琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート229 ごちゃまぜミニ探検13 2010年総括

2010.1.4-9.26
岐阜県中津川市~恵那市、岐阜県岐阜市~北方町~本巣市、愛知県名古屋市、岡崎市~吉良町~幡豆町、大阪府大阪市、岐阜県郡上市、愛知県西尾市~設楽町、名古屋市、岐阜県多治見市、静岡県御前崎市~島田市


探検レポート229

11月の声をきくと、巷では年末が近づいた雰囲気が高まってくる。
夏の探検レポートが書けてない状況の中で、2010年の総括をするには若干心苦しいが、中途半端に溜まった成果(?)を何とかしなくちゃ、という気になってきた。
ご存知のように、「ごちゃまぜミニ探検」はレポートとしてまとめるまでいかないレベルの、ボリュームのない探検成果を寄せ集めて報告している。ここ1~2年はこうした探検が増えてきた。
一日回っても、目指すお宝はよくて数枚の成果しかない。再訪再撮影も多くなった。
1泊2日の探検で気合を入れた9月の静岡探検も、見つけた看板が2枚という撃沈で終わってしまった。
今後の探検の行く末を暗示するような状況でもあるが、これまでのように広範囲にやみくもに走り回るだけでなく、情報を駆使して、ピンポイントで探す方法もスタイルとして積極的に取り入れていかなければならないようだ。
しかし、季節のうつろいを全身に感じながら、山の中の小さな集落を丹念に回って地図を塗りつぶす作業は、なんといっても楽しい。
今更であるが、思わぬ初見のお宝を見つけたときの感動と充実感が、ホーロー探検の醍醐味でもあるのだ。 今年は、酒蔵めぐりとホーロー探検のどちらかを主として週末を過ごしてきたが、看板が見つからなくても、酒蔵の取材ができたことで“よし”としていた。
夏からは、加えて「棚田めぐり」も始めた。これによって、酒蔵が廃業して跡形もなくなっていても、ホーロー看板が1枚も見つからなくても、爽やかな棚田の風景を見ることによって、ストレスが軽減されることになった。

探検レポート229

今年のミニ探検を列記してみる。
・1/4 岐阜県中津川市~恵那市
・1/10 岐阜県岐阜市~北方町~本巣市
・3/21 愛知県名古屋市
・4/17 愛知県豊川市 サミゾチカラさんのお宅訪問
・5/9 愛知県岡崎市
・5/30 愛知県吉良町~幡豆町
・7/18-19 大阪府大阪市
・8/21 岐阜県郡上市
・8/28 愛知県西尾市~新城市~設楽町
・9/17 愛知県名古屋市
・9/19 岐阜県多治見市
・9/25-26 静岡県掛川市~御前崎市~島田市
この中で印象に残った探検が、9/17の名古屋。6月から始めた路上観察系サイト「みちくさ学会」の取材で、中村区の「寿湯」という銭湯を訪ねた際、帰路の路地で偶然、「ミスダリヤポマード」の看板を見つけた。
戦災で残ったという街の、以前は雑貨屋を営んでいたという古い民家の玄関脇に真っ赤な看板が貼られていたが、看板の前では3人のお婆ちゃんたちが井戸端会議の真っ最中。 理由を説明して撮影をさせてもらったことはいいが、その後が大変だった。
「あんた、変わったことしとりゃぁすなぁ」 (変わっとって悪かったわい!) 「そんなもんやっとって、一文にもなりゃせんだろう」
 (余計なお世話だ!)
「マツダランプの看板もござったけど、なくなってもぉた、あんた知らんかのぅ」
 (そんなもの知らんわい!) …とまぁ、こんな感じで、お婆ちゃん達の暇つぶしに捉まってしまった。
そのうち、戦争の話は出てくるし、死んだ爺さんの話になるわで、結局一枚の看板を撮っただけで、一時間も付き合わされることになった。
しかし、気風の良い名古屋のお婆ちゃんたちである。別れ際にティッシユでくるんだ、アンコがぎっしり詰った最中(もなか)をくれた。
帰りの地下鉄の中で最中を食いつつ、世の中も捨てたもんじゃないなぁ…としみじみ思うのであった。

探検レポート229

もうひとつ触れておきたいことは、ホーロー看板コレクターとして有名な、サミゾチカラさんのお宅を訪ねたこと。
場所は愛知県豊川市の住宅街。 「金鳥」や「カクイわた」「官公学生服」などの看板が壁一面に貼られ、「東芝テレビ」の巨大トーテムポールが立ち並び、そのお宅は、外観からして異彩を放っていた。
ホーロー看板資料館として改装されたという家の中を案内されて、その圧倒的なスケールに唖然…。言葉も出なかった。
噂には聞いていたが、天井から壁にいたるまで隙間もないほど貼られた看板に、ただびっくりだ。その数6000枚。
初めはサミゾさんの看板ウンチクに耳を傾けるだけだったが、しかし、そこは琺瑯看板探険隊の自分だ。 応戦一方から攻めに転じてみた(笑)。
場所を母屋にあるサミゾさん自慢の“ホーローの成る木”がある部屋に変えて、仁丹や中将湯、花王やグリコの看板のウンチク合戦である。
私はコレクターではなく、自然に貼られた看板の写真を撮っているだけのもの好きだが、一枚の看板にまつわるエピソードを熱く語るサミゾさんから、角度は違うが、同類としての“マニア魂”と、心の琴線に触れる“男の執念”を見た思いがした。
機会があったら、ぜひ再訪したいと思う。
(2010.10.31記)
※画像上/この日のホーロー探検もさっぱりだった。黄昏れていく時間、JR安城駅のホームでしばしたたずむ。
※画像中/愛知県新城市の四谷千枚田。「日本の棚田100選」として有名。江戸時代に開拓された棚田である。稲刈りが始まる直前の風景である。
※画像下/ホーロー看板コレクターとして有名なサミゾチカラさんと。タバコの看板がびっしりと貼られた玄関でのツーショット。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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