琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート256 TOKYO下町ホーローウォーキング

2012.3.2
東京都荒川区~北区~豊島区~西東京市~渋谷区


探検レポート256

テレビのニュースは、午前中の天候悪化を告げていた。
冬が逝くからだろうか。このところ、週末に雨という、歓迎できないパターンが続いている。
ホテルの朝食サービスを急いでかき込み、上野駅に向かう。
山手線から日暮里、更に舎人ライナーで熊野前へ。 目指すは住宅街にある酒屋さんだ。
関東在住の琺瑯看板マニアのTMさんに教えていただいた情報では、お酒や醤油の看板が貼られているらしい。
熊野の電停から商店街を歩くと、いかにも下町然とした雰囲気が濃厚になった。
これまで勝手に解釈していたが、東京でいう【下町】とは、高級住宅地のイメージがある【山の手】と反対に、小さな町工場や商店がある地域だと思っていた。
調べてみるとあながち間違ってはないようで、どうやらその端緒は江戸時代の住み分けに由来するそうだ。
つまり御府内で、高台の武家地域を【山の手】と呼び、低地にある商工業が盛んな町人の暮らす町を【下町】と呼んだというのが始まりらしい。

探検レポート256

東京における下町のイメージは、代表的な地域である日本橋・京橋・神田・下谷・浅草・深川・本所等の他に、現在では寅さんの柴又を始めメディアに取り上げられるエリア、また、荒川・江戸川などの河川敷に近い商業地域等、“江戸情緒や人情を残す町”というイメージが強くなってきたようだ。
さて、今回のホーロー探検は、東京のそんな下町を歩くことが目的である。
出張帰りの、スーツにビジネス鞄の肩掛け、足元はビジネスシューズ…そしてカメラを提げた、なんとも様にならない出で立ちである。
目的の酒屋さんは、民家が密集した区画をぐるぐると回り、半ばあきらめかけた頃、ようやく見つかった。
「持っていけ!」といわんばかりに、「清酒神聖」と「サカガミ醤油」の看板が無造作に貼られていた。
全国的にホーロー看板が激減している今、大都会に残った看板は貴重ではないだろうか。
小台から都電に乗り、荒川線庚申塚駅で降りると、申し合わせたように冷たい雨となった。
色とりどりの傘の花が咲く商店街を突っ切ると、住宅地の中にソース工場があった。
トキハソース(株)は大正12年創業。東京で一番古いソースメーカーだという。
建物の壁にはホーロー看板が貼られ、ソースの甘い香りが漂っていた。

探検レポート256

このところ身体の一部になってしまった歩数計の表示は、午後を迎えるまでに一万歩を超えた。
雨の中のホーローウォークはこれからが本番である。池袋まで戻り、西部池袋線で東長崎に出て、再び歩き出す。
季節はずれの「冷やっこ」の看板が貼られた豆腐屋は、にぎやかな商店街の中に埋もれるようにあった。
愛嬌が良いお婆ちゃんが店番をしていると聞いたが、声をかけても返事がなかった。仕方なく撮り逃げをしてしまったが、こういうのは後味が悪い。
池袋から新宿に出て、京王電鉄に乗車し、笹塚駅で降りる。そこからは完全に徒歩行軍である。
「たこの吸出し」→「ハチ公ソース」→「カビドール」と撮り歩き、最後は激しく雨が降る、喧騒の渋谷駅にゴールした。
雨を吸い込んだビジネスシューズは靴下まで濡れ、スーツもヨレヨレ状態で、まるで敗残兵のようになった。
しかし、カメラに収めた今日の成果は、充分におつりが来るくらい満足いくものだった。
(2012.4.12記)
※画像上/都電荒川線庚申塚電停。雨の中、ひっきりなしに電車はやってきた。
※画像中/豊島区東長崎の商店街。シャッターが下りた商店も多い。土曜の昼間なのに人影もまばらで、活気がなかった。
※画像下/商店街の中にあった豆腐屋さん。いかにも昭和の商店といった感じだった。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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