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ホーローの旅

レポート234 2010年夏、瀬戸内の旅5 倉吉へ

2010.8.11
鳥取県米子市~大山町~琴浦町~北栄町~倉吉市~岡山県津山市~滋賀県東近江市


探検レポート234

宿のおじさんに見送られて米子を後にする。
しばらく走ったところでスタンドを見つけて給油。このところのガソリンの高騰は諦めもするが、なんとリッター146円だった。
前日に入れた広島県が132円だっただけに、思わず「なんでこんなに高いの?」と聞くと、「皆さん、そうおっしゃるんですよ」という返事。
更に「特に関西から来た人はよくおっしゃいますよ」。 確かに5日前に給油した大阪では122円だった。
ずっとコスモ石油で入れているのだが、おそらく鳥取は日本一ガソリンが高い県(?)かもしれない。
ガソリン価格に憤慨していてもしかたがないが、大名旅行ではないから、たとえ1円でも気になってしまう。つまるところは小市民なのだ。
そんなことをあれこれ考えながらハンドルを握ると、左の車窓には日本海、そして右手には厚い雲をかぶった大山(1729㍍)が見えてきた。
風力発電の巨大な風車が仁王立ちになってゆっくりとプロペラを回していた。 薄日も差しているが、台風の影響は明らかのようで、南よりの湿った風が強く吹いている。

探検レポート234

コンビニに立ち寄って、朝めしのサンドイッチの袋を破った途端、強風に袋がもっていかれ、あっという間に高く舞い上がり見えなくなった。
今日は時間との勝負となりそうだ。台風は今夜遅くに日本海から朝鮮半島に抜けるらしいので、今いる場所は台風の進路にかなり近い。
できるだけ早く東に行かなければ、ちょっとまずいことになるかもしれない。
倉吉市までの往路は、海岸線に沿った集落を訪ねながらお宝を探していく。2006年にも同じ経路で探検を行っているが、見落としがたくさんあった。
今回は投稿者のろんださんから提供いただいた新たな情報が大変役に立った。
ただ、北栄町の「ニホンローソク」が貼られた廃商店には前回訪ねたときに「アデカ石鹸」もあったのに、白く残る跡だけを残して跡形もなくなっていたのは残念だった。
年々お宝の姿が消えているのを確認しているが、こうした現状を目の当たりにしてみると、心が痛む。
倉吉市に入ると台風の影響下から外れたのか、風も止み、強烈な陽射しが照り付けていた。

探検レポート234

市営の駐車場にクルマを預け、自転車作戦でホーロー探検をすることにした。
3日前の大崎上島の再現のような、ギラつく真夏の陽光が背中に突き刺してくる。ほんの5分も走らないうちに汗が滴り落ちてきた。
真夏の自転車探検は快適とはいえないと改めて感じるが、すでに走り出した自転車は誰にも止められない。
倉吉を訪ねるのはこれで三度目だ。お盆の準備が始まっているのか、古い町並みが軒を並べる商店街には提灯が下がり、ちょっとしたお祭りムードが漂っていた。
日経新聞の「散策したい町並みランク」にも選ばれた倉吉だが、落ち着いた古い町並みと、静かに時を刻む雰囲気が秀逸である。
働くところがあれば、今すぐにでも住んでみたい町だと思う。
さて、台風の存在をすっかり忘れて強行した炎天下の自転車作戦は、ペットボトル2本を消化して2時間ほどで切り上げた。
「湿布にオスモン」や「味の素」の組み看板など、宿題にしていたお宝も見つけることができたし、酒蔵や醤油蔵の取材もできた。 次回訪れることがあれば、ゆっくりと宿に泊まって、黎明の赤瓦や町並みを見てみたい。
実は初めてこの町を訪れたときに倉吉市内の旅館に泊まっているのだが、ホーロー探検を焦るあまり、朝5時過ぎには宿を飛び出してハンドルを握っていた。

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50才を過ぎていつまでもせわしく走り続ける自分も可笑しいが、時間を気にせずにのんびりと風情を楽しむ旅もしてみたくなった。(…といいながらも、まだまだ今のスタイルは変えれそうにもないが)
今回は、瀬戸内の真夏の陽光と風を肌で感じ、最後は台風の強風で追い立てられた旅となったが、珍しく“迷走”することなく、計画通りのホーロー旅に仕上がったようだ。
計画通りというのも一見つまらなく感じることもあるが、なかなかどうして、決めたコースやルート通りに進めるのは難しい。
津山ICから中国道に乗ると、つい5日前に出発したのに、どんな風景やお宝を撮影したのか、何を食べたのかさえ忘れていた。
時間が経つのも早いが、年を取った証拠なのだろうか、忘れるのも早い。
心に残るホーロー旅はなかなかできないが、心の琴線に触れるような納得できる旅を、これからも追っかけていきたいと思う。(おわり)
(2011.1.16記)
※画像上/鳥取県大山町の風力発電がある風景。日本海に面した丘陵地に巨大なプロペラがいくつも回っていた。
※画像中/盆の準備が始まった倉吉の町並み。
※画像中/倉吉の街角風景。張りめぐらされた用水路に沿って、白壁の家屋が軒を連ねる。
※画像下/倉吉の町で見つけた道祖神。何気なく祀られている石仏が町の静けさと渾然一体となって溶け込んでいた。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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