琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート260 世界遺産の島へ、屋久島&種子島探検

2012.5.21-25
鹿児島県鹿児島市~屋久島~種子島~指宿市~枕崎市~南さつま市~日置市  


探検レポート260

入社30年の節目にあたる今年、会社から5日間のリフレッシュ休暇と旅行券を貰った。
さて、どこに行こうかと思案するなかで、真っ先に浮かんだのが、まだ行ったことがない沖縄。
しかし、同行するカミさんも黙ってはいない。南の島志向は同じでも、「縄文杉に会ってみたい」という。
沖縄でのホーロー探検を目論んでいた私も、縄文杉の魅力には勝てず、最後はカミさんの一押しで屋久島に決まった。
“屋久島に呼ばれる”とはよく言われることだが、私たち夫婦にはやはり惹かれるものがあったみたいだ。
世界遺産の森を彷徨い、往復22キロ、9時間をかけて辿りついた縄文杉。その原始の姿はしばらくの間、私たちの頭からは消えることはないだろうと思っている。

▼5月22日~23日 屋久島探検編
やっぱりというか、あたりまえというか、屋久島は雨だった。 2時間半前に快晴の鹿児島港を出航したことが嘘のようだ。
激しく叩きつける雨に狼狽しながら、屋久島に第一歩を記す。 月に35日間雨が降るといわれる島だけあって、雨の歓迎は予想通りか。
金環日食があった昨日は、鹿児島に着いた早々から強烈な歓迎を受けた。桜島の噴火による数年ぶりの大規模な降灰である。

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街中が灰をすっぽりと被ってしまった様子はただならぬ状況で、目にも髪にも風に舞い上がった桜島の灰がじゃりじゃりと入り込み、マスクを付けずには歩けないほどだった。
そんな中、フェリーは屋久島へ向かった。これから3日間をこの島で過ごすのだ。
目的は縄文杉登山であるが、あわよくば島の一周ドライブでホーロー看板を見つけたいと思っている。
どちらにしても、屋久島は私たちに微笑んでくれるだろうか。 宮之浦港でレンタカーを借りて、まずは白谷雲水峡を目指す。翌日の縄文杉登山に備えた足慣らしのハイクをするためだ。
新緑の渓谷に分け入ると、そこには濃い密度をもった原始の森が広がっており、雨に煙る森が、とてつもなく深かった。
のっけから屋久島の自然の素晴らしさに舌を巻き、雨がすっかり上がった宮之浦の町に下りた。
海岸線に沿って、今夜の宿がある永田集落までをドライブするのだ。距離で約50キロ、島を3分の2周といったところか。
島一番の町、宮之浦から安房までは適度に集落もあって、県道から脇道に逸れながら看板を探していく。
しかし、いかにも“匂う”建物は見当たらず、廃業した商店にあったスプライトの看板一枚で終わってしまった。 本土ならどこでも見かけるマルフクの看板すら貼られていない。
そもそも、建物の壁に広告宣伝としての看板を貼るという発想はまったく根付いていないようだ。
島には焼酎の醸造元もあるので、お酒の看板が貼られていることもちょっとばかし期待していたのだが、これも空振りだった。
こうなると、看板探しは諦めざるを得ず、日本の滝百選の「千尋の滝」や「大川の滝」を見学したり、まるでサファリパークのようなサルや鹿が堂々と横切る西部林道をのんびりと走ることで、初日の探検を終えることになった。
翌日は予期せぬ快晴の中、予定通り縄文杉登山を行った。早朝4時に出発し、登山口がある安房の町に下りてきたのは午後4時を回っていた。

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二泊目の宿をとった宮之浦までの途中で、偶然にもお宝発見!屋久杉の加工場の建物の壁に貼られていたそれは、いかにも屋久島らしいチェーンソーの看板だった。
縄文杉登山に向かう永田から宮之浦までは早朝の暗い中を走ったこともあり、結果的に島の一周は達成したが、ホーロー看板を探すことはできなかった。
最悪の結果も想定していた島での探検だったが、初見のチェーンソー看板を見つけることができて、なんとか面目が保てた結果になった。

