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ホーローの旅

レポート268 灼熱の九州6日間の旅5 島原半島編

2012.8.1
長崎県諫早市~雲仙市~島原市~南島原市~雲仙市~諫早市~佐賀県鹿島市


探検レポート268

“妖艶”な女将さんに見送られて、2泊を過ごしたホテルを後にした。
今日の計画は島原半島を一周して、口之津港からフェリーで天草に渡る予定だが、気になるのは台風の進路。
ニュースでは、すでに鹿児島県と宮崎県が暴風雨域に入っているという。 長崎に接近するかは分からないが、今のところ天気は快晴。
しかし、すでに影響が出ているのか、風が強い。 朝の渋滞が始まった諫早市を抜け、島原半島の西海岸にある小浜温泉を目指す。
実は、この温泉街にある看板屋敷の前で、私のサイトの掲示板で知り合った投稿者の御月さんと待ち合わせるのだ。
島原半島の入口にある千々石から国道57号線と分かれ、海岸線に沿って続く県道201号線を進むと景色は一変し、鬱蒼とした薄暗い森の中を、まるでトンネルをくぐるような錯覚に囚われながら走り抜けた。
小浜温泉には予定より30分ほど早く着いたので、「おたふくわた」や「清酒都の月」が貼られた看板屋敷の写真を撮ってから、フェリー会社へ問い合わせてみた。

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すると、口之津から天草に向かう船は波が高いことを理由に、10時の便を最後に欠航が決まったという。
何となく予想はしていたが、さすがにがっかりした。フェリーで天草に渡ることができなければ、陸路の熊本経由という選択もあるが、時間と台風の影響を考えると断念するしかなかった。
結局、予約していた天草の宿もキャンセルし、計画を変更して島原半島を一周した後、佐賀市に戻ることにした。
ついでに持参したパソコンから佐賀市内のホテルを予約し、ようやく人心地がついた。
平戸にしかり、天草にしかり、事故や台風というアクシデントでの計画変更はよくよくついていないようだ。
気を取り直して今日のスケジュールを練っていると、御月さんが現れた。朴訥そうな青年であった。
また、私に会いたいということで、弟さんまで仕事を休んで来てくれた。
簡単な挨拶を交わして、雲仙市へ。時折カーブする緩やかな坂道を登って下ると、のどかな田園風景の中にたたずむ商店が彼の実家であった。

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金鳥やオロナミンC、イカリソースやボンカレーの看板が壁に貼られて、軒先には鹽の旧字看板が揺れる、素晴らしい看板商店である。
まるで古い絵葉書を見るような、忘れられた日本の風景がそこにあった。
青い空と、遠くから聞こえる蝉の声。時間がゆっくりと流れていくような心地よいひとときを過ごした後、午前中をホーロー探険に同行してくれるという御月さん兄弟の申し出に甘えて、島原市方面に向かうことにした。
島原鉄道に沿った旧道には意外にも多くの看板が残っており、無駄のない御月さんの案内もあって、効率的にお宝の姿をカメラに収めることができた。
また、学芸員をされている弟さんの説明で雲仙市国見町に残る旧鍋島藩の武家屋敷にも案内していただき、歴史好きの自分にとっては楽しい時間を過ごすことができた。
島原城で昼食後、御月さん兄弟と別れ、島原半島の南部を半周するコースに向かう。
つい一時間前までは抜けるような青空だったのに、鉛色の雲が空を覆い、同じ色をした海の波も荒くなってきた。
更に、クルマから下りて看板にカメラを向けていると、足元から飛ばされそうになるくらいの強風となった。
厚い雲にすっぽりと隠れた雲仙普賢岳を横目で見ながら、廃線となった島原鉄道に沿った旧道を進むと、「エース毛糸」や「森長おこし」の巨大看板が貼られた屋敷や、「カクイわた」のねんねこ看板が次々に現れ、天気の悪いことも忘れてシャッターを押すことに夢中になった。

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島原半島を訪ねたのは初めてであったが、宮崎康平の『まぼろしの邪馬台国』を読んでいたこともあり、島原鉄道を含めて以前からずっと気になっていた。
短い時間であったが、島原の空気と景色を目に焼き付けることができたのは、この旅の収穫だったろうと思う。
島原半島のホーロー探険を終えて諫早市に戻り、有明海に沿って北上すると、台風はすでに去ったのか、あれほどひどかった風も収まり、干潟の風景が穏やかな時間の中に広がっていた。
ムツゴロウいるかな…と、泥の海を凝視してみたが、そんなもの素人に分かるはずもなく、落ちていく夕陽と青空の境目をぼんやりと見ながら、浜辺にたたずんだ。
振り返ってみれば、長い一日だったが、充分に満ち足りた一日になったと思う。(つづく)
(2012.11.11記)
※画像上/島原半島の入口、雲仙市愛野あたりの風景。諫早市方面を振り返る。抜けるような快晴に緑の田園のコントラストが美しい。
※画像中/雲仙市国見町神代。旧鍋島藩の武家屋敷群。石垣や塀の造りにも日本情緒が見える。
※画像中/長崎県南島原市の港風景。金鳥ペアの屋敷が見える。
※画像下/有明海の干潟。ムツゴロウは見つからなかった。
※宿泊/APAホテル佐賀駅前 素泊まり3500円。激安で快適ですが、ホテルの無料駐車場が満車で、泣く泣く有料利用(一泊500円)をした。☆☆☆☆☆



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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