琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート267 灼熱の九州6日間の旅4 長崎県編

2012.7.31
佐賀県鹿島市~武雄市~唐津市~伊万里市~長崎県佐世保市~長崎市~大村市


探検レポート267

アパートを改造したようなホテルは、ワンルームの和室ながら居心地が良く、ぐっすりと眠れた。
この宿に2泊することになるが、朝食はホテルに併設されたスナックで摂った。
客は私を入れて5人。いずれも頑丈そうな日焼けした若者だ。おそらく工事関係者の定宿なんだろう。
ホテルのオーナーは60年配の女性で、給仕をしてくれるのはいいが、朝から妖艶。もっとも、食事場所もキープのボトルが並んだスナックなんで、まぁ、しょうがない(笑)。
さらに食事もすごいボリュームである。繰り返し流れるNHKニュースの台風情報を観ながら、年を忘れてワッセ、ワッセとかき込んだ。
今日は平戸を目指すので、時間短縮を考えて大村ICから長崎自動車道に乗り、嬉野ICで下車し、まずは昨日訪ねた鹿島市を再探検する。
狙いは花王石鹸の看板だが、屋敷の前に立ってみると、4枚組の看板は「王」と「石」の文字が欠落していた。字体からも検証できる戦前の看板だけに残念だった。
武雄市に入り、JR佐世保線沿いの看板屋敷を撮影し、武雄温泉にあるというたばこの町名看板を目指して意気揚々とハンドルを握ったことはいいが、ここで思わぬアクシデントが発生。

探検レポート267

一旦停止を無視して交差点に侵入してきたクルマに追突されたのだ。私が乗ってるレンタカーは左後部の側面が大きくへこみ、タイヤカバーが外れる始末。
加害者の女性はおろおろしながら「私がボーとしてたんで…」と繰り返すだけ。
警察が来て事故処理が終わるまでの間、レンタカー会社に何度も電話したり、相手の連絡先を聞いたり、結局、1時間半もロスしてしまった。
挙句、レンタカー会社にはNOC代金という営業保障と修理代金の賠償金2万円を支払うハメになってしまった。
加害者にも腹が立つが、爪に火をともすようにして貯めた(大げさ!)カンヅメ貯金を崩して、安宿に泊まりながら九州を探検している身には運が悪いとしかいいようがない。
怪我がなかっただけでも良かったかもしれないが、何ともやりきれない気持ちだった
。この2万円があったら、もっとゴージャスな旅ができたかと思うと…うーん、これ以上は言うまい(悲)。
さて、そこはホーロー探険隊である(笑)。クルマはへこんだが自走できる状態なので、気持ちを切り替えて唐津を目指すことにした。
更に、唐津市中心部から国道204号線を海岸線に沿って北上していき、呼子町まで頑張る。
東松浦半島の先端近くにある呼子町は歴史的に見ても興味深いエリアである。唐津藩の港として栄え、深く切れ込んだ港にはイカ釣り舟が停泊していた。

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港と並行する旧道には古い町並みが続き、カメラを提げて歩いてみると、炎天下のアスファルトに陽炎が揺れる時間が流れているだけだった。
慶長の役で豊臣武将たちの陣が置かれた小高い丘を横目で見ながら南下を続け、伊万里市からは松浦鉄道に沿って平戸を目指した。
しかし、この次点で14時を回っており、残りの行程を考えると平戸での探険を諦めざるを得なかった。
武雄での事故がなかったらと思うと残念でならないが、いつか来訪するチャンスもあるだろう…そう思いながら佐世保に向かう。
渋滞が続く佐世保市内をようやく抜けてたどり着いた看板屋敷は、ねっとりとした潮の香りが肌にまとわりつく平坦な場所にあった。
この屋敷は2006年8月にも訪ねているが、「ムヒ」や「トダのタネ」といった看板が今回も庭木に隠れてしまっていた。
本州の西の果てまでやって来て、よほど縁がないといえるが、まぁ仕方がない。
熱を含んだ潮風は暴風の様相となり、地図に挟んだメモ代わりのしおりが飛ばされてしまった。台風は思いのほか接近しているようだ。

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ハウステンボスから長崎市を目指すルートは二つある。2006年の探険では西彼杵半島の西側の海岸線に沿う国道202号線を走ったが、カクイわたの看板がやたらと目につく程度でこれといった収穫もなかった。
今回は半島の東側ルートである大村湾に沿って国道206号線を南下していく。 結局、一枚のお宝も発見できぬまま長崎市に着いた。
平日の夕方である。路面電車が走る市内は激しく渋滞し、西陽に向かう僕のクルマの横を“便所のハエ”のようにいきり立ったバイクが次々にすり抜けていく。
これと同じ光景を数年前に台湾で見たことを思い出したが、あと少しの辛抱だ。
長崎市内では情報を得ていた二つの物件をカメラに収め、相変わらず渋滞が続く国道を大村市に向かった。
すっかり暗くなった頃、ホテルに戻ったが、その途中で昨日見つけた「清酒初日」の看板がある酒屋に立ち寄ってみた。
苦虫を噛み潰したような頑固一徹に見える店主は…いたが(笑)、私が自販機で缶ビールを2本買うところを見ていたようで、あっけなく看板の撮影を許してくれた。(つづく)
(2012.10.21記)
※画像上/夕方の長崎市内。路面電車が走る市内は渋滞がひどい。その間だをバイクがすり抜けていく。
※画像中/佐賀県唐津市呼子町の呼子港。イカ釣り船がずらりと係留された風景は圧巻。
※画像中/呼子町の町並み。けだるい午後のひととき、井戸端会議のおばちゃんたちの傍らに、陽炎が揺れる。
※画像下/「麺処一屋」並500円。佐賀県伊万里市東山代町。とんこつスープは意外とさっぱりした味。濃厚スープに慣れた身には少々物足らないかな。
※宿泊/ビジネスホテル花まるみ(長崎県大村市) 一泊二食4300円。2泊目の食事もボリュームがあって満足でした。☆☆☆☆☆



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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