく日本を代表する国宝級の物件ではないかと思う。 カゴメの姿看板も珍しいが、戦前モノの明治メリーミルクや大型のブルドックソースなど他では見たこともないレアなお宝が並んでいる。
その数、全部で35枚。 店番をしていたお婆さん(店主)に、撮影許可を貰う際に話をすることができた。
それによると、店は終戦直後に先代が創業したという。

探検レポート211

食料品店ということもあり、看板は商品を納品することを条件に、地元の食品問屋がメーカーの販促物として置いていったという。
その後、看板はどんどん増え続け、倉庫の壁にずらりと並ぶ現在の姿になったそうだ。
さて、その看板たち。これだけ貼ってあったら道行く人が気づかぬはずがない。
「看板を譲って欲しいという人がいるんでは?」という私の質問に対して、
「そりゃあ、ぎょうさんおったけど、譲らんもんな」
…という返事。
思わず拍手喝采だ! 私が看板を撮影している間中、お婆さんは私の動作を心配そうに(?)に見守っていた。

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看板を盗られるとでも思ったのだろうか?岐阜県からわざわざ来たということに驚きながらも、看板を譲って欲しいという言葉が出てくるとでも思ったようだ。
少しばかしそれを察した私は、すかさず先手。
「看板、譲っちゃダメですよ」
「いつまでも残してくださいね」…という言葉をかけ、商店を後にした。
金沢駅で借りたレンタカーでせわしく回った一日だったが、“国宝級”の看板商店は私を見捨てずに待っていてくれた。
また、どんよりと曇った天気にも関わらず、山間部の小さな集落で見つけた「スピード編機」や、微かに潮の香りが漂う、海べりの漁村集落で見つけた「忠臣学生服」は、まるでそこにあるのが当然のように建物と同化し、時折差し込む薄日に小さく反射していた。
(2010.1.9記)
※画像上/七尾市中島町の町並み。「清酒朱鷺の里」を造る見砂酒造(旧・山本酒造店)もみの通りに軒を並べている。
※画像中/七尾市の布施酒造店。
※画像下/金鳥ペアの連貼り屋敷。6枚貼りは珍しい。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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