ホーローの旅
レポート250 小豆島→高知ホーロー紀行1 小豆島編
2011.8.18
香川県小豆島町~土庄町
暗い海に向かって出航したフェリーが、ようやく島の岸壁に着いた。
神戸を出て3時間、小豆島の東南にある坂手の港には、まぶし過ぎるほどの夏の光が注いでいた。
今日からカミさんと二人三脚のホーロー旅が始まる。
お盆を避けて遅い夏休みを確保したので、混雑もなく宿の予約も簡単に取れた。
小豆島から高松、そして四国を縦断して高知、更に東海岸を北上して徳島、そして淡路島を走り抜ける四日間のコースである。
小豆島はホーロー探検を始めた当初からずっと気になっていた島。
最もここに限らず、私は島そのものが好きで、いわゆる“島フェチ”とでも言おうか。
昨年の夏の探検で瀬戸内の島を巡って以来、島への想いは募るばかりで、佐渡島や五島列島、屋久島など地図を眺めては思いを馳せていた。
さて、そんな小豆島であるが、お目当てのホーロー看板はあるだろうか。ネットで公開されている情報では、レアな看板が並んだ商店もあるようだ。
まだ残っていればうれしいが、逸る気持ちを落ち着かせて、まずは、フェリー港からほど近い岬の突端にある「二十四の瞳映画村」にクルマを走らせた。
小豆島といえば『二十四の瞳』というぐらい、誰もが連想をする。島出身の作家、壺井栄の名作である。
映画村は1954年公開の高峰秀子作品と、1987年の田中裕子作品のロケセットを軸にテーマパークとして建てられていた。
分教場や壺井栄記念館など見どころはたくさんあったが、なかでもさりげなく貼られていたホーロー看板に目がいって仕方がなかった。
ロケセットの板壁に同化した看板たちを見ると、雰囲気を出すための飾り看板だと分かっていても、思わずカメラを向けてしまうのだった。
映画村には、公開されたばかりの映画『八日目の蝉』(井上真央・永作博美主演)の情報館がオープンしていた。
マップを見ると島のあちこちでロケをしたようで、これから向かう島の一周ドライブに役立ちそうだ。
余談だが、後にDVD化された作品を観たが、私たちが辿った島の美しい風景がふんだんに出てくるし、何よりも永作博美の演技が素晴らしく、涙、涙の作品だった。
映画村から土庄町にクルマを走らせると、醤油蔵が立ち並ぶ風景が目に飛び込んできた。
小豆島は昔から醤油醸造が盛んで、その起源は、約400年前の文禄年間まで遡るといわれている。
中でもマルキンは小豆島きっての巨大蔵である。 蔵見学もできるようなので、「マルキン醤油記念館」にぶらりと入った(有料 大人210円)。
醤油づくりの工程も少しは理解できて、更にお土産に醤油のミニボトルまでついてきて、ポイントが高い。
今日は土庄港にあるホテル泊なので時間はたっぷりある。
ネットの情報にあった看板商店もシャッターが下りて、写真に写っていた看板は全て撤去されていた。
まぁ、数年前の情報から時間が経っているので仕方がないが、ここまで一枚もホーロー看板を見つけていない。
多少の焦りは出てくるが、カミさんもいることだし、こうなると観光優先でもいいかな…という気になってきた。
結局、夕方までの半日で島を一周して、「マルキン」や「清酒川鶴」「ミツカン酢」といったポピュラーな看板を数枚見つけただけで終わってしまったが、島の風景にどっぷりと漬かった意義は大きかった。
オリーブ園を見学した後、『八日目の蝉』に出てきたそうめん工場でそうめん作りを体験したり、同じく幻想的な虫送りの場面が出てくるロケがあった棚田を眺めたり、見どころはたくさんあった。
島の名産であるそうめんも美味かったし、泊まった宿のおばちゃんも気さくで良い人だった。
わずか1泊の滞在だったが、機会があれば再訪したい、そんな気分にさせる旅の初日になった。(つづく)
(2012.1.4記)
※画像上/小高い丘の上から「二十四の瞳映画村」を見る。ひまわり畑が目に鮮やかだった。
※画像中/「二十四の瞳映画村」で。岬の分教場前にあったボンネットバス。
※画像下/日本の棚田百選にもなっている「中山千枚田」。700枚余りの棚田が波形に広がっていて壮観な風景。『八日目の蝉』では幻想的な虫送りのロケが行われた。
※宿泊/小豆島ビジネスホテルニューポート。1泊2食2名11600円。この価格で二食付きとは驚き。夕食は部屋食でボリューム満点。宿のおばちゃんたちも気さくで明るい。部屋が古いのを差し引いても素晴らしいパフォーマンス。☆☆☆☆★