▼5月24日 種子島探検編
屋久島の宮之浦港から1時間、のっぺりとした台地が見えてくると、そこが種子島だった。
鉄砲伝来、ロケット基地…おそらく多くの人が種子島から連想するイメージはこんなところだろう。
しかし、初めて訪れて驚いたことは、その自然景観の素晴らしさにあった。フェリーが接岸した西之表港からレンタカーを借りて島をほぼ一周してみたが、南国特有の田園風景や、千座の岩屋に代表される海岸線の景観には思わず歓声が上がったほどだ。
ホーロー看板はそんな風景の中に埋もれていた。「甘露」という焼酎やベンチ看板が、まるでそこにあるのが当然といったように残っていた。
ホーロー看板が“昭和の残像”であるなら、種子島の玄関口である西之表の町並みもまた、昭和の残像のようだった。
商店が軒を連ねる目抜き通りから一歩脇道に入ると、ネコが道の真ん中に寝そべり、どこからともなく昭和の演歌が聞こえていた。
ほんのちょっと寄り道しただけの体験だったが、時間がゆっくりと流れる空間が妙に心地よい種子島だった。

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▼5月25日 薩摩半島探検編
種子島から指宿に渡った翌日、薩摩半島を縦断して鹿児島空港までのルートを探検することにした。
2007年に続いて二度目の探検であるが、前回は海岸線に沿って指宿を目指したので、今回は内陸部を北上し、伊集院町に出て鹿児島空港に向かうことにした。
天気はあいにくの雨。本来ならば開門岳がどーんと見えている筈も、大きな裾野がぼんやりと見えるだけで開門町を通過。
池田湖に着いても霧が濃くて何も見えなかった。鹿児島が初めてのカミさんには残念だが、天気には勝てない。
さて、ホーロー探検であるが、小さな集落もフォローしながら看板を探していくが、鹿児島県にはたくさんあるはずの「ボンタンアメ」や「カクイわた」の一枚も見つからないまま、知覧町に入った。
武家屋敷や特攻記念館を見学して加世田町(現・南さつま市)から伊集院町(現・日置市)に抜けたが、見つけたお宝は初見の「つくしあられ」以外はさびしい結果に終わってしまった。
5日間をかけた南国の旅は、登山と観光が8割、看板探しが2割という結果になったが、それはそれで、自然のなかにどっぷりと浸かった楽しい旅に仕上がったと思う。
残念だったのは、期待していた薩摩半島。不完全燃焼となった探検をリベンジすることを、今後の楽しみとしてとっておきたくなった。
(2012.6.18記)
※画像上/縄文杉に向かう途中で見つけた大杉の洞穴。頭上から杉木立が見えた。
※画像中/屋久島の荒川登山口から続くトロッコ軌道。昭和40年代まで実際に使われていた。
※画像中/種子島の千座の岩屋がある海岸で。修学旅行の高校生達がはしゃいでいた。
※画像下/種子島の西之表市街で出会ったネコたち。
※宿泊/鹿児島東急イン(鹿児島市5/21)素泊まり 1名5600円 鹿児島駅に至近。周辺には飲食店も多く好適地。☆☆☆☆★/屋久島つわのや(屋久島永田5/22)一泊二食 1名14200円 こじんまりした人気宿。トビウオ料理は絶品。プライベートビーチからの景観も素晴らしい。温泉もいい。夜、ネコの鳴声がうるさかった☆☆☆☆★/シーサイドホテル屋久島(屋久島宮之浦5/23)一泊二食 1名14600円 よくある大型の観光ホテル。宿泊客が多く、朝食バイキングは順番待ちとなった ☆☆☆★★/指宿白水館(指宿5/24)一泊二食 1名19400円 指宿を代表する高級旅館。料理、温泉、接客サービスとも文句のつけようがない。☆☆☆☆☆



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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