ホーローの旅
レポート246 山陰→瀬戸内縦断ホーロー旅2 鳥取~兵庫編
2011.5.1
兵庫県香美町~鳥取県鳥取市~北栄町~倉吉市~三朝町~智頭町~岡山県美作市~兵庫県佐用町~相生市
薄日が差したり、曇ったりを繰り返す天候のなか出発。
鉛色ににぶく光る海を見ながら、倉吉市を目指す。
遮蔽物もなく、日本海から吹きつける風をまともに受けるのか、このあたりはやたらと風が強い。風力発電の巨大な風車が等間隔に並んでいるのもうなずけるというもの。
立ち寄ったコンビニの駐車場に下りるとき、あやうく帽子を飛ばされそうになった。
倉吉市を過ぎ、国道9号線を南下して北栄町に入ったところで、今回の探検の目的の一つである「ヘルス石鹸」が貼られた商店の前に立った。
入口にある柱には「アデカ石鹸」の真っ赤な短冊形の看板もあった。 「ヘルス石鹸」には太陽化学という社名のロゴがあるが、帰宅してからネットで検索しても出てこなかった。
一緒に貼られている「アデカ石鹸」は洗濯用石鹸なので、「ヘルス石鹸」もそのルートから調べてたみたが、結局化粧石鹸なのか、洗濯用なのかは分からず終いだった。
いずれにしても珍しい看板である。6年に亘るホーロー探検で初めて遭遇したお宝である。
北栄町で折り返し倉吉市に入ると、雲の間からすっきりした青空も覗くようになってきた。
倉吉の町を歩くのはこれで四度目である。過去の探検で多くの琺瑯看板を見つけているが、その数からすると、おそらく倉吉は国内でもトップクラスのお宝密集度が高い町ではないかと思っている。
肥料屋や銃砲店、醤油醸造元といった現役の商店にさりげなくお宝が貼られているのもうれしい。
初めて訪ねてから5年が経過したが、その間に一枚もお宝が消失していないこともポイントが高い。
古い町並みと、それを飾る役者ともいえる看板たちが、自然のままに静かに時を刻んでいく姿はなんともいえないくらい感動的である(私は看板フェチなので…笑)。
倉吉では前回訪ねたときに、電線工事の車両が邪魔をして撮影できなかった、「味の素」の組み看板をカメラに納めることができたし、倉吉を代表する景勝である用水路に沿って続く赤瓦と呼ばれる白壁土蔵群にもカミさんを案内することができた。
倉吉からは三朝町を経由し、国道179号線から人形峠を越えて智頭町に出た。
山間を縫う国道482号線は、旧佐治村(現・鳥取市)を通る初めて走るルートだが、忘れた頃に、山間の隙間から小さな集落がぽつりぽつりと現れただけで、ほとんどお宝の姿を見ることがなく、時間ばかりが消費していった。
智頭町から更に南下を続け県境を越えて岡山県に入っても、お宝との遭遇はなく時間が過ぎるばかり。
美作市で見つけた「清酒多ち花」と「マルキン醤油」が貼られた酒屋を、砂漠で見つけたダイヤのごとく興奮して写真を撮りまくったが、帰宅してから調べみると、この物件は2005年5月に訪れていたことが分かり、後になって愕然とするおまけがついてしまった。
まぁ、こんなものである。なかなか新しい発見もないし、お宝は早々見つかるものではない。
この日の収穫としては、事前に情報を貰っていた「赤くすり」を撮れたことだろうか。
これは奈良県の太陽堂製薬㈱の製品で、今も現役で売られている解熱剤のトンプク薬である。
胃腸薬の「青くすり」と対で貼られていることが多く、昔は兵庫県でふつうに見られるポピュラーな看板だったようだ。
2006年に宍栗市で「青くすり」を見つけて以来、ずっと「赤くすり」を探していたが、今回の遭遇でようやく気になっていた積年の宿題を終えて、肩の荷が下りた気分だった。
夕刻が近づき、久しぶりの夫婦ホーロー探険隊のクルマは、佐用から赤穂市を回り相生市にある宿に向かった。
この日は、日本海が見える町から中国山地を縦断して、瀬戸内の町までの長いルートだったが、新鮮な魚が食べたくてひたすら走ってきたのに、期待に反して、宿がある新幹線の相生駅の周りには営業している居酒屋はほとんどなかった。
コンビニすらない駅前に唖然とし、シャッターが下りた閑散とした商店街を足が棒になるまで歩き回ったが、結局、目ぼしい店を見つけることができず、最後にはクルマを出して、郊外のマックスバリューで買ったお弁当を部屋でつっつくことになった。(つづく)
(2011.10.30記)
※画像上/兵庫県香美町の商店街。どこか懐かしさを感じる町並みだ。
※画像中/倉吉の古い町並みを歩く。
※画像下/倉吉市の古い町並みで。屋根の上に見つけた猫。警戒心旺盛だったが、何枚か撮るうちにポーズを決めてくれた。
※宿泊/相生ステーションホテルアネックス(兵庫県相生市)。素泊まり2名6800円。新幹線駅前に建つ真新しいホテル。清潔で快適なホテル、しかも激安。しかし、周りに食事ができるところがほとんどないのが残念。☆☆☆☆★