琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート255  奈良県桜井 雨のホーロー町歩き

2012.2.25
奈良県桜井市


探検レポート255

今にも泣き出しそうなどんよりとした空を見上げながら、近鉄桜井駅で下りた。
名古屋駅から伊勢中川行き急行に乗車、更に大阪上本町行きに乗り換えて、合計3時間の旅の終点である。
お気に入りの、おじさんには似会わないショッキングピンクのディパックを背負い、まずは目的の看板屋敷に向かって歩く。
駅から数分のところで、サラ金の看板が隙間なく貼られた古い民家の壁に「大阪モード専門学院」のローカル看板を見つけた。
“モード”のロゴと、時代を感じる“和裁”“洋裁”のロゴがアンマッチだ。
更によく見ると、“鉄筋三階新校舎”とあるから、いやでも時代を感じてしまう。
いつのまにか雨に濡れ始めた歩道を、傘を差して急ぐ。
JRの踏切を渡り交通量が多い国道に出ると、大阪在住の投稿者の方に教えていただいた屋敷があるべきところから姿を消していた。
どうやら取り壊されて更地になったようだ (タッチの差だったか…)。
過去にもこうしたことはよくあったが、残念な気持ちは隠せない。

探検レポート255

屋敷には金鳥ペアの他に「ワキ胃腸薬」のレアな看板が貼られていただけにがっかりである。思わず「あ~ぁ」と声に出してしまった。
急行列車をつないで3時間もかけて来たのは、この屋敷の撮影が最大の目的だったこそ。すでにノックアウトを喰らってしまった感じだ。
しかし、落胆していてもしょうがないので、気持ちを切り替えて、町名看板が残っているという旧・初瀬街道に沿って歩くことにした。
いよいよ本降りになった雨は、容赦なく風に乗って横殴りに叩きつけてくる。その上、パーカーを着込み、マフラーで防備しても身体が冷えてくる。
冬の冷たい雨は、ホーロー探検のやる気をそぐには充分すぎるほどの理由になった。
いっそのこと切り上げて帰ろうかとも思った。
しかし、昭和の時代にタイムスリップしたようなシャッターが下りた商店街や左右の屋根がくっつきそうな狭い路地を偶然見つけたりするうちに、いつの間にか、帰ることなど忘れてしまうほど、歩くことに夢中になっていた。
結局この日は町名看板の探索と、4年前に近鉄の線路沿いで見つけた看板屋敷の再訪をしてホーローの町歩きを終えた。

探検レポート255

看板屋敷は、右の壁面を覆っていた枯れた草が剥れ、「トーア毛糸」と「ブラザー電気洗濯機」の看板が完全に露出していた。
この屋敷を発見したときには、5枚の看板を露出させるために、二週に亘って枯れ草を除去する作業をしたことが懐かしい。
そんなことを思いながらカメラを向けていると、線路点検の作業をしている人から「ここは、立ち入りあかんでぇ」と柔らかく注意された。
「いや~、すみませんね~」と言いながら、ちゃっかりともう一回シャッターを押して看板屋敷を後にした。
午後2時を過ぎ、空腹を抱えて桜井駅までの帰路を歩いたが、コンビニどころか売店もなく、結局何も口に入れることができずにホームに入ってきた下り電車に飛び乗ることになった。
靴に沁みこむほどの雨の中、巡礼者のように黙々と歩いた探検となったが、このところ身体の一部としてなじんでいる歩数計の表示は、14500歩を記録していた。
久しぶりの一万歩超えに、翌日、筋肉痛に見舞われたことはいうまでもない。
(2012.3.18記)
※画像上/桜井市本町あたり。アーケード商店街の中は日曜日の昼間だというのに、人の姿もほとんどなく、シャッターが下りた商店がずらり。景気づけの(?)FM放送がアーケードにむなしく響いていた。
※画像中/桜井駅の近くには昭和時代の古い商店街が残っていた。
※画像下/旧初瀬街道の路地で見つけたロート目薬のハリガミ。かなり古そうです。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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