琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート286 梅雨間近の山形へ、ぶらり日帰り旅

2013.6.1
山形県山形市~寒河江市~朝日町~白鷹町~長井市~飯豊町~川西町~米沢市


探検レポート286

雪を抱いた月山(1979㍍)が間近に迫ると、水田に揺れる稲が更に青さを増した。
仙台から2時間、山形市を抜け一気に寒河江までやってきた。ここから南下しながら米沢までのルートを走るのが今日の行程だ。
山形はそば処である。十割そばはもちろん、薄くスライスし蒸した鶏肉をちらした「肉そば」は山形ならではの味だ。
そんな食欲をそそるそば屋ののれんをあちこちに見ながら寒河江の商店街にハンドルを向けると、いかにもレトロな外観の酒屋を発見。
思った通り、店内にはレアな看板が残っていた。中でも「ツバサとんかつソース」は初見である。かつては東京の下町を代表するソースメーカーだったというが、今はない。
すでに消えたブランドたちが看板の中に残っているのは実に感慨深い。
雪が残る朝日岳(1812㍍)の稜線を右に見ながら朝日町から長井市に入る。
開花を待つ蕎麦畑が車窓を流れていく。 小さな集落を見落とさずにホーロー看板を探していくが、期待に反して収穫はほとんどない。
こうなれば開き直ってドライブを楽しむのも面白い。 旧JR長井線を引き継いだ、第三セクターの山形鉄道フラワー長井線の四季の郷駅は、2007年にできたばかりの新しい駅だ。
盛夏になれば駅の周り一面に野の花が咲き乱れるのだろうか。誰もいない無人駅のホームに立つと、一直線に伸びる線路が、動く生き物のように見えた。
情報もほとんどないので、行き当たりばったりにお宝を探す。

探検レポート286

長井市は酒蔵や醤油蔵を始めとする古い町並みも見どころの一つだ。クルマを置いて、そんな町並みをしばらく歩くと、自転車に乗った中学生たちが「こんにちは~」と挨拶をしながら次々とすれ違っていく。
なかなか“躾け”ができているではないか。東北の田舎といえども限りなく都会化してしまった今、挨拶というあたりまえの行為なのに、何だか忘れられたものを見たようで、すがすがしさを感じずにはいられなかった。
長井市では、醤油蔵の軒下に揺れる樽を模った看板を見つけた。その前をお年寄りがのんびりと自転車を漕いで行く。すかさずシャッターを切る。本日のベストショットだ。
また、かつての情報によると、「清酒忍ぶ川」を造る東洋酒造に町名看板が知られていたが、残念ながらこれは消失していた。
長井市を離れ、JR米坂線に沿って飯豊町方面へ南下する。「トーア毛糸」や金鳥ペアが貼られた屋敷もあって、更に飯豊連峰を背景にした景色が美しい。
整然と並んだ田んぼの稲はまだ低いが、稲穂が垂れる秋はきっと素晴らしいに違いない。こうした景色を見れただけでも、はるばる足を運んだ甲斐があるというものだ。
川西町から米沢市に入るルートは2008年5月の探検でも訪ねているが、川西町のメインストリートにある嵐山酒造で「天下の美酒 花娘」の看板を見つけた時、以前ここに来たことがあったことを思い出す始末。
ほんの5年前のことをすっかり忘れてしまっている自分が情けない。これは、健忘症が進行しているのだろう…と思って諦める。

探検レポート286

同じように、米沢市に入ってから5年前に訪ねた金鳥ペア看板や「フマキラー」「アズマ紙袋」の看板がある商店を訪ねるつもりで、記憶をたどりながら市内をぐるぐると回ったが、結局見つけることができなかった。
帰路は米沢からJR奥羽本線沿いを南下し、県境にまたがる栗子峠を越えて福島市に抜けた。
途中の小さな集落には看板屋敷がある情報を得ていたが、クルマから降り雑草をかき分けて、目星をつけた家屋に近づいても見つけることができなかった。
面倒だが、車窓から確認した上での再チャレンジが必要だろう。
山形県内のホーロー探検はようやくスタートを切ったばかりである。隣県の宮城に住む自分にとっては、いつでも行けるという気安さもある。
しかし、年々消えていくお宝たちは待ってはくれない。
季節を変えて、足繁く訪ねてみたくなった。
(2013.9.16記)
※画像上/古い町並みが軒を並べる山形県長井市。山一醤油味噌醸造は中でも指折りのレトロな建物だ。
※画像中/飯豊連峰を望む。山形の初夏の風景。
※画像下/川西町郊外で。朝日岳からの飯豊連山の裾野の稜線を望む田園地帯。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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