琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート288 旭川から増毛へ、函館本線の看板屋敷を探して 前編

2013.6.22
北海道岩見沢市~美唄市~砂川市~滝川市~深川市~旭川市


探検レポート288

札幌から旭川をつなぐJR函館本線沿いは、北海道内においてもホーロー看板の残存密度が一番高いエリアである。
2008年9月に国道12号線を函館本線に沿って取材し、このエリアのホーロー探検については自分なりに終止符を打ったつもりであった。
しかし、仙台に赴任し東北と北海道の担当になった今年5月、旭川への出張で札幌からJRで移動した際に、車窓から見える多くの看板屋敷の存在を目の当たりにした。
疾走する特急「スーパーカムイ」の車窓から次々に現れては消えていく看板屋敷の位置を、心の躍動を覚えながらノートにメモし、帰宅してから地図にプロットした。
こうなるとホーロー探検の虫が騒ぎだし、もう、いてもたってもいられなくなった。
頭の中は彼の地の看板屋敷たちに支配され、地図を眺めては来たるべき探検のイメージトレーニングを繰り返すのであった。
そして6月の終わり、満を持してのホーロー探検を決行する時が来た。

探検レポート288

今回は"公私の私"だから出張ついでとはいかない。飛行機のチケット、レンタカー、宿を手配し、週末を利用した1泊2日のトンボ返り探検が始まった。
幾重にも重なった曇天の中、美唄市を目指す。
最初のターゲットは「ミスダリヤ」と「リリーチウインガム」が貼られた屋敷である。
この屋敷は線路側に看板が貼られているのでJRの車窓からはよく見えるが、国道12号線からは屋敷の正面に当たり、裏側の看板は見えない位置にある。
地図上で目星をつけていたが、いざ国道からクルマで探すとなると、なかなか見つからない。
それらしき木造の屋敷がいくつもあるのにも困ったが、どの屋敷も大きな敷地と庭があり、おいそれと屋敷の裏側に回れないのだ。
クルマを路肩に置き、線路に沿って歩くことに変更。
雑草をかき分け、用水路や畑のあぜ道を横切ったりしてようやく看板屋敷にたどり着いた。

探検レポート288

欠落しているが、北海道にしかない「美人わた」の組看板も貼られているのが見える。
しかし、勝手に畑の中には入ることができないので、ズームでキャッチした。
緑の田園風景によくなじんでいる北海道らしい看板屋敷だった。
次に砂川駅近くの看板屋敷に向かう。この屋敷には「オゾ」の組看板が残っていた。
「オゾ」はこれまでに数枚見つけているが、組看板は初見である。
すでに無人になった屋敷であるが、草に埋もれた線路脇の壁面には「日の出桜学生服」が貼られ、玄関わきの地面には「ソニーテープ」の看板が転がっていた。
砂川駅から国道12号線を深川方面に向かう。妹背牛駅から深川駅、更に納内駅までの区間は今回の探検の白眉ともいえるエリアだ。
広大な田園地帯に看板屋敷が次から次へと現れるパフォーマンスだ。
農道なのかあぜ道なのか分からない、線路脇に続くぎりぎりのラインを選んでクルマを走らせると、壁一面に看板を貼った屋敷が見えてきた。5月の出張で車窓から確認していたが、間近に見るとすごい迫力、そしてと素晴らしい屋敷である。
おそらく北海道を代表する看板屋敷には間違いないだろう。
これまで数多くある琺瑯看板サイトやブログに取り上げられなかったのが不思議だ。 看板は全部で13枚が貼られていた。

探検レポート288

「ホクボウ毛糸」は初見で、北海道にしかない看板である。
また道路を隔てたすぐ隣にも「登鶴」や「サクラ日本学生服」が貼られていた屋敷があり、線路脇に立って二軒の屋敷全体を眺めるとその圧倒的な存在感に更に感動するのであった。
看板密度が高い深川駅から納内駅の区間は、一軒の屋敷を撮影するたびにクルマをデポしては徒歩で近づくことを繰り返した。
畑やビニールハウスで農作業している人たちに目礼をし、屋敷を撮らせてもらった。
中でも旭川に蔵元がある「清酒男山」がぽつんと一枚だけ貼られた屋敷は、北の大地に突き刺さるような孤高の存在感を醸し出していた。
探検初日は旭川市内の2枚の町名看板をカメラに収めて、市街地の外れにある安ホテルに入った。
スーパー銭湯が併設されたちょっと変わったスタイルの宿であるが、チェックインを済ませて部屋に入ったとき、もうすっかり忘れていたが、以前にも泊まったことがあることに気づいた。
まさしくそこは2008年の探検時に泊まった部屋であり、ホテルであった(笑)。
(2013.11.10記)
※画像上/北海道を代表する看板屋敷。全部で13枚の看板が貼られている。この屋敷を電車の車窓から見つけた時は感動した。
※画像中/JR函館本線美唄駅で。ホームに入ってきた普通電車。
※画像中/深川市あたりの風景。北海道らしい雄大な田園風景が広がる。
※画像下/旭川市の蔵元・高砂酒造。代表銘柄は「国士無双」



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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