琺瑯看板探検隊が行く

ホーローの旅

レポート289 旭川から増毛へ、函館本線の看板屋敷を探して 後編

2013.6.23
北海道深川市~秩父別町~留萌市~増毛町~砂川市~美唄市


探検レポート289

夜が明けたばかりのホテルを後にする。
名残惜しいが、時間を稼ぐためにホテルの朝食サービスはパスした。
まず向かったのが、「キッコー二ホン」を造る醤油醸造元の日本醤油工業(株)。昭和19年に創業した旭川で一番古い蔵元である。
「キッコー二ホン」の琺瑯看板は札幌で発見しているが、はたして蔵元には看板があるだろうか。
軒下に「キッコー二ホン」の組看板が貼られた大きな木造の建物に立つと、「曙町一条一丁目」と記された町名看板が目に入った。
残念ながら期待した醤油看板はなかったが、町名看板を見つけただけでも良しとする。
クルマの列が目立ち始めた旭川市内を離れ、昨日たっぷりと看板探しを堪能した深川市に折り返す。
どこまでも澄んだ青空である。吸い込まれるような濃い青空は、さすがに北海道だ。
深川から留萌本線に沿って国道233号を北上するに従って、広大な大地と青空が更に一体感を増していくような気がした。

探検レポート289

一両編成のディーゼルカーがのんびりと走る留萌本線に沿って、なるべく線路から外れないようにナビを駆使して道を追っかけていくと、「加美乃素」の組看板が貼られた屋敷が目に飛び込んできた。
一瞬、胸の高鳴りを感じたが、屋敷の前に立ってよく見ると、間違いなく以前撮影したことがある看板だと気づいた。
すっかり忘れていたが、2008年9月の探検でこの場に立ってカメラを向けていた。
隣町とはいえ、秩父別町は深川から10キロほど離れている。改めて、当時の行動力に驚く自分だった。
広大なじゃがいも畑の中にぽつんと建つ「清酒男山」の看板が貼られた屋敷を見送ると、留萌本線は人家もない原野に突入していく。
恵比島駅は1998年に放映されたNHKの朝の連続テレビ小説「すずらん」の舞台となった駅である。駅舎は「明日萌駅」と駅名を変え、当時のセットそのままで残っていた。
観光客もいない駅舎の前に立って周りを眺めてみると、セットの旅館を改造した食堂と人家が駅前に2軒あるだけで何もない。
そこには、ついさっきまで煌めいていた青空がかき消されて、雲行きが怪しくなったことも重なって、寒々しい寂寥感が漂っているだけであった。

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県道549号線をそのまま進み、山が迫り出すと峠下駅から国道233号線に合流した。人家もないので、看板はずっと不発状態。留萌までの道のりは単調なドライブとなった。
どんよりとした厚い雲が覆う留萌市内は駅前も閑散としており、人も歩いていない。
目星をつけて駅前から商店街に入り看板を探すが、多くの商店はシャッターが下り、しかも人の姿をほとんど見ないので、益々気が滅入ってしまった。
碁盤の目に仕切られた町は木造の家屋も多く残っており、大いに期待させてくれたが、結果的にはホーロー看板を一枚も見つけることができなかった。
留萌からは海岸線に沿って南下し、増毛町を目指した。
増毛国道と呼ばれる国道231号線を走るにつれ、景色は刻々と変化し、鉛色の海の彼方に雪を抱いた山の稜線が間近に見えた。
方角的には石狩山地の暑寒別岳(1491㍍)だろうか。6月だというのに、山は真っ白。北海道が寒いわけだ。
ホーロー探検を抜きにしても、増毛町は以前から訪ねたかった町である。
高倉健・倍賞千恵子主演の映画『駅STATION』(降旗康男監督1981年)の舞台になったことでも有名で、増毛駅前にはロケが行われた大衆食堂がそのまま残っており、その場に立つと得も言われぬ感慨深さを感じた。

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また、「清酒國稀」を造る國稀酒造は酒蔵見学もでき、重厚な蔵の柱には「開放厳禁」の看板が貼られていた。
増毛町での収穫はこれ一枚だったが、北の果ての町への訪問は自分にとっても有意義な時間になったと思う。
わずか2日間の旅だったが、この日は増毛から往路を砂川に戻り、美唄市のJR函館本線沿いの看板屋敷を撮影して帰路に着いた。
プライベートの旅とはいえ、せっかくの北海道だったが、土地のおいしいものを食すわけでもなく、安宿に泊まり、食事はコンビニで済ました。
多分に節約の意味合いもあったが、寝食を忘れるくらい、北の大地のホーロー探検が素晴らしく、充実した一人旅になったと思う。
(2013.11.20記)
※画像上/増毛国道と呼ばれる国道231号線を走るにつれ、景色は刻々と変化し、鉛色の海の彼方に雪を抱いた山の稜線が間近に見えた。
※画像中/JR函館本線砂川駅付近。畑の緑と青空のコントラストがいかにも北海道らしい。
※画像中/増毛駅前に建つ風待食堂。高倉健主演の映画『駅』のロケ地となったことでも有名。
※画像下/JR函館本線美唄駅付近。札幌~旭川間を結ぶ特急スーパーカムイが疾走する。



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Profile

つちのこプロフィール
つちのこ
岐阜県在住。
歩き旅とB級グルメの食べ歩きが好きな定年オヤジです。 晴耕雨読ならぬ“晴読雨読”生活に突入し、のんびりとした日々を送っています。
2020年には、少年のころからの夢だった、北海道から鹿児島まで日本列島を徒歩で縦断。
旅の様子はブログ『つちのこ更新日記』で発信中です。


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