ホーローの旅
レポート228 真夏の熊本ホーロー紀行 後編
2010.8.1
熊本県氷川町~八代市~宇土市~宇城市~美里町~山都町~御船町~熊本市
雷鳴がとどろき、スコールのような生暖かい雨が落ちる朝、熊本探検の2日目が始まった。
氷川町からJR鹿児島本線の有佐駅を横切り鏡町に入ると、レトロな雰囲気の商店街と、古い町並みが続いていた。
“匂う”一角だが、期待に反して、欠落した「川村自転車」の看板しか見つけることができなかった。
そのまま県道14号線を北上し、JR三角線が延びる緑川駅を目指す。
情報によれば、駅付近に看板屋敷があるということだが、のどかな田園風景が展開するばかりですでに消滅したのか、いくら探しても見つからなかった。
その代わりではあるが、国道57号線沿いの民家で「フンドーダイ醤油」と「アリナミンA」のツーショットや、カクイわたのねんねこ看板を見つけることができた。
時間があれば天草方面に行きたいところだが、16時までに福岡空港に着かなければならない。
しばらく悩んだが、美里町から山都町まで足を延ばし、折り返してくることに決めた。
こちらも初めてのコースなので、天草は次回の楽しみにとっておくことにした。
美里町を探検する前に、2時間にわたって甲佐町を探すが、まったく見つからない。
当サイトとリンクしている、おおまぐろさんの「ホーローの旅」にはこのエリアでの収穫が多く掲載されているが、僕の探し方が甘いのだろうか。
しかし、美里町に入ると、俄然にぎやかになってきた。中でも農家の納屋の軒に貼られていた「フェザー剃刀」はなかなかのレアモノ。
3年前の探検で、この看板があるという山鹿町の看板屋敷を訪ねたことはいいが、すでに屋敷そのものが消失していた場面に遭遇して、愕然となってしまったという経緯があった。
それ以来ずっと気になっていた。
因縁の看板であるが、長く手がつけられなかった宿題をようやくやり遂げた気がしないでもない。そんな感じだ。
午後を回ると、不安定な天気はどこかにいってしまったようで、強烈な夏の日差しが戻ってきた。
山都町では、看板探しを中断しても見てみたい物件があった。「通潤橋」という江戸時代にできた石の橋である。
クルマを置いて登山道を下っていくと、五老ヶ滝川にかかる巨大な橋が見えてきた。正直言って言葉も出なかった。
江戸時代にこんな山奥で、しかも石を積んで造られたことが驚きである。
橋の下から、上から、様々な角度で写真を撮った。
夏休みとあって観光客も多かったが、まぁ、これを見ただけでも熊本に来た価値はあっただろう。
山都町からは先は、レンタカーを返却する熊本駅までをどうルートを創るかということだが、結局、変な寄り道は避けて、国道445号線を三船町経由でのんびりと抜けることにした。
あわよくば看板商店など見つかれば…という期待もあったが、“国道沿いにはお宝がない”というセオリー通り、陽気酒造の清酒や焼酎の看板を何枚か見つけた以外、これといった収穫もなく、結局、看板探しを切り上げて三船町の恐竜博物館を見学してしまった。
少年の頃からこういうのが大好きだったんで、もちろん、三船町で見つかった恐竜の「ミフネリュウ」の化石のことは以前から知っていた。
展示してある歯の化石の実物を見たとき、看板のことはもはやそっちのけで、心は遥か太古の世界に飛んでいくのであった。
青い空と入道雲、蝉時雨が降りそそぐ熊本の旅は、こうして終わった。
(201010.17記)
※画像上/五老ヶ滝川に架かる通潤橋。嘉永7年(1854年)に架けられた石組みによる用水の水路橋である。 重要文化財。
※画像中/古い町並みが残る美里町を歩く。※写真中/美里町から緑川ダムも眼下に見ながら山都町方面に急ぐ。内大臣と呼ばれる集落の辺りには、棚田の絶景が広がる。
※宿泊/「八代宮原亀の井イン」☆☆☆☆★ 素泊まり3800円。朝食付き。九州のビジネスホテルは低料金で朝食付きのところがうれしいです。