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ホーローの旅

レポート230 2010年夏、瀬戸内の旅1 倉敷へ

2010.8.7
三重県伊賀市~京都府宇治田原町~兵庫県尼崎市~高砂市~岡山県備前市~和気町~倉敷市


探検レポート230

いよいよ夏のホーローひとり旅が始まった。
毎年、このイベントは“待ちに待った”という感じでスタートする。地図を開き、遥か遠くを思いめぐらし、ひたすら計画を練ってきたのだ。
クルマの荷台には折りたたみ自転車を積んで準備万端だが、前夜発を避けて、早朝移動にしたのがやはり甘かったようだ。
まだ朝の6時だというのに、名神高速を一宮インターまで走ったところで、早くも渋滞に捉まってしまった。
電光パネルの情報は京都までの断続的な渋滞を流している。その先の大阪も同様な渋滞が起きているようだ。
さすがにお盆が近い週末である。1000円高速の影響は思った以上に大きい。
このままでは今日の最終目的地の倉敷までどれだけかかるのか検討もつかないので、あっさりと下道を走ることに決めて、京滋バイパスに入ったところで高速を諦めることにした。
とりあえずは大阪市内を目指す。といっても、下道では果てしなく遠い。 なかばヤケクソだ。
地図も見ずにナビを兵庫県尼崎市にセットして、適当に走り出した。 できるだけ国道は避けて、県道や田舎道を走っていくと、これまでの探検でもまったく縁がなかったエリアに出たりして、これが返って新鮮である。

探検レポート230

三重県伊賀市に入ったところで道に迷った。といっても、ナビがあるから平気なのだが、何度も同じ道をぐるぐると回ってるのはちょっと恥ずかしい。
しかし、偶然入り込んだ集落で、「キリン鎌」の看板を見つけたのはラッキーだった。
以前は金物屋だったろうか、店の軒先にはいかにも古そうな看板が風に揺れていた。
“キリン鎌”のロゴが右から左に書いてある。店主(?)とおぼしきオバちゃんに尋ねてみると、この看板は戦前からあるということだった。
こうなると現金なものだ。道に迷ったことと、お宝との偶然の出遭いに感謝しつつ、気分も軽やかに尼崎を目指す。
伊賀市から宇治田原町を経由し大阪市内に入ったが、国道はどこも渋滞だった。
今年の盆休みは長いのだろうか、コンビニもガソリンスタンドも、吉野家も…どこも人、人、人だ。
民族大移動のあり様だった。 自宅を出てから6時間もかかって、尼崎市の看板屋敷に着いた。
予定では3時間もあれば…と思っていたのに、これでは暗くなるまでに倉敷市に着けるかどうかも怪しくなってきた。
「ニッカウヰスキー」が貼られた屋敷が、山陽本線の線路の前で陽炎のようにぼんやりと揺れていた。季節は夏の真っ盛りだ。

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そのうち、ニッカの真っ赤な看板もツタに覆われしてまうのだろうか。 尼崎市からもひたすら下道を走り続けた。
ウンザリするような渋滞が続く神戸市内をようやく抜け、国道2号線沿いにあるJR山陽本線曽根駅に着いたときはすでに15時を回っていた。
今年の2月の探検では、この付近にあるという「仁丹」が貼られた屋敷を探して走り回ったのだ。
しかし、どうしても見つけ出すことができずに、泣く泣く諦めたという経緯があった。
しかし、当の屋敷は駅から国道2号線をそのまま走ったところで、すぐに見つかった。振り返ってみると、前回、ちょうど折り返した地点だった。
…まぁ、こんなもんである。 あとは倉敷までひたすら走るのみだ。
吉永から和気へと道草しながらハンドルを握り、倉敷市内に入ったときには、どっぷりと日が暮れていた。
さて、今日の最終ターゲットは、倉敷市内の銭湯にある看板である。
岡山県倉敷市の観光地、美観地区の中心から倉敷川に沿って続く静かな路地を、南に入った場所にある「船五湯」が僕の目指すところだ。
創業はなんと100年以上。知る人ぞ知る名銭湯である。 こに「クリームワーム」の看板が貼られていると知ったのはネットの情報から。
倉敷市内には「戎湯」にも同じ看板があるが、こ ちらは土曜休みとあって訪ねることができなかった。
のれんをくぐるとすぐに番台があり、女将さんとおぼしき人が座っていた。
410円を払って脱衣場へ。 「あった、あった」…思わず声が出てしまった。
黒光りする柱に「クリームワーム」の看板が貼られていた。

探検レポート230

その横には「マネービルの日興証券」の温度計。 撮影許可を貰い、看板やレトロな脱衣用ロッカーを撮らせてもらった。
それにしても「貴重品は番台へ」というコピーが最高である。中国地方には「ワーム」の看板が多く残っているが、銭湯仕様というものも存在していたのには改めて驚いた。
「ワーム」は昭和23年(1948年)に富山市水橋で創業したワーム本舗(現・ワーム薬品株式会社)の置き薬で、現在も“売薬さん”による営業で配荷されている。
さて、ロッカーは鍵がかからないので、コピーの教えを忠実に守って(笑)、女将さんに財布を入れたディパックを預けた。
そして浴室へ。大人が2人ほどしか入れない小さな湯船には、熱い湯が満々と溢れていた。
鼻歌交じりの先客のおじさんを気遣ってそろりと入ると、旅行者だと見破られたのか、倉敷のウンチクをしつこく聞かされた。おかげでのぼせる寸前になってしまった。
夏のホーローひとり旅の初日は、渋滞に捉まって散々な一日であったが、最後は、あまりの気持ちよさに極楽、極楽だった。(つづく)
(2010.11.24記)
※画像上/倉敷市の美観地区。夕暮れの路地を入ってみた。人がやっと通り抜けれるような路地には、表通りにはない生活感が溢れていた。
※画像中/同上
※画像中/レトロな脱衣用ロッカーが鎮座する「船五湯」。創業100年以上の老舗銭湯だ。岡山県倉敷市。
※宿泊/「倉敷ステーションホテル」☆☆★★★ 素泊まり3650円。駅前の立地だけあって、コンビニや飲食店も多く便利だが、古いホテルだけに部屋は防音も悪く、何よりたばこ臭かった。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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