ホーローの旅
レポート226 根尾へ、梅雨明けのホーロー輪旅
2010.7.17
岐阜県大野町~神戸町~池田町~揖斐川町~本巣市
早朝から真っ青に晴れ上がった日、不意に思い立って、相棒(ミヤタ・ルマン・ランドナー)と出かけることにした。
コースは岐阜県本巣市にある道の駅「織部の里もとす」を起点に、大野町から揖斐川町、旧根尾村(本巣市)をぐるっと回る一周55キロである。
本格的なサイクリングは28年ぶりだ。しかも相棒はメンテナンスを終えたばかりの28年前の自転車。
ツーリング仕様なので頑丈だとは思うが、体重も増えて明らかにおっさん体型になった私を安全に運んでくれるだろうか?
それに、この天気。朝から強烈な日差しが照りつけている。おそらく今日、長かった梅雨が明けるだろう。
目的はサイクリングでの看板探し…とあえてしておくが、本音を言うと、鈍った身体を鍛え直すこと…なのだ。さて、どんな輪旅になるやら。
道の駅で相棒を組立て、まずは根尾川に沿った道を走り出す。
目指すは大野町黒野。古い町並みが残るエリアである。
交通量が多い国道や県道を避けて、できるだけ集落の中に続く生活道を選んでいく。 黒野の交差点で、杉山酒造の銘柄「美の自慢」の大きな木製看板を掲げた酒屋を見つけた。
「電話66番」のロゴが彫刻され、なんともレトロだ。すでに廃業した蔵だけに、この看板、いつまで残るだろうか。
桑畑が連なる県道78号線の旧道をひたすら南下すると、黒壁の土蔵や裸電球の外灯が下がった町並みが現れた。
その瞬間、「おっと、ゲット!!」と思わず叫ぶ。 「カゼワン/スターパス」の看板がトタン板の壁に貼られていた。
青森県で見つけて以来の遭遇なんで、思わず顔がほころんでしまう。
大げさだが、青森と岐阜が直線でつながったような気がした。
田園風景が続くようになると、更に陽射しが強くなった。
ペットボトルの水があっという間になくなってしまう。汗が滴り落ち、Tシャツはびしょ濡れだ。
神戸の町に入り、重要文化財の三重塔がある日吉神社で休むことにした。境内にある清めの水を頭からぶっかけると、湯気が出そうなほど気持ちが良い。
自転車にもたれてそのまま座り込めば、頭上からはセミ時雨、そして、楠木の巨木がつくった日陰…うーん、極楽、極楽。
束の間の休憩が老体を少しだけ復活させたようだ。古い町並みが随所に残る大野の町をゆっくりとペダルを漕いで行く。
「浅井万金膏」というレトロな看板や「岐阜縣計量器販売店」の看板をクスリ屋の軒下に見つけたりした。
この場所は以前にもクルマでホーロー探検をしているのだが、その時はまったく気づかなかった。やはり徒歩や自転車での目線とは違うようだ。
健康のこともあるし、クルマで探す探検スタイルをそろそろ見直す時期にきているかもしれない。
さて、相棒との旅は行程の半分を過ぎ、揖斐川町を走っている。ここまで飲んだペットボトルは3本。
出発してから3時間が経過し、午後を回った一点の雲もない空は、否応なしに紫外線を突き刺してくる。
はぁはぁ、ぜぇぜぇ…道は平坦だが、さすがにペダルを漕ぐ脚に力が入らなくなってきた。こんな体たらくで峠越えが待っている根尾まで行けるんかいな?
炎天下→熱中症→意識朦朧→倒れる→救急車…ネガディブな連想が頭をよぎった。
51歳の無謀(?)なチャレンジはここらで潮時かもしれない。 そうと決まれば出発地点に戻るだけということで、どこまでも続く田園風景の中、あとはひたすら走るだけだ。
コンビニや自販機があれば立ち止まり、汗を拭き吹き、水をがぶがぶ飲みながらやっとのことでクルマを置いた道の駅に戻った。
根尾まで行けなかったのは残念だったが、炎天下の中、これだけ走れたのは、“良し”としようじゃないか…勝手に満足する、おっさんの5時間40キロの輪旅だった。
※追記/岐阜市の気温が37度を超えたこの日、東海地方は梅雨明けをした。
(2010.9.20記)
※画像上/神戸町の町並み。古い商家や家屋が連なる。相棒の自転車と撮影。1983年製のこいつもレトロだ。
※画像中/同上
※画像下/杉山酒造の地酒「美の自慢」の看板が掲げられた酒屋。杉山酒造は平成17年頃廃業